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三位一体!? ~複垢プレイヤーの異世界召喚無双記~  作者: Sin Guilty
第八章 休日編

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第90話 休日の終わり

 「神殻外装Ver「神竜」(バハムート)/シン専用機」を完全に掌握する事が、俺達の至上命題となるのは当然だ。


 圧倒的な戦闘能力、それを十全に発揮するためには絶対に必要だからだ。


 具体的には各種武装の確認、その使用の際に消費される経験値の量。

 俺、(ヨル)、クレアが合一した上での運用試験。

 その状態で獲得した経験値の扱いがどうなるのかを確認。

 大型フィールドボスを対象とした戦闘能力の検証。

 被ダメージ時の状況と、経験値に与える影響の確認。


 まず、三人での合一については、神竜(バハムート)が最初俺にそうしたように(ヨル)、クレアと額をあわせて二人の刻印をそれぞれの副槽に刻み込んだ。

 これで火器管制は(ヨル)、攻性防御管制はクレア、情報完成は神竜(バハムート)、それらのフォローを受けながら主たる操作を行うのが俺という形が確立された。


 ちなみにキスはなかった。

 やっぱりあれは何の意味もなかったのか。


 まずは複数合一の実験。

 拍子抜けするくらいあっさりと成功する。

 経験値の減少量が増える事も無い。

 全員均一に減少するようだ。


 案の定というか、合一空間での衣装――って言っていいのか――については批難囂々だ。

 まあ確かにボディペイントだもんな、これ。


「シン君はこういうの()趣味なんです、か?」


「さすがに、恥ずかしいんですの」


 赤面する二人はかわいいし、かなり破壊力のある光景だ。

 が、何の疑いもなく俺の趣味だと思われるのはどうなんだろう。

 神竜(バハムート)が機能性云々の説明をして一応納得してくれたが、まだ疑われている気がする。

 一緒に暮らしだしてから、そういう方面の信頼が下がっているのはなぜだ。


 そんなに変かなあ、俺の趣味。


 たまに男物のシャツ一枚になってもらったり、薄手の大きなニット一枚になったりしてもらってるだけじゃないか。

 ああ、なんか一枚だけって言うの好きなんだな、俺。

 エプロンは駄目だ、あれは見えすぎる。

 基本見えないのがいいんだ。


「裸より恥ずかしい格好があることを知りました。シン君のおかげです」


我が主(マイ・マスター)以外には絶対見せられませんわ!」 


 二人の言葉をきっかけに、神竜(バハムート)がいろいろ再現してちょっとした騒ぎになった。

 便利だよなあ、合一空間。

 同じ格好を自分もして、服に埋まってるような神竜(バハムート)もかわいい。


「やはり主殿は夜殿やクレア殿のようなスタイルが好みか? いやしかし独自性というのならこのままのほうが有利なのかも知れぬ……」


 分体ってそんなホイホイ姿替えれるの?

 ロデムといい勝負じゃないか、それだと。

 ある日神竜(バハムート)の分体が妖艶な美女になってたらびっくりするからやめて欲しい。

 

「ふむ、今のと、夜殿、クレア殿くらいのと、ヨーコ殿くらいの分体を揃えるのもありかも……」


 不穏な発言しないでください。

 というか何でもありだな、分体。

 貴重な能力をくだらないことに使わないで。


「よし、バカやってないでさっさと一通りためそう」


「あれあれ? 他人事ですかシン君」


我が主(マイ・マスター)だけ良識あるみたいに言われるのは心外ですの。部屋では……」


「申し訳ありませんでした!」


 仮装状態だった全員が、黒一色のものに戻る。

 まずは基本的な操作と、敵を撃破したときの状況確認だ。


 空中で再び停止して、さっきは神竜(バハムート)に任せきりだった各種管制の確認に入る。

 (ヨル)が火器管制、クレアが攻性防御管制。

 この時点で「三位一体」(トリニティ)がどれだけ優れた能力かを思い知る。


 (ヨル)の視界、クレアの視界を俺は共有している。

 そして俺が二人にしてもらいたいと思った行動を、矛盾なく二人が自分がしたいこととして行ってくれるのは、今までの戦闘の時どおりだ。

 

