エピローグ
三笠市襲撃事件。
死者24名、負傷者56名。うち、重症者31名。犯行は《復讐の子ども》による反社会的行動だと決定づけられた。これにより、《復讐の子ども》の懸賞金額はののかが7000万、氷空、楓馬が6000万、天馬、紫苑が3000万と跳ね上がった。
これが表向きな公表だった。
「風の旋律」
ののかは呟き辺りに音楽が鳴り響く。
虚偽の報告でののかたちは完全な悪人へとどんどんなっていく。だが、それから逃げるつもりは一切なかった。
楓馬との芝居の時に罵り合った言葉。自分はいろんな人の十字架を背負っていることは確かだ。だが、それは比率の問題だと思っている。このまま国際連闘の言いなりになっていけば最終的には格差が産まれ人々の数が減り、世界が壊れる。ならば、世界を以前の形とし、新たなエネルギーを求めたほうがいいとしたい。その為なら多少の犠牲も受け入れるつもりだった。
「なにしてるんだ?」
「別に、景色を眺めてただけ」
原っぱの上に座るののかに氷空が声をかける。氷空も隣に腰を下ろして緑の原っぱを眺める。
「それにしても、教えてくれてたらよかったのに」
「……なんのこと?」
「楓馬についてだ」
「その理由はいった。敵を騙すには仲間から」
「とはいってもなぁ」
何とも言えない表情で笑う氷空。
《リーヴ》側に潜入し、情報を探っていた楓馬に対し、接触をしてきたと報告した楓馬にののかは二重スパイを頼んだ。といっても、これは危険な仕事であるということは伝えていたが、楓馬は自ら進んでこの役を選んでいた。
その時に様々な仕掛けをしておき、三笠市襲撃事件後、調べた結果、青崎七海は《リーヴ》の含まれる、日本組織に改修、監修のもといるらしいことはわかった。それ以上の事はわからなかった。
「だけども、情報統制はすごいな」
「何人かの三笠市は《リーヴ》が虐殺をしようとしていたところを見ていたらしい。だけど、そんなの行ったところで信じてもらえない。悪は、私達だけで十分」
「これで何かが変わるのかな」
「いつかは、変わると思う。信じることが大切」
「……だな」
ののかの呟きに氷空も同意する。サラサラと後ろから風が流れる。
「ところで、氷空」
「なんだ?」
「まだ、言えてなかったから。助けてくれて、ありがとう」
「えっ、あ、あぁ……。じゃあ、1つお礼もらっていいか?」
「礼?」
「こっち向いて、目をつぶって」
「?」
言われるがままそうする。緑と蒼だった風景が0に変わる。
そうするとののかの唇に暖かい感触が伝わる。何かと思って瞼をあけると眼前には氷空が目いっぱいいて、そして数秒後にキスをされていたことに気づく。嫌がることも無くそれを受け入れる。
10秒ぐらいの長いキスを終え氷空が笑う。
「これがお礼ということで」
「……私も、嫌いじゃなかったから、お礼というのにはなにかしっくりこない気がする」
「いいんだって」
と笑った瞬間。後ろから声が。
「貴様ら!」
「……《リーヴ》」
こんなところにまでと驚くののかたち。
「また、お前らに」
「また……?」
どこかであったことがあったのかと記憶を巡らせ、そして思いだす。四葉のクローバーば投げつけた《リーヴ》の隊員にそっくりだった。つまりはその隊員だろう。
「お前らのせいで仕事場で信用は失うし、多忙になって彼女にはフラれるし。全てすべて」
「……後半の方は私だけのせいではない」
「うるせぇ」
襲い掛かってこようとする男。あの投げつけた四葉が本当に彼の幸せを奪ったのかもしれないと思う。
「氷空」
「ああ。風と共に」
氷空の体にくっつきののからはその場から離脱する。幸せを、平和を求めて彼女らは未来を進む。




