22 ぷるぷる、ぼくほんとうはわるいスライムじゃないよ
俺がここにきてから数日たった。
最初は不安も多かったが、チビスライムが毎日木の実を俺のとこまでもってきてくれるし、放水スキルで体もきれいにできるし、案外快適な暮らしをしている。
だがさすがに暇だ。
俺はいつまでここにいればいいんだろうか。
(ヒロとか元気にしてるかなぁ。)
そんなことを考えていると、チビスライムがこちらに歩いてきた。
(ん?木の実の時間はまだのはずだが…)
よく見たら、今日は木の実を持ってきていないようだ。
それに後ろには別のスライムもいる。
こっちをみてぽよぽよ跳ねているので、どうやらまた俺をどこかへ連れていきたいようだ。
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ついていくと、そこにはちいさな洞窟があった。
入り口が生い茂る草で隠されているので案内なしではここを見つけられる人はいないだろう。
その洞窟にはいって俺が思ったこと、それは一つ。
「きれいだ…」
その一言だった。
入り口からも分かったように、中はそんなに広くない。
学校の教室の半分くらいの広さ。
しかし、床も壁も見えないくらい、中のすべてが輝く結晶で埋め尽くされている。
いや、よく見るとこれはスライムが落とすドロップアイテム、スライムのカケラだ。
そういえば以前、ヒロと一緒にスライム討伐クエストを受けてスライムと戦闘した時、確かにヒロはスライムのカケラを回収していた。俺は満身創痍でそんなこと考える余裕もなかったが。
クエストを受けた時にみたクエスト用紙にもかいてあったが、どうやらスライム討伐クエストというのは、スライムそのものの討伐よりもドロップアイテムのほうがメインの目的らしい。
もちろんクエストで決められた数のスライムを討伐すればクエストはクリアとなるし、報酬はもらえるのだが、カケラをギルドに渡すと追加で報酬がもらえるのだ。
スライムの討伐クエストなんて初級クエストで報酬を二人で分けてもそこそこもらえたのはそのためだ。
俺たちは三匹の討伐でカケラを一つゲットしていたが、ほんとはもっとドロップの確率は低いらしい。
(そんなカケラがこんなに…)
そんなことを考えていると、
「人間!」
頭ん中に声が聞こえてきた。
一瞬神の声かと思ったが声質が違う。
「誰だ。」
反射的に俺は声をだした。すると、スライムの一匹が前にでた
「ワタシはここらに住まうスライムの長。」
「お前話せたのか?」
「ここはスライム族にとって神聖な場所。長であるワタシはこの場に宿る魔力をつかい、一方的に頭に言葉を送っている。人間の言葉が理解できるわけではないので対話は不要である。」
俺はジェスチャーで了解を示す。
「この場は他者に殺されることなく生涯を終えたスライムが眠る場所である。」
スライムがカケラをドロップするのは命を落とした時。
つまりこの場所は寿命で命を落としたスライムの墓ということだろう。
「人間がこのカケラを欲しているのは知っている。」
「ここにあるカケラを持ち出すのを許可する。」
「その代わり、人間との和平を申し入れたいのだ。」
人間の目的はスライムのカケラ。カケラが手に入るなら人間はスライムは敵対する必要はなくなるかもしれない。
「お前の強さは知っている。おまえを連れてきたスルルから聞いた。」
スルル?あぁ、あのチビスライムの名前か。
「人間でありながらお前はワタシたちよりも弱い。だからこそ、ここまで連れてきてこのような話を持ち掛けたのだ。」
他の人間はスライムよりも断然強いし、そんなやつをここまで連れてきたらカケラだけ取られちゃう可能性があるからな。
「人間との仲立ちをお願いできるだろうか?もちろん和平が講じられるならこちらから人間に対しての干渉はしない。」
戦わなくてもいいならそれに越したことはないか。
それに、俺は断ることはできない。
断ったらこの場所の秘匿のため殺されるのが分かっているからだ。
俺はジェスチャーで承諾の意思を伝える。
「ありがとう。」
「スルルを同行させる。仲立ちの際にスライム族との繋がりの証明として使ってくれ。」
その後俺は、スライムのカケラを冒険者ぶくろに入るだけ入れて、スルルとともに街へ帰ることになった。
スライムは他のモンスターよりも寿命が短いために世代交代が行われやすく、モンスターのなかでも知能の発達が早いです。ステータス的な能力は元が最低値なので発達が遅いですが…