 最近は戦闘の意味が多様になって困る。


 本来であれば口頭で伝え合って行うはずの火器選択、防御選択が、一瞬の情報共有で行うことが出来る。

 俺は操作に集中しながらも、攻撃や防御の選択、行使を遅滞なく行うことが出来るのだ。

 身体が三つあったらいいのに、という状況を、文字通り「三位一体」(トリニティ)でこなせるというのは、この圧倒的ではあるが故に複雑な「神殻外装」を扱うにはもってこいだ。


 その上神竜(バハムート)が情報管制を行ってくれるので、何のストレスもなく操作が可能だ。


「すごいな、「三位一体」(トリニティ)。このために用意された能力なのかとすら思えるほど、「神殻外装」の操作に特化されてる」


「逆かもしれぬな、主殿。主殿達の「三位一体」(トリニティ)を知っておるからこそ、この仕様にしたともいえる」


 なるほどな。

 俺達を知るダリューンの仕込みであれば、それも納得できる。


「それよりもシン君。この配置といいますか、神竜(バハムート)はなにやってるんですか」


我が主(マイ・マスター)の背中に密着している理由の説明を要求しますの」


 半透明の「神殻外装」に覆われたような俺を中心に、左に夜、右にクレアが()()()()()

 立っている俺より、少し高い位置に椅子とコンソールのようなものが具現化され、そこで火器管制と攻性防御管制に集中している形だ。

 かなりかっこよくて俺としては凄く気に入っているのだが、二人が突っ込んでいるのは、「翼」の感覚代わりをしてくれている神竜(バハムート)の事だ。


 確かに二人の目からみれば、俺の背中にしがみついているようにしか見えない。


「あー、これな。俺「翼」の感覚がよくわからなくて、神竜(バハムート)にその感覚補助やってもらってるんだよ」


「ああ、何か居心地がいいので思わずしがみ付いておったが、主殿はもう補助は要らぬと思うぞ。何か我だけズルしているようなのは嫌なので、情報管制の席を作ってそこに収まろう」


「そうなの? お、うわ、急に離れるなよ、神竜(バハムート)。……何とかなるもんだな」


 ふと背中の感覚がなくなって慌てるが、さっきまで感じていた、神竜(バハムート)の体温をイメージすればそこに翼があると思い込める。

 そこから発生している、全身を包む「浮遊フィールド」も知覚出来ている。

 ほんと何とかなるんもんだな。


「何ですの、この敗北感……」


「クレア、私たちもちょっと真剣にいろいろがんばりましょう。現状ではぶっちぎりでおいていかれてるような気がします」


 要らん心配をはじめてるけど、大丈夫だぞ二人とも。

 

 俺の斜め後、(ヨル)とクレアの真ん中から少し下がった位置に、二人と同じような椅子とコンソールを出現させてそこへ座る。

 四人でちょうど菱形を作っているようなカタチ。

 

