大事な話よ
『今日は…月曜日なのに学校休みなんだよね。何でだっけ…』
ぼんやりと意識を回復しながら考えたことはそれだった。次第に戻る自我と意識に無理矢理起こされてメールを読んだが内容が頭に入るには時間がかかった。それほどまでに昨日までの体験は刺激的すぎたのかもしれない。
【今日大事なことを伝えるから、12:00にサイゾリア集合ね。あ、昨日の服を着てきてね?じゃ、待ってるね。マイハニー♡】
『昨日の服って…あ。』
そう、昨日の服とは凛子と都会で選んだ服である。いや、正確には凛子に選んでもらった服。さらに言えば凛子に与えられた服とでも表現できる。どんな服を買ったか思い出すために紙袋から昨日買った服を広げてみるとそこには様々な服が並ぶ。当然一つとして同じものはない。
しかし、みる人が見ればそこに並ぶ服にはある共通点があることは明白であった。しかしそのことをじゅんが知るのはまだまだ先の話である。
『んんー、どれ着ればいいのかな…とりあえずこれとこれとこれでいいかな。』
じゅんが選んだのは、赤いチェックのスカートに白いワイシャツ(勿論、えりにリボンがまかれていて胸のあたりに長めのりんぼんのあしが垂れていておしゃれ可愛い仕様になっている)だった。ついでに、ニーソも履くことにした。靴はスニーカーである。
『ヤバ、約束の時間すぎちゃう。急がなきゃ』
時計を見て慌てて鞄(無論女性物であることは言うまでもない)に財布と携帯だけ入れて家を出て行った。
♢♦︎♢
『ま、間に合った…。はぁ…はぁ。』
乱れる息を整えようと努力しながらも凛子の元へ急ぐじゅん。
『ン、時間通りね。さて、今日は大事な話をするから心して聞きなさいよね。いい?』
努めて事務的に話す凛子だが、その裏実はじゅんの荒い息遣いがとても女の子らしいと感心していたほどであった。しかし、やはり年頃の男の子なだけあって少しではあるものの低い声が混ざっていた。そして、少し頬を赤めていたのであった。
『さて、大事な話だけど…大きく分けて二つあるわ。これは貴方のこれからの生活に大きく関わるからもし無理なら三日のうちに私と別れて頂戴ね。』
急に真面目くさった雰囲気を作り出すのは知的な雰囲気を醸し出す凛子にとっては容易なことである。
『大丈夫。大事な話って…?』
『そう。突然だけどじゅんにはボイストレーニングと脱毛をしてもらうわ。』
『ボイストレーニング…?』
何も知識のないじゅんが首をかしげるのも当然のことである。
『そうよ。ボイストレーニング。これはね、女の子の声を出すための練習なの。毎日続けないと意味ないから毎日頑張るのよ?そうしたらきっと可愛い声を出せるようになるわ。』
『具体的にはこの音をーーーーーーー。』
『わ、分かった。ボイストレーニング頑張るよ。それで…脱毛は?』
『そう、脱毛よ。脱毛はね病院に行ってレーザーでーーーーーーー』
『と、言うことだから頑張ってね。』
♢♦︎♢
その日から、じゅんは毎日ボイストレーニングをするようになった。また定期的に脱毛サロンにもより本格的に男の娘へと道を歩み始めたのだった。
恋から始まる物語は今尚ある方向へとすみ続けているのだった。




