18 過ち
「サトル、大丈夫?」
「あぁ、なんとかな。」
ほんとにギリギリの状態だが。
「と、とりあえず、街に帰ろっか。ちょうどクエストも達成したし。」
ヒロが俺に気を使っているのが痛いほどわかる。
「なあヒロ、お前って冒険者の中では結構強いほう?」
「いや、ギルドでも言った通り、僕はまだまだ初心者冒険者だよ。」
それでもあのステータスだし、何か強さの秘密とかがあるのかもしれない。
「むしろ、サトルがあまり戦闘が得意じゃないってことだとおもう、よ?」
今まで俺はモンスターとの闘いなんてやったことはないが、それでも俺のステータスはオール4桁。
弱いとは思えないが…
そのあとは街につくまでほとんど会話はなかった。
お互いに気まずくて話にくかったのだ。
****
冒険者ギルドにたどり着いた俺たちはカウンターでクエスト達成報告をした。
報告はギルドカードをみせるだけの簡単なものだった。
パッと見、カードには変化したところはないが、おそらくギルド側にだけわかる何かの仕様があるのだろう。
今回のクエストでは俺はほとんど何もできなかったので、報酬はすべてヒロに渡そうかと思っていたのだが、ヒロは山分けでいいと言ってくれた。
むしろ俺に多くくれたくらいだ。
「じゃあ、今日はこれで…。サトルは無茶しないように、ね。」
「ああ、今日はありがとう。」
こうして俺はヒロと別れた。
そのあと俺は、ギルド内にいるほかの冒険者に対して覗き見スキルを使った。
ほかの冒険者の強さを確認するためだ。
これでヒロの異常さが分かると思ったのだが…
結論から言うと、異常だったのは俺だった。
「なんだよ、これ…。」
文字通り、俺と他の冒険者では強さの桁が違った。
ここであらためて、俺とヒロのステータスを比べてみようと思う。
サトル Lv1
HP:5000/5000
MP:1000/1000
攻 :1000
防 :1000
魔攻:1000
魔防:1000
速 :1000
ヒロ Lv6
HP :32000/32000
MP :20000/20000
攻 :17000
防 :15000
魔攻:15000
魔防:16000
速 :20000
分かりにくいか?
じゃあ相対的に、もうすこし見やすくしてやろう。
サトル Lv1
(×1000)
HP:5/5
MP:1/1
攻 :1
防 :1
魔攻:1
魔防:1
速 :1
ヒロ Lv6
(×1000)
HP :32/32
MP :20/20
攻 :17
防 :15
魔攻:15
魔防:16
速 :20
こういうことだ。
誰もがステータスは五桁以上が当たり前だった。
ヒロより強い奴もいくらでもいた。
つまり、俺が異常に弱かった。
****
俺は今、リンゴ(のような果実)を食べていた。
ギルドをでたあと、腹が減っていたからクエストの報酬で買ったものだ。
店の人がいうには、ポーションほどではないが、こうした食べ物はわずかだがHPを回復させる効果があるらしい。
俺は食べた途端に減っていたHPが全快したが。
このことからも分かるように、この異世界で俺はかなり弱い。
さて、なぜこんなことが起こったのか。
原因は大体予想がついている。
俺はこの異世界をつくるとき、世代交代のたびに子孫となるキャラクターは親よりもわずかに優れた個体に進化、バージョンアップしていくように設定した。
それが異世界を発展させていける方法だと思ったからだ。
現に、俺が最初につくったちぐはぐだったこの異世界はここまで発展した。
最初のキャラクターはみんな、ステータス的には一桁くらいの強さだったのだろう。
俺は製作者として、チートなステータス補正をもってこの異世界に転生した。
だがそれは異世界誕生直後を基準としたら、だ。
俺が犯した過ちは、世代交代時に発生するバージョンアップシステムの調整不足。
つまり俺は何が言いたいかというと……
「異世界のつくりかた間違えたああああ!!!」