 立っている俺を覆うように、多重魔法陣が展開され、全員の前に複数の「映像窓」が展開される。


「これでかなり雰囲気も出たじゃろう。このカタチを「神殻外装Ver「神竜」(バハムート)/シン専用機」の運用基礎形態とするが、よいか?」


「最高です」


「シン君好きそうですよね、こういうの」


我が主(マイ・マスター)がよしとしているものに、異を唱える気はありませんのよ?」


 そんな事言っているけど、二人もかなり気に入っているはずだ。

 何よりもこの、「一緒に戦っている感」が強いのが良い。


 二人は意外と俺の趣味思考と似通った感覚を持っている。

 俺が妄想しながらキャラクターメイクしたことが、現実の(ヨル)とクレアにも影響を与えているんだろうか。


 「神殻外装」の高度を下げ、適当な敵を狩る。

 経験値はパーティー時と同じで、全員が獲得できるようだ。

 俺の視界には俺、(ヨル)、クレア、神竜バハムートの経験値も表示されるようになっている。


 俺が突出していて、夜とクレアはほぼ横並び。

 神竜バハムートだけが低いが、さっきの大量虐殺で跳ね上がってはいる。

 神竜バハムートだけ99でレベルキャップに引っかかると厄介だな、何とかならんものか。


 わざと雑魚の攻撃を受けてみるが、装甲が防げる程度のものであれば、ダメージとは認識されないようだ。

 神竜バハムート曰く、整備すれば元に戻るとの事。

 被ダメージの実験は「神殻外装」の装甲を抜いてくるレベルの敵とじゃなければ実験不可能なので、適当なフィールドボスを相手に実験してみたが、装甲を抜くに至らなかった。

 こちらの攻撃が強力すぎて、ほぼ瞬殺してしまうのも問題だ。


 各種武装の実験をしていたら、辺り一帯から魔物(モンスター)が枯れた。

 ゲームだったら通報モノの所業だ。

 最強系の武装は、適度な魔物(モンスター)が居ないので実験を控えた。

 起動までは問題なくいけたので、使用に支障が出ることは無いだろう。


 一通り試して確信したが、複数合一した状態での「神殻外装」は、大袈裟ではなく無敵だ。


 少なくともゲームであった「F.D.O」フィリウス・ディ・オンライン時代のどんなボスクラスが出てきても、あるいは束になってかかってきても苦もなく屠れるほどの圧倒的な戦闘力。

 凄まじい移動力も兼ね備えているので、かなりの広域をフォローする事も可能だろう。


 ただし先の「大侵攻」のような多面的な攻撃に対しては、どこまで行っても「一戦力」だ。

 極論、リィン大陸全土で同時多発するような事態には対処しきれない。


 ただ決定的な戦場で、絶対に負けないというのは大きい。


 「天空城」(ユビエ・ウィスピール)や、増えた浮島とあわせて運用すれば、先の「大侵攻」時よりもよほど効率的に、広域の事態に対処可能になったといっていいだろう。


 育成(レベリング)もこれを基礎としたものになる。


 迷宮(ダンンジョン)系は、基本的に不可能なものが多いが、高効率のフィールドはいくらでもある。

 「天空城騎士団」ユビエ・ウィスピール・ナイツの他の団員には申し訳ないが、この四人の育成(レベリング)に特化して行うのは決定事項だ。

 もちろん他の団員たちにも、同時多発する事態に備えて強くなってもらわなければならないけれど。


「よし、一通りは試せた。一回戻ろう」


「わかりました」


「解りましたわ」


「承知」


 かなり馴染んできた「翼」の感覚を確かめるように、「聖櫃」(ハンガー)へと帰還する。





 「聖櫃」(ハンガー)に着艦? 後、再び「神殻外装」を固定するシークエンスが開始される。

 再固定が完了するまで、合一は解かない。

 俺の背後、神竜バハムートがご機嫌で再固定シークエンスを進めている。


『物理固定を完了。第一拘束術式、第二拘束術式展開後、第一次冷却を開始』


『移動型ブリッジを再展開。固定完了後は全装甲の換装開始』


『内部魔力の蓄積率78.42パーセント。「聖櫃」(ハンガー)に補充魔力なし』


 落ち着いた男女の声でなされるアナウンスが全部神竜バハムートの仕込みというのが面白い。

 というか、どこでこういう趣味になったんだ。


 初登場時、突っ込まざるを得ない格好で現れたあの男の影響か。

 ほんと趣味的にはいい酒飲めそうな相手なんだよな、あいつ。

 あっちで知り合ってたら、いいオタ友達になれていたような気がする。

 

 今は厄介な存在だけど。


 まあその事を神竜バハムートにたずねるのも無粋か。

 核心に関わる問題ではないから教えてくれるかもしれないけど、なんとなく不愉快な気もするし。

 我ながら勝手なものだ。

  

「主殿、魔力の補充を頼んでもよいか。資機材は有り余っておるが、魔力だけは枯渇しておってな」


「ああ、合一解いたらすぐやるよ。(ヨル)、クレア協力してくれ。たぶん魔力槽ものすごくでっかいのあるだろうから、「天空城」(ユビエ・ウィスピール)に補充した時より時間かかるかもしれんし」


