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初めてのスカート

朝日がカーテンから差し込み目がさめる。なんの変哲も無い自分の部屋に安心しつつも頭だけは昨日の続きを思い出していた。


♢♦︎♢


時は告白後にまで遡る。


『え…それって…つまり』


『そう。そのつまりよ。私といる間は女の子になってもらうわ。私、女の子が好きだから。でも、じゅんちゃんなら平気よ。私好みの顔だし性格だって合うわ。でも…まぁ、いいわ。これから私がお洋服とか全部用意してあげるから言われる通りにしてくれればそれでいいの。簡単でしょ?』

有無を言わさぬ威圧感で、なすがままになるじゅんはおかまいなしに、話を進める。


『じゃあ、明日は日曜日だしこれ着て駅に集合ね〜。それじゃ。』

紙袋を渡され、こちらの予定などはなからおかまいなしに、切り上げると手を振って一人で帰ってしまった。


じゅんはその後のことはよく覚えていないが、そのまま帰宅して放心状態のまま寝てしまっていたようだった。


♢♦︎♢


我に帰ったじゅんは慌ててベッド横の紙袋を確認するとなくしていないことに一安心しつつも、中身に嫌な予感を漂わせていた。


時計は既に8:00を示している。


(確か…集合は10:00だったから…準備しないと間に合わないかな。)

心の中でそう呟くと、家に誰もいないことを確認するとシャワーを浴び始めた。


♢♦︎♢


『さて…準備は整ったし…あとは着替えるだけか。』


意を決して、紙袋をひっくり返すと中からは制服のスカートが出て着た。

もちろん、通っている中学の制服である。ついでにリボンと、ハイソックスまで入っていた。


時計を確認すると既に迷ってる時間は無く早々とそれに着替えていった。

普段ズボンしか履かない男子にとってスカートとはなんて心もとないのだろうか。太ももに風が通るだけで不安になる。開放感というか、もはや、パンツ一丁で歩いているような感覚であった。


鏡を見るとそこには一人の少女が立っていた。完璧では無いにしろ、ショートヘアでボーイッシュな少女といえなくもない。ぱっと見ではおそらく誰もきにすることはないだろう。


本人は不安を抱くが時間に背中を押され遂にローファーを履き、スクールバックに携帯と財布を入れると駅えと向かったのだった。


♢♦︎♢


『おはよう。あら、本当にその格好で来てくれたのね。最初だから無理かと思ったけど…うん。中々似合ってるわ。可愛いじゃない。初めてにしては上出来よ。』

凛子は待ち合わせ場所に先についており急いできたじゅんの格好を評価すると手を引いて電車に乗った。


♢♦︎♢


しばらく電車に揺られると自分の格好を忘れてしまったのか、慣れてしまったのか、打ち解けて話をしたりと中々の打ち解け具合だが電車をおりて洋服店を回り始めると会話は一気に減った。


『ねぇ、これも似合うと思わない?』

『でも、じゅんちゃんにはやっぱりこっちの方がいいかしらね?』


アレコレと体に合わせて服を選んでいく凛子は飽きることなく都会のお店を網羅する勢いで選んでいく。


どれほどの店を回っただろうか。

デートも終盤に差し掛かり遂に洋服選びを終えた二人は今日最後のお店へと入った。


店には様々な髪の毛が並んでいた。

そう、ウィッグ専門店であった。


『ん〜。ま、最初だし黒髪ロングのこれがいいかしらね。校則にも染めたらダメって書いてあるし。』

黒髪ロングのウィッグがじゅんにあうかを入念にシュミレートするとレジへ持っていった。


♢♦︎♢


『じゃ、今日買ったものは私からのプレゼントだからありがたく受け取りなさいよね』

気づけば、買った洋服などは全ての会計を凛子に任せ、その上荷物まで女子である凛子に持たせていたことに今気づいたじゅんである。


そんな様子をみた凛子は心の声が読めるのか、全てお見通しのようである。


『勘違いしないでよね。あなたは私の彼氏じゃないのよ?』


突然の言葉に思わずクエスチョンマークを浮かべずにはいられないじゅん。

『え…?だって昨日は付き合ってもって…』

細い声でそう呟くと、ため息混じりに凛子が答えた。


『はぁー。確かに昨日そういったわ。でも、彼氏にするなんて一言も言ってないでしょ?』


相変わらず理解できないじゅんは訝しげな表情を浮かべる。


『鈍いわね〜。ま、そんなところも可愛いけどね。だから、私の彼女にしてあげるって意味よ』


女装をしているだけでも恥ずかしいのに、その上立場までも女の子扱いされてしまったじゅんはなんともいたたまれない気持ちになったことは言うまでもない。


さらに、そのとき気づいたことだが、凛子の格好は男子制服であった。


凛子は女の息子(おんなのこ)というわけではない。れっきとした女の子である。しかし、自分まで女の子の格好をしていたら未完全なじゅんが男の子っぽく見えてバレてしまうかという気遣いであった。


男子としてのプライドを粉々に壊され、しかも見えない思いやりでさえ負けていたのであればもはや、じゅんに抗う術は残されていなかった。


凛子の気遣いにすこしだけ胸が苦しくなったじゅんはまだその苦しさがなんなのか理解できなかった。

しかし、男であるプライドを壊されたじゅんはもう素直だった。


『ありがとう。』

そういうと、紙袋を受け取って手を繋いで二人は帰路へ着いたのだった。


♢♦︎♢


翌朝、携帯を開くと一通のラインが届いていた。


【今日大事なことを伝えるから、12:00にサイゾリア集合ね。あ、昨日の服を着てきてね?じゃ、待ってるね。マイハニー♡】


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