表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

第二話 家

 『科学者』のいる『研究所』から出て、私は少年の運転する車に乗り込んだ。


「自己紹介がまだだったな。俺の名前は宮神(ミヤガミ) 卓也(タクヤ)だ。よろしくな」

 ちょうど赤信号で止まった卓也は私に微笑みかけた。

「…卓也…」

「うん、それでいい、そう呼んでくれ。そんで、君の名前なんだけど『科学者』から聞いたら数字と記号しか言わないんだけど、なんて呼ばれていたんだ?」

「名前…」

「うん、なんて呼ばれていたんだ?」

 卓也は運転しながら、私に聞いてきた。

 私は今までなんと呼ばれていたのか考え、それを口にした。

「…K−28」

「は?」

「K−28」

「そう呼ばれていたのか?」

「はい」

 卓也はなぜか難しい顔をした。

「…じゃあさ、俺が幾つか候補を決めるからさ、そん中から自分で選ぶか?名前そんなんじゃ不便だからな」

「はい」

 私に拒む理由が無かったので、そう答えた。



 卓也は、しばらく車を走らせると大きな日本家屋の前で止まった。

「さあ、着いたよ」

 卓也はそう言うと車から出て、私の方のドアを開けてくれた。


「ここが俺の家。そして、今日から君の家だよ」

 卓也は、家を指差しながらいった。

 私は、その意味がしばらくの間理解できずにいた。

「・・・」

 卓也は私の言葉を待っているのか、何も言わず、ただ私のことを見ていた。

「・・・家?」 

「そうだよ、君は今日から俺達とここで暮らすんだ」

 卓也はそう言うと、私の手を引き家の敷地手内に入っていった。

「あ、そうだ車」

 卓也はそう言うとポケットから出した『札』を車の方へ投げた。


 『札』は車にたどり着くと人の形になった。

 だだ白く、人の形をしているだけだった。


「車を車庫に入れておいてくれ。出来るな?」

 人の形をしたものは頷くと、車に乗り込んだ。


「んじゃ、入ろっか」

 卓也は玄関の扉を開けて私がついて来るのを待っていた。

 私は、なぜか足が動かなくその場に留まっていた。

 卓也は私が動けずにいるのを見ると、突然不安そうな顔になった。

「あそこのほうがいい?」

 卓也は、私の顔をのぞき込んで言った。

 卓也の言う『あそこ』とは恐らく『科学者』達のいる所。

 私は、『あそこ』には行きたくなかった。

 でも、なんと言っていいか分からず私は、卓也の服の裾をつかんだ。

 卓也はそれを見ると笑ってくれた。

「さて、入ろうか」

 卓也は、私の手を引いて歩き出した。

 家の中へ・・・



 私は、今まで『科学者』達のいる『研究所』の外に出たことがほとんどなかったから、家の中には初めて見るものばかり有った。

 知識として知っていた物や、部屋が有った。

 卓也は、私に家の中を案内してくれた。

 台所・トイレ・居間・茶室・・・多くの部屋があった。

 最後に卓也は、私の部屋に案内してくれた。

「部屋はここを使ってくれ。何も無いけど今度買い物に行こうな」

 卓也は私にゆっくりするように言って一階へと降りていった。


 私は与えられた部屋を見回した。

 卓也は『何も無い』と言っていたが家具は全て真新しい物でそろえられていた。

 机・椅子・ベット・本棚…

 私はその一つ一つを『見て』『触って』いった。

 部屋で一部分だけ古い物があった。

 本棚に並べてある本だ。

 様々な分野の本が、場所が無いからとりあえず置いてある、そんな感じだ。

 私は、読みたいと思う本が無かったため、本棚をただ眺めた。


 コン、コン、コン

 

 日が完全に落ちるとドアがノックされた。


「…どうぞ」

 私の声に反応してドアが開いた。

 卓也がその隙間から顔を出した。

「ご飯が出来たから、下に来てくれ。んで、食べた後名前を決めよう」

 卓也は、笑顔で手招きしていた。

「…はい」

 私は、その笑顔に答えたいと思ったが、どうしていいか分からず、ただ返事をした。


「よし、じゃ行こう」

 卓也の手招きに誘われて、私は部屋を出た。



初めての一人称です。限界です。次から二人称に戻します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