4 マニュアルオニギリ
「ではさっそく異世界づくり、お願いします。」
さて、異世界をつくるなんて宣言したものの、俺にはさっぱりつくりかたなんてわからない。
おそらく目の前の異世界メーカーとかいう機械を使えばいいと思うんだけど…
「なあ、この機械ってどう使えばいいんだ?」
「私に聞かれても知りません。私、あまりファミコンに詳しくないんです。」
ファミコンって…。
こいつあれか、機械はなんでもファミコンって言っちゃうタイプの奴か。
何より恐ろしいのは、こいつは俺の頭を覗いているはず。
つまり、俺の知識を見たうえでこの機械をファミコンだと思い込んでいるのだ。
「冗談です。これはスーパーファm」
スーパーなやつでもない。
ちなみに5の前後の数字を並べたやつでもない。
「うぅ…」
異世界メーカーに関しちゃ、こいつは頼れなさそうだ。
俺が見た感じだとこれはパソコンに近いような見た目だが微妙に違う…
「さすがにマニュアルもなしだとつくりようがないぞ…」
そんな独り言を言いながら異世界メーカーの周りをあさっていると、マニュアルらしきものを発見した。
いや、らしきものというか上になってる面にしっかりマニュアルと書いてあるのだが、俺にはこれはオニギリにしか見えない。
なにを言ってるかわからないか?
大丈夫、俺もだ。
コンビニのオニギリを想像してほしい。
しゃけとかツナマヨとかそんなことが書いてある部分をマニュアルという言葉に書き換えてほしい。
想像できたか?
大体それで合ってる。
異世界のつくりかたが書いてあるマニュアルなんて本の形にすると凄まじい分厚さになるだろうし、データファイルにしてもそうとうデータを圧縮しないとスーパーコンピューターにも入らないだろうが、まさかオニギリ型とは…
「なんだ、ちゃんとマニュアルがあるじゃないですか」
やっぱりこのオニギリもどきがマニュアルなのか…。
「えっと…、俺はこれを食べればいいのか?」
「何言ってるんですか?マニュアルは食べ物じゃないですけど。」
素で言われた。
いや、違うんだ。
これはただのマニュアルじゃなくてオニギリ型なんだ。そういう考えが浮かぶのだって当然だろ?俺はおかしくなったわけじゃない。
と誰ともなしに弁明しておく。
とりあえずそのオニギリ型マニュアルを裏返してみると、
①↓ ②→ ③←
やっぱこれオニギリだよな?そうだよな?
とりあえず指示に従って上から下にピリピリ開けようと力を込めたんだが、全く開く気配がない。
まるで凍り付いているようにびくともしない。
「そのままではつかえませんよ。ちゃんと解凍しないと!」
確かによくみると小さな文字で
※使用の前に解凍してください
と書かれている。
圧縮したデータは解凍してから使うのが基本だが、俺にこれをどうしろと…
「なぁ、解凍ってどうやるんだ?」
「そんなことも知らないんですか?全くダメな人ですね。」
こんな機械とファミコンの違いも分かんないやつに言われるなんて屈辱だ!チクショー!
「ほら、異世界メーカーのすぐ横にレンジがあるじゃないですか。それで解凍するんですよ。」
いや、凍ったオニギリの解凍ならそれで正しいかもしれないが俺が言ってるのは圧縮されたデータの話で。
でもこれはオニギリ型なんだしそれが正しいのか?
あぁ…もう頭がこんがらがってきた。
とりあえず俺は言われるがままにそのオニギリもどきをレンジのなかに放り込み、あたためスタートのボタンを押した。