9 ナ、ナニヲイッテ…
「でも!これでも俺なりに頑張ってつくったんだ!マップの拙さは認める、でも俺の手を離れても世界を発展させていけるようなキャラクターなんて俺にはつくれる気がしない!」
フィールドマップは改善の余地がある。でもキャラクターの改善はこれ以上無理だ。自立して世界を発展させるキャラクターをつくるなんて、それはもう心を一から作れと言ってるようなもんじゃないか!
生前の世界ではAIなんて形で心をつくる試みがされていたが、それでも完全な人間とは程遠いものだった。
「俺は平凡な高校生。俺には無理だよ…。」
「なぜあなたが心をつくる必要があるのですか?」
…え?
「AIだなんだと難しいことを考えていますが私がお願いしたのは異世界をつくることです。」
「異世界づくりに必要なのは基盤となるフィールドマップと自立して世界を動かしていけるキャラクター。そう言ってたじゃないか!」
「たしかにそういいましたが、それをあなた自身がつくれと言いましたか?」
なにを言ってるんだ?
俺とこいつの間で全然話がかみ合ってない気がする。
「もしかして、オート機能…使ってないんですか?」
「オート機能?そんなことマニュアルにはかいてなかったぞ?」
「そんなことは、いや、もしかして…」
なんか嫌な予感がする。
「悟さん、ちょっと頭の中のマニュアルを確認しますね。」
「お、おお」
頭ん中の本が他人にめくられている、そんな感覚だ…
「マニュアルに欠損がある!なぜです!?」
マニュアルに欠損?俺がみたマニュアルは不足していたのか?
「あなた、ちゃんとマニュアルは解凍したんですよね?」
「もちろんした!おまえもあの時はまだ頭ん中で見てただろ?」
「確かに見てましたが…。いや、あの時ちゃんと、解凍メニューから解凍してましたか?」
「いや、普通にあたためスタート押しただけだが…」
「っ!?原因はそれです!」
なん…だと…!?
「あのレンジは解凍メニューを設定することで初めて解凍ソフトとして機能するんです!あたためスタートを押しただけだと、ただの電子レンジです!」
まじかよ…。確かにあの時俺はオニギリ型のマニュアルに衝撃をうけて、凍ったものの解凍と、圧縮データの解凍を混同していたが…。
ってことはあれか、俺はマニュアルを文字通りあたためただけだったと…。
「圧縮したマニュアルでは異世界づくりのことはほとんど理解できなかったでしょう。あの世界は別にふざけてつくったわけではなかったのですね…。むしろよくあれだけの情報でレベルは低いですが異世界を一つつくったものです…。」
俺は異世界づくりは無理ゲーだなんだと言っていたが、自分で無理ゲーにしてただけだったのかよ…。
「とりあえず、予備のマニュアルがレンジの下にしまってありますから、今度は正しく解凍してください!」
「ちなみに、そのマニュアルがしまってあるっていうあの白い箱の名前はなんだ?」
「冷蔵庫ですが?」
マニュアルの製作者…わざとやってるよね。