16 良い子悪い子(頭)普通のおじさん
武器屋についた俺がまず最初にしたのは武器の値段確認。
そして、俺が武器屋でできることはそれで終わった。
俺の今の手持ちは100E。店頭には様々な武器が並べてあるが最安値が150Eで冒険者の剣。
この名前は俺がつけたわけではなく、値段のとなりにかいてある商品名が冒険者の剣だった。
素材はよくわからない。別の商品で銅の剣や鉄の剣があるからそれとは違うものだと思うけど。
「ヒロ、この冒険者の剣って何でできてるんだ?」
「ああ、それは冒険者ギルドが魔法でつくった剣なんだ。」
「魔法だと?」
「初心者冒険者に低コストで性能が安定した武器を普及するために数年前にギルドが開発したみたいだよ。かく言う僕もこの冒険者の剣をつかってるしね。」
「それにするのかい?」
「い、いや、もう少し他のもみてから決めるよ。」
最安値の武器さえ買えないなんて言いたくねえよなぁ。
「じゃあその間、僕忘れ物をとってくるね。宿屋に置いてきちゃってさ。」
「分かった。それまでに決めとく。」
「なるべく早くもどってくるから!」
そう言ってサトルは小走りで宿屋へ向かっていった。
早いな…。
それはおいといて、
「なあおっちゃん、この冒険者の剣より安い武器なんてさすがにないよな?」
俺はダメもとで店主に聞いてみた。
「これよりも安い装備?そんなこと言ったらあとはこれしかないぞ?」
そういって店主が俺に渡してきたのは木の棒。
ただの木の棒だ。
ふざけてんのか?と思いそれを受け取ったままステータス画面を確認してみると…
サトル Lv1
攻 :1000+500
まじか、この木の棒が俺の基本攻撃力の半分もの力を秘めているだと!?
ただの木の棒にみえて世界樹の木の枝かなにかだったのだろうか!?
「まあこんなのは冗だ…」
「おっちゃんこれいくらだ?」
「え?」
「これ買うよ。いくらだ?」
「ま、まあ売るなら100Eくらいかな」
「買った!」
「おい、いいのか!?それは」
「水晶石はどこだ?お、あった。」
俺は何やら口ごもる店主を無視して水晶石に所持金全部の100Eを支払った。
「ごめん待たせた?」
ちょうどヒロも来たみたいだ。
「いや、今買い終わったとこだ。すごいいい武器が買えた。」
「そっか!よかったね!」
あの値段であの性能の武器が買えたのは相当運がいいだろう。
これももしかして異世界製作者としての特権で運がよくなるとかあったのだろうか?
どれだけ俺をチート化するんだよ。
とりあえず返せと言われる前にさっさとこの場を立ち去ろう。
「ありがとなおっちゃん!」
店主は口をパクパクしていたが言われた金額は払ったし問題ない…よな?
俺はヒロとその場を後にした。
(あの冒険者、ほんとにあんなもん買っていきやがった…。冗談のつもりだったんだがな…。)
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「あと行くとしたらアイテム屋だね。今回はスライムの討伐クエストなので特に必要なものはないけど、冒険者袋は便利なので持っていたほうがいいよ。」
「冒険者ぶくろ?」
「手に入れたアイテムを入れておく袋だよ。異次元収納の魔法がかかっているので外見よりも多くのアイテムが入れれるんだ。値段によって容量は大きく変わるけどね。」
アイテムボックスみたいだな。でも所持金なぁ。
「確かにあったほうがいいかもな。でも実はさっきの武器屋でほとんど使っちゃって手持ちが…」
「やっぱりそうだと思った!」
「え?」
「サトルがすごい熱心に武器みてたから多分全部お金使っちゃうなって僕思ってたんだよね。」
実際にはなんとか俺でも買える武器がないか探すのに必死だったんだが。
「だから、これ。僕の予備の冒険者ぶくろあげるよ。」
ヒロが小さな袋を手渡してきた。
「い、いいのか?」
「うん、初めてのクエストに行くサトルへのプレゼントってことで。」
「おお…ありがとう。」
会って間もない俺にここまでしてくれるなんて…なんていいやつなんだ。
もしかしてこれを取りに一度宿屋に向かっていたのだろうか?
あかん、泣ける。
「じゃあやっと本題。スライム、討伐いこっか。」
「おう!」
俺たちは街の北門をくぐり、モンスターがでるフィールドへと出発した。
比較的悪人の少ない世界ですが、ヒロは特別いい子です。




