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すきって言いたい

句読点を使わない代わりに沢山改行をしてあるので、特にパソコンの方は読みにくいかもしれません…ご容赦下さい。





「あーん、もう、千代ちゃん大好き~!」


ぎゅっと抱きついてくる

背の高い女の子


「へ、えへへ……ぁ、ありがと……」


照れ臭くて

背中から回されたその腕に

私も腕を添えて

俯きながら言う


顔を上げると

彼女が見下ろしているから

恥ずかしくて

にへらと笑う


「あのね、今日はねー……」


話しかけてくれる

聞くのが

楽しい


「そうだ、今日帰りに本屋寄ってかない?」

「いく!」


私は自転車で

後を追いかける

声が後ろに流れてくると思うのに

後ろにいると

聞こえにくい不思議


「一昨日が○×△の新刊発売日でさ」

「うん」

「楽しみにしてたんだー!」

「そっかぁ、よかったね」


折角の会話は

私の在り来たりな返答のせいで

なかなか繋がらない


「千代ちゃんは何を見るの?何か買う?」

「うーん、分かんない。気になるのないかなーって」


折角の質問は

私のはっきりしない返答のせいで

なかなか続かない



「じゃあねー!」

「またね、気を付けてね」

「ありがとー」






「千代ちゃーん、誕生日おめでとう!」

「えへへ、ありがと」


私の誕生日

お祝いしてくれる

とても嬉しい


「千代ちゃん17だね」

「うん」

「はい、プレゼント!」

「え、わぁっ」


可愛いラッピングの

カップケーキとクッキーが入った袋をくれた

彼女がくれたプレゼント

とても嬉しい


「って言っても、手作りのお菓子なんだけどね」

「あ、ありがとう!」

「ごめんねー、こんなのしか用意できなくて」

「うううん、すごく、うれしい!ありがとうっ!」


手作りのプレゼント

手作りのお菓子

嬉しい嬉しい嬉しい


「やっと、17歳だぁ」


こうしてやっと追い付いて

彼女と同い年になるだけで

私には十分なプレゼントなのに

欲張りな私は

彼女からのプレゼントも

そっと胸に抱く


「ぉ、おい…しいっ!」


そして胃の中へ

幸せは

全身へ巡る




「お誕生日、おめでと」


そして

彼女にも

誕生日が訪れる


「ありがとぉ、千代ちゃんっ!」


私がおめでとうをすると

嬉しそうに目を細めて

私を

ぎゅっとする


「っ、」


嬉しそうなのは

とても嬉しい

だけど


「私ももう18かぁ……早いなぁ」


私は

悲しくもある


「選挙権とか、始まる?」


折角

追い付いたのに

また離れていく


「ふふ、また千代ちゃんのお姉さんになったね」


彼女は嬉しそう


「私もお姉さんしてみたい」


私はさみしい


「千代ちゃんがお姉さんかぁ」


彼女にとっては

私は

妹みたいな存在

なのだろう


「私が千代お姉さんをプロデュースします!……なんちゃって?」


私は

彼女に追い付くことも

彼女を追い越すことも

できない

隣に並ぶことは尚更

難しい


「千代ちゃん?…どうしたの?」


私は千代ちゃんで

千代さんにも

千代にもなれない


「何でもないよ、ほらっ」


私は

隠していたプレゼントを

手渡す


「わ、私に?わたしの?」


プレゼントと私を

交互に見る

その姿が可愛くて


「うん」


誕生日を

素直にお祝いできない自分が

惨めで


「わ、私もその、手作り、頑張ってみたよ」


でもやっぱり

彼女が嬉しそうにするのが

嬉しいから


「ありがとう~っ!」


何だかんだ言って

幸せ


「ぐすっ」


涙脆い彼女が

泣き出すから


「あは、は……泣かなくても…いいってば」


私は

仕方のないふうを装って

背を縮める彼女を

抱きしめて慰める


「ひっく、ふふ、恥ずかし…」


こういうときに

私は泣けないから

少し羨ましい


「大丈夫、たまにはこういうのも、いいと思うよ」


そのぶん

普段から不安定で

いつも支えてもらうから


「…ぐすっ、ありがとうね」


こうして時折見せる涙が

嬉しい


「うんっ」


欲を言うと

もっと

甘えてほしいけど







彼女はよく


「千代ちゃん大好き!」


私に言う


さらっと

まるで

決まり文句であるかのように


その言葉を

疑っているわけではない

確かに私を

好いていてくれるのは

感じているから


ただ


きっと


私が小さいから

小さいものが好きな彼女は

好きって言ってくれるんだろう


そう

思っては


気軽に


「好き」


って

返そうにも


すき

だからこそ

軽く言えなくて

重くも言えなくて


「にゃ、えへへ…」


今日も

嬉恥ずかし




すきって言いたい




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