「お任せくださいな!」


「出番です、出番ですよクレア。がんばりましょう!」


 妙に気合が入っている。


 確かに「戦闘力」という視点で神竜バハムートをみれば、圧倒的に俺達に貢献してくれている。

 対抗心というわけでは無いだろうけど、一方的に世話になる関係を良しとしない二人は面白い。

 

 俺達は俺達に出来る事で、神竜バハムートに報いればいいさ。

 

 間違いなく次の「堕神」を解放することが、身を委ねてくれた神竜(バハムート)に何より報いる事になる。

 そのための準備は怠らないようにしよう。

 

『再固定完了』


「よしこれで問題ない。合一を解くぞ?」


「頼む」


 一瞬で視界が替わり、「聖櫃」(ハンガー)の床から、ついさっきまで己自身であった「神殻外装」を見上げている。


 不思議な感じだ。


 (ヨル)とクレア、神竜バハムートも続いて現出する。

 よかった、衣装は合一する前のままだ。

 あんな格好で外に出されたら、アラン騎士団長の目を潰さねばならんことになる。


「シン様、実験中に皇都ハルモニアのアデル代表から念話が入りました。武闘大会の会場準備がほぼ完了、開催日程の打ち合わせに入りたいとの事です。あと「魔獣遣い」、ガル・ギェレク殿がシン様との会見を求めておられるとの報告も同時に入っています」


 合一を解いた俺に、アラン騎士団長が伝えてくれる。


 「神殻外装」の圧倒的戦闘力をみてもあまり様子は変わっていない。

 俺達のすることにいちいち驚くのはやめたのか。

 ほんとこの人凄いよな、ここまでの胆力持っていて、何で一回はげたんだろう。

 理由を聞いたら教えてくれるのかな。


 今は憧れ? のガルさんにもう一度会えるかもと瞳を輝かせている。


 気をつけろアラン騎士団長。


 ロリコン疑惑に続いて、ホモ疑惑が囁かれかねないぞ。

 主に今のアラン騎士団長の様子を、瞳を輝かせて見守っている皇族組二人は要注意だ。


「わかった。実験も一通り終わったし皇都ハルモニアに帰還しよう。休日――というにはいつも通り動き回っていた気もするが、それも終わりだな。たぶん事態が一気に動き出す可能性が高い。「天空城騎士団」ユビエ・ウィスピール・ナイツのみんなには世話をかけるがよろしく頼む」


「承知しましたシン兄様。しかしものすごい「力」を得られましたわね」


「びっくりしました。シルリアもいつか神竜(バハムート)様にのれますか?」


「主殿の嫁になったらのせてやれる。もう数年は学校で勉強じゃな、シルリア姫は」


「がんばります!」


「そういうルールなのですかシン様。嫁限定副槽搭乗権限。愛人でいいなどといっておれなくなりましたね、これは」


「ええ? そういうルールなの神竜(バハムート)?」


 そんな制限掛かってるんだ。

 というか嫁であればいいというのもよくわからん。


「だって我、主殿の嫁様以外を受け入れるの嫌じゃもの。あと殿方は主殿の頼みでもダメ」


 確実に女の子度上がってませんか神竜(バハムート)

 (ヨル)とクレアがうんうん頷いているのもどうかと思う。


「だからといって無制限に増やしちゃ駄目ですのよ? 我が主(マイ・マスター)


「まあそんなに心配はしてませんけど、フィオナとシルリアはちゃんと成長を待ってくださいね、シン君。神竜(バハムート)は特例です。基本的にロリコンは駄目です」


 ちょっと待ってくれ、その言い方だとフィオナとシルリアはある意味君たち公認なの?

 文字通り時間の問題なのか?


 そこで膝をついているアラン騎士団長は、すまん。

 正直俺も男はいやだ、あきらめてくれ。





 圧倒的な力を手に入れた。

 それを行使する理由も明確にできた。

 この世界(ヴァル・ステイル)が、俺にとってはいい方向へ進んでいるのも確認した。


 忙しかったが、いい休日だったといっていいだろう。


 休んだら次は仕事だ。

 まずは「武闘大会」

 ガルさんを筆頭とした、「異能者」達の思惑に対峙しよう。

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