私に帰ってほしそうな顔でこっちを見てますね。仲間にしてあげましょうか?
「見た目がひどいです」
「何のはなし?」
「なんでしょう」
「酔ってるの?」
「二フラム!」
「いきなりだね」
「自分より弱い敵を消します」
「遠まわしに消えってって言われたのかな?」
「嘘です。そばにいてください。ザオリク唱えます」
「ザオリクは生き返らせる呪文だから効果ないんじゃない?」
「そんな、私は取り返しのつかないことをしてしまいました」
「まあ僕はここにいるけどね」
「二フラム!」
「さっき酔ってるのかって聞きましたけど、私はいたって平常です」
「この状態で平常だと日常生活は結構大変そうだね」
「そうなんです。大変なんですよ。だから少しくらい飲んで愚痴ってもいいじゃないですか」
「うん、やっぱり飲んでたんだね」
「しまった」
「君はまだ中学生でしょ。お酒は何歳になってからかわかる?」
「女の子はみんな永遠の17歳なんです」
「それでも飲酒はダメだけどね」
「細かいことばかり気にしてちゃ前に進めませんよ」
「確かにそうかもね。ところで君が話しかけてるのは観葉植物なんだけど気が付いてる?」
「ああ、どおりで腕がたくさんあると思いました」
「そこで違うって気づこうよ」
「最終形態なのかと思いました」
「僕は村人Aだよ」
「出たな魔王!」
「またもやいきなりだね」
「最近あなたが町を襲ってくれないからこっちの商売あがったりですよ。どうしてくれるんですか」
「すごい言いがかりの勇者だね」
「二フラム!」
「勇者は魔王のことなめすぎだと思うよ」
「あれ、私ってイマドコにいるんですか?」
「君は本当に大丈夫かな?」
「私はどこにいてここは誰なんでしょう?」
「記憶喪失かい?」
「これはペンです」
「リモコンです」
「目は見えてますよ」
「それはわかるよ。ちなみにそれは観葉植物だよ」
「は!魔王か!二フラム!」
「君はいつ帰ってくれるの?」
「なんですか?私に帰ってほしそうな顔でこっちを見てますね。仲間にしてあげましょうか?」
「君の所よりモンスターじいさんのところに行きたいね」
「遠慮しないでください。嬉しそうに馬車に駆け込んでください」
「あ、どっちにしても補欠なんだね」
「しまった。馬車は今いっぱいなので悲しそうな眼をしながらサヨナラしてください」
「なんだろ。別に仲間になりたかったわけじゃないのにすごい屈辱」
「ところで君学校はいいの?今日は平日だから学校あるよね」
「今日は創立記念日なんでないんです」
「そうなの?僕が通っていたときはあの学校創立記念日なんてなかったけど」
「そりゃそうですよ。嘘ですから」
「なんでそんなすぐばれる嘘を堂々とつくの?」
「あ、今更ですけど今の私がしゃべってることは全部適当なんで聞き流してください」
「うん、だいぶ前からそんな気がしてたよ」
「お兄さんこそ今日は平日ですけどずっと家にいていいんですか?は!もしかして今はやりのニートってやつですか?すげー憧れるぜひゅーひゅー」
「僕は今日大学の授業をとってないから普通に休みなの。ニートじゃないし、君の年でニートに憧れるのはちょっとまずいと思うよ」
「できることなら一生家から出ずにいたいです」
「それはまあ、一理あるね」
「さすがお兄さんわかってますね。飲みますか?」
「そうそう、いい加減突っ込もうと思ってたんだけどいつまで飲んでるの?」
「それはもちろん記憶をなくすまでです」
「その後処理はきっと僕なんだろうね」