24 女の勘はバカにできない
「おお、こんなに人間が…」
街の門にも門衛がいたが、街の中に入り多くの人間を目の当たりにするとなんだか感慨深い。
(しばらくモンスターしかいない環境だったからなあ…)
だが、いつまでもこうしてはいられない。
俺はスライムと人間の和平交渉のためにここまで戻ってきたのだ。
モンスターを倒しているのは冒険者だし、まずはギルドへ行くことにした。
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「サトルさん!生きてたんですね!」
ギルドへ入ると俺が冒険者登録をしたときに担当してくれた女性が出迎えてくれた。
「全くギルドに来ないのでどこかでモンスターにやられてしまったのかと思いましたよ!」
「心配かけてすいません。でも、今はすこし相談したいことがあるんです。」
まずはスルルはみせないで話をすることにする。
ここでいきなり俺が服をまくってボロンと出してもギルドで混乱が起きてしまうだろう。
もちろん出すのはスルルである。
「相談ですか?」
俺は冒険者ぶくろからスライムのカケラを手につかめるだけ取り出す。
「スライムのカケラがこんなに!?」
「どこで手に入れたかは言えないんですが、このカケラを提供するのでスライムの討伐をやめてもらいたいんです。」
「スライムの討伐クエストの廃止、ですか?」
「はい、必要なら量はもっと用意できます。だからなんとかやめてもらうことはできませんか?」
「いいですよ。」
「え!?」
これを切り口にしてスルルとの話やスライムに敵意がないことを話そうと思っていたのだが…
「スライムのカケラはポーションの作成に使われます。ですが、最近は代わりとなる薬草が発見されたことでそこまで需要はないんです。」
「でも俺が初めてのクエストを探していた時みたいに掲示板にはいまだに討伐クエストが!」
「あれは初心者救済措置のためのクエストです。スライムは特に問題を起こすわけではないのであのクエストはまれにしかでないんですよ?」
確かに俺は最初の一回しか掲示板を見ていないが…
「それとクエスト外での討伐ですが、スライムは遭遇した瞬間に攻撃を仕掛けてくるので反射的に冒険者は攻撃を返しますが、あちらから攻撃してこない限りクエストでもなければ狙ってスライムを討伐する冒険者はいないと思いますよ。」
「それなら大丈夫です!向こうから攻撃してくることはもうないと思います!」
「そのスライムへの強い思いは…あなたのおなかの不自然なふくらみにも関係してるのでしょうか?」
「え!?」
ばれてる!?
「前にあなたに会ったことがあるんですからそんな変化くらい気づきますよ。」
「そ、そうですか。」
「でも街中にいきなりモンスターがあらわれたら間違いなく騒ぎになります。そうだ、ちょっと待っててください。」
そういって女性はカウンターの奥へ行き、かばんをもって戻ってきた。
「このかばんなら背中に背負えるし、大きさもちょうどいいと思います。よければ使ってください。」
「もらってもいいんですか?」
「はい、困っている冒険者をサポートするのが、私たちの仕事ですから。」
「ありがとうございます!」
最初に対応してくれたのがこの人でよかった。
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その後、ギルドでカケラをすべて引き取るといわれたので別室で手持ちのカケラをすべて出した。
ギルドの女性は驚いていたが、これだけの量があれば今後の需要は十分満たせるだろうと言っていた。
カケラの買い取り額としてかなりの報酬がギルドから支払われたが、このお金は過去のスライムが生きた証から生まれたもの。
使うのは必要最低限にして、あまり乱用しないように心がけようと思う。
そして、今は宿屋。
スライムの長に和平が講じられたことを報告しなければいけないが、今日はもう遅いので休むことにしたのだ。
久しぶりの人間の食事はおいしかった。部屋に待たせておいたスルルには外で買ってきたリンゴを食べさせた。
そしてフカフカ、というほどではないが暖かい布団で寝られるベットは最高だった。
スルルもベットにはいってきて、なぜだかやけに俺の体にくっついてきたので、そのまま抱き寄せて寝た。
抱き枕みたいでベットよりもフカフカで気持ちよかった。
チョロゴ●ならぬチョロイム




