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三位一体!? ~複垢プレイヤーの異世界召喚無双記~  作者: Sin Guilty
第七章 月の迷宮編

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第79話 暫定序列

 我ながら人目も憚らず、三人で盛大に照れてるのはどうかと思う。


 それをニヤニヤと見守るヨーコさん。

 自身も赤面してしまっているフィオナ。

 きょとんとしているシルリア。

 咳払いするアラン騎士団長。


 真っ赤になっている俺達三人も含めて、その様子を怪訝そうな顔で眺めていた神竜(バハムート)が、表情の意味に気付いたのか、一瞬ぎょっとなった後、しどろもどろに言い訳をはじめる。


「待て! 待てシン殿。夜殿にクレア殿も。貴殿らは誤解している。我はあれだ」


「……なんだ」


 この期に及んで何を待てと言うのだ。

 あれだけストレートに、自分に載れと言っておきながら。

 いや別にそれが神竜(バハムート)にとって、性的な意味を持たない事くらいは理解しているが、隠喩というかなんというか、どうしても連想してしまうんだよ。


「そのなんだ。千年前にシン殿の力になったときは精神同調によるリンクだし、兵器として運用されていた時も神竜(レヴィアタン)ともども、誰も操作槽には迎え入れておらぬ。兵器として扱われることは甘受したが、この身に我が認めぬ者を受け入れることまで許容した覚えはない」


「……だからなんだ」


 言いながら神竜(バハムート)の顔もだんだん赤くなっていく。


「だ、だからだな。――我は清い身だぞ!」

 

 何言ってるんだ、神竜(バハムート)


 でも、あれ? この言い方からすれば、神竜(バハムート)にとっても自身に人を載せるというのは特別なことなのか。

 というか「清い身」って、それまんま俺達の解釈と同じ価値観じゃないか。

 そういう事をさらっと決断するなよ。

 それだけアストレイア様を確実に助けることに、意識が向いていたんだろうけど。


「だからこそです」わ」


「……おぉ?」


 (ヨル)とクレアにサクッと言い返された神竜(バハムート)が動揺を見せる。

 

 「初めて」に拘るのは男も女も一緒なのかな。 


「今回初めて、シン君を操作槽に直で迎え入れるんですよね」


「ぶ、物理的に殿方を受け入れるのは、初めてなんですのね?」


 (ヨル)もクレアも余裕がないのか、質問が直截的になっていませんか?

 もう、取り繕ってもしょうがないのかもしれないけども。


「――え? な、や、あ、ちが……わないの、か。そうか、我は初めて、我が身に他者を受け入れる事になるのか。そうか、それがシン殿になるのか……」


 おいちょっと待て、神竜(バハムート)まで真っ赤になって俯くなよ。

 収拾つかないだろこれ。


「フィオナ様、シルリア様。今シン様の後宮序列が定まりつつある状況です。正妃候補二人が肚を決めたようなので、左正妃と右正妃は不動となりました。まあこれは端から織り込み済みなので、しょうがありません。シン様は(ヨル)様とクレア様を基本平等に扱いますから、太政皇后は永久空位でしょう。また圧倒的な戦力の提供を同衾とイコールにするという荒技と、意外な無垢さを武器に両正妃の覚悟を決めさせた神竜(バハムート)様が、大納言妃の座を射止めました。シン様が後宮をどこまで拡大されるかは不明ですが、私たちも正式に嫁と認められる従五位の下までには入りたいものですね」


 ちょっと待って、ちょっと待ってヨーコさん、長い台詞で何言ってんの。

 あれ、フィオナとシルリアも赤面してるという事は、今の長台詞、基本はあってるのか。

 なんで律令官位制が下地になってんの?

 

