6 はじめての異世界づくり
異世界づくりを始めた俺は、出だしからつまずいていた。
マニュアルは頭の中に全部入ってる。
でもどうすればいいのかわからない。
生前で言うところの、数学の公式をすべて丸暗記したけれど、実際に問題を解くとなるとうまく解けない。
おそらくそんな状態なのだろう。
これはつくりながら慣れていくしかないだろう。
「まずは世界の基盤ってのをつくればいいのか?」
そう、異世界をつくろうとして作成画面に移ったのはいいが、そこに出てきたのは完全なる無。
俺が死んであと、最初にいた空間のようなものである。
光も音も何もない、永遠に闇が続く世界。
だからまずは世界の基となる基盤。簡単に言うと、フィールドマップのようなものをつくらなければならない。
例えば、地面をつくるにしても、隆起沈降、色、材質、強度、温度、厚さ、におい、再生力、再生時間など。
他にも挙げればキリがないほどの要素が必要となる。
それに、異世界をつくるうえで重要なのはそこで生きる生命。ゲームで言うキャラクターみたいなもの。
世界が完成した後、そこで終わってしまうならそれは世界とは言えない。
俺の手を離れた世界を動かしていける、バージョンアップしていける生命。
それが必要なのである。
そしてその生命の設計、デザインもすべて俺がやらなければならない。
デザインは手書きではなくて、俺の頭のイメージをこの異世界メーカーが謎のハイテク技術により読み取ってモデリングしてくれる。
絵心ゼロな俺にとって、手書きじゃないことはとてもありがたいのだが、新たな生命の想像とかそんな簡単なことではない。
生前の世界でいう、漫画家が新キャラをつくるのに似ているが、頭の中で正確な造形や基本の動きを三次元的にイメージしなければならないとなると、その難易度は段違いである。
「これ無理ゲーだろ…」
長い時間、頭を酷使して異世界づくりに励んでみたが、未だに俺の異世界はほぼ初期状態のままであった。
「異世界をつくるって聞いて高望みしすぎたのかな…」
異世界をつくるといっても、俺の生前の世界レベルのものをつくれとは言われていない。というか俺には無理だ。
もう世界のレベルを極限まで落として自分のレベルにあって異世界をつくろう。
「フィールドマップとキャラクターのデザインは単純に。物理法則?1か0かでいいだろ。名前は…もうこいつらは全部同じでいいか。」
こうして、俺がつくる初めての異世界は完成した。