第十話 お帰り
卓也が大学から帰ってきてしばらくすると、買い物から倉沢とかおりが帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま〜♪」
「…卓也、ただいま」
卓也が出迎えると、両手いっぱいに荷物を持ってウキウキ顔した倉沢とぐったりしたかおりが帰ってきた。
「珍しいな、倉沢、買い物が終わってもそのテンションだなんて」
「あら、これからが一番楽しいのよ」
「いい物は買えたか?」
「もちろん、私の見立てに間違いはないわ」
「わからない」
倉沢はそう言うと、今だぐったりしているかおりを連れて部屋に案内させた。
「お〜い。倉沢飯は?どうすんだ?」
部屋に入る直前卓也が言った。
「そうね、泊まっていくから一泊二食付きでお願い」
倉沢は堂々と言い放ち、かおりの部屋に入っていった。
「…勝手に決めるなよ…」
卓也は呆れ顔でポツリと言うと、夕飯の支度をするべく台所へ入っていった。
今日一日、かおりにとっては怒涛の日であった。
日中は倉沢に引きずりまわされ、帰ってきたら荷解き、そして、洗顔や化粧のやり方を徹底的に仕込まれた。
その途中、食事等を挟んだが寝るまでのほとんどを倉沢とすごした。
「一から誰かを仕込めるなんてうれしいわ」
「お前じゃないんだから、手加減してやんなよ」
かおりが眠った後、卓也と倉沢が居間で一息ついていた。
「あら。選択肢は多いほうがいいわ。それで、彼女自身が必要ないと感じたら、自然にやらなくなるわ」
「…そういうもんかね」
それから、しばらくして居間の明かりがきえた。