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告白〜そして〜

桜の花が舞う。

まだ寒さが抜けきらないとはいえ暖かい日差しに照らされた大地に風が吹く。砂ぼこりとなって吹き抜けるそれに誘われたように新たな期待を背負ったものが門をくぐる。


時は春。


既に大人の身体へと成長した中学三年生の先輩は新たに小学生のような新入生を迎える。しかし、立派な三年生の中にも未だに成長してないものもいるようだった。

いや、もしかすると成長は今後しないかもしれない。


♢♦︎♢


数日経ち、慌ただしかった様子から一変してすっかり落ち着きを戻した学校は早くも甘酸っぱい味に染まりつつあった。


『○○ちゃん。大好き。』

『私も○○君大好き。』


なんて、恥ずかしげもなくおおっぴらに言ってしまうあたりまだ青いのだろう。所謂若気の至りである。


しかし、それを聞いて一人の男は決意を固めたのであったのだから全く無駄であった訳ではないらしい。


(今日こそ…凛子ちゃんに…!)

心の中でガッツポーズをして決意するところは男らしいと言えるかもしれない。

しかし、その体格を見てしまうとなんとも違和感を覚えてしまう。いや、体格だけに留まらず顔立ちや雰囲気までも同じことである。

制服を身につけていなければ性別不詳と言わざるを得ない。


彼は、華奢で色白。身長も低く、髪も少し長めでサラサラとした質の良い黒髪で、ふっくらとした頰は少し赤みを帯び、大きい二重の目には長めでカールしたまつ毛が付いている。さらに細くて薄めの眉毛が目の上を飾っていた。お尻は少し大きめでふっくらとしている。そのため、腰回りが余計に細く見え、くびれが強調されてしまっていた。

その姿はなんとも形容しがたい色っぽさが感じられる。


彼はじゅん。今年の春から中学三年生に上がった。クラスでは可愛い顔立ちや細やかな性格のおかげで人気者だがおとなしいので常にクラスの中心にいる訳ではないにしろ友達は多い方だった。


♢♦︎♢


放課後じゅんは体育館裏の人気の少ないベンチに向かった。


そこは静かで誰もこない。夕方になれば夕日に照らされたそこは都会の喧騒を忘れるには絶好の場所でしばしば読書しにくる、じゅんにとっての穴場であった。



(一体何考えているのかな。私に用があるなんて…ていうか、この手紙誰からなのかなぁ…。)

心の中で呟くのは凛子である。


彼女は、女子にしては少し高めの身長に素晴らしいと言えるほどのモデル体型を持っていながら、知的な雰囲気を醸し出している。この歳にして官能的な空気を纏っている。男子からの人気は絶大だが、それ以上に女子からの信頼も厚い人物だった。


『ごめん。待たせちゃった?』

体育館の角から現れたじゅんは座っている凛子を見つけると緊張した面持ちで話しかける。


『…。別に?それで、話って何よ?』

やってきたじゅんを意外そうな目で一瞥すると立ち上がり腕を腰に当てて返す。


『あ、うん…。実は…凛子の事好きで…その…付き合ってもらえないかなって…。』

顔を赤に染め上げたそれは夕日にに照らされて一層と赤みを帯びる。


『はぁ…。私、恋愛に興味ないの。

ごめんなさいね。』

(私、レズなのよね。男子には興味ないわ。)

心の中で呟くと同時にじゅんの顔をみてあることを思いつく。

しかし、それはまだ思いつきであってこの時点では次の瞬間に凛子の頭の中で却下されてしまう程、刹那的なものであった。


『…そっか。無理言ってごめんね。』

振られたじゅんは悲しみを抑えつつも少し涙が目を滲ませる。


それをみた凛子は思いつきが計画へと変わったのであった。


『いや…条件次第では付き合ってあげてもいいわよ?』

妖しく口元が釣り上がる様子は何かを企んでいるとしか思えないが今のじゅんには気づく術はない。


『…!?本当!?ぼく、なんでもするから!』


『いいわよ。これからよろしくね。じゅんちゃん。』

“ちゃん”を強調して言った事はまだじゅんには気づかれていない。


『それで…何をすればいいの?』


『そうね…女の子になってもらうわ。』

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