 皇后とか妃とか、そういうイメージだったんだけど。

 もしくは平安っぽく中宮とか女御とか。

 ジャパ○スクシリーズ好きだったな、そういえば。


 ゲーム時代に、ウィンダリア皇国の後宮制度なんて出てくる場面なかったしな。

 ヨーコさんが適当に言っているんでなければ、そんなとこまで考えてたのか「運営」は。


 いや、違うか。


 現実である以上、皇国にそういう制度はあって然るべきなのだ。

 それが何故、律令官位制を土台にした後宮になっているのかは不明だが。

 太政皇后て……


 いや今はそういう事考えてる場合じゃない。


「妾はいずれ輿入れさせてもらえるという約束があれば、それで充分です。今はまだ幼い我が身では、シン兄様を満足させることはできないでしょうし」


「わ、私もいつか混ぜてもらえたらそれでいいです! 愛人とか日陰ポジションもありです!」


「確かにそういうのにも憧れますわね、シルリア。妾達はそっちの方向で混ぜてもらいましょうか」


 何言ってるんだ、皇族組。

 君らがそんなポジションで何とかなるわけないだろう。

 フィオナもさらっと生々しいこと言わないでくれ。

 それとシルリア、彼我の身分差とか戦闘力差なんて関係なく、「お父さん」っていうのは怖いんだぞ。

 実際に戦えば絶対に勝てるのに、皇帝シルウェステルが今の会話を聞いていたらと想像したら冷や汗が出た。


 いや、二人を後宮に入れるつもりは……ってそもそも、そんなもん存在してないだろう。


 なんだ俺の後宮って。


「いやシン様、無理でしょう。(ヨル)様とクレア様と覚悟決めて、その上神竜(バハムート)様の輿入れまで決まっては、各国王家筋は黙っちゃいません。そこまでなら力にものを言わせて黙らすことも可能でしょうけれど、千年を待ったフィオナ元第一皇女や、シン様のためにあの年から「天空城騎士団」ユビエ・ウィスピール・ナイツの一員として頑張っているシルリア皇女を無碍にできますか? (ヨル)様やクレア様も認め気味なのに。お二人を受容れれば、ウィンダリア皇国だけを優遇するわけにもいかなくなります。ああ、私はご心配なく。今後拡大していく一方の一大勢力、「冒険者ギルド」の長がシン様の女であることに、安心こそすれ異議を唱える勢力はないから安心です。後宮に縛られなくてもオッケーです」


 だからヨーコさん独白読むの止めて。

 くっそ長台詞連続で生き生きしてる。


 シン様の女、とか表現が生々しいわ。


「イイナー。シンサマウラヤマシイナー」


 貴様、アラン騎士団長。


 俺よりもアラン騎士団長の方が、大変な事態になる可能性高いんだからな。

 「天空城騎士団」ユビエ・ウィスピール・ナイツで俺を除く唯一の男性。

 それが独身となれば、各国が黙っている訳ないだろう。


 モテるがいい、思う存分モテるがいいわハゲ。


 泣きついてきても助けてなどやらんからな、フィリアーナ公爵令嬢より高位のお姫様から結婚申し入れられて慌てふためくがいい。


 ――そうなったら実はやさしい女性陣の一瞥で、俺が介入するしかなくなるんだろうけど。

 やさしいのはアラン騎士団長にじゃなくて、フィリアーナ公爵令嬢になんだけどね。

  

「いやちょっと待ってヨーコさん。フィオナやシルリア、ヨーコさんは別として、夜会で逢ったようなお姫様達を相手する気ないからな、俺は!」


 冗談じゃない。


 立場に伴う義務とか何とか言って、なし崩し的に後宮なんぞ成立させられてなるものか。

 「世界会議」には(ヨル)とクレアが太っとい釘刺したみたいだから大丈夫だと思うけど、ヨーコさんが要注意だ。

 言うべきことを、言うべき時に言っておかなければ、水面下で何が進行するかわかったもんじゃない。


 ――あれ?


 (ヨル)とクレアがちょっとびっくりしたような感じで俺を凝視してる。

 ヨーコさんをはじめ、フィオナやシルリアも沈黙している。


 なんか下手うったっけ今?

 アラン騎士団長が斜め上の、あらぬ方向に視線を投げてこちらを見ない。


「――別として」


 フィオナが自分の小さな手を両頬にあてたまま、茫然と言った感じでつぶやく。


「――私たちは、シン様にとって「別」なんですね」


 シルリアが両のこぶしで口元を隠し、感極まったような顔をしてこちらを見ている。


「予想外の言質を取れましたね、フィオナ元第一皇女、シルリア皇女。しかしこんなにうれしく感じるとは私自身少々意外です。こうなると確かにこれ以上他者は入れたくなくなるものですね。我ながら勝手なものです。(ヨル)様、クレア様、神竜(バハムート)様、いかがでしょう」


「――ええ、まあ、正直びっくりしましたけど。でも反射的に出た言葉という事は、シン君の本音って事でしょうし、そうであるなら私は別に……」


我が主(マイ・マスター)がそう望まれているのであれば、私がとやかくいう事ではありませんわ」


 ああそうか、さっきの言い方だとそう取れるのか。

 で、意外と二人とも肯定的なのな。


「え? 我はもうシン殿の嫁の一人になるの決定しとるの? 一応神なんじゃけど我。ただ大事なところにシン殿入れて、好きなように我が本体をしてもら……う、だけ、なんじゃ、が……」


 言ってて照れるのなら言うなよ神竜(バハムート)

 何でもない事のように言おうとして、余計になんか卑猥になってるぞ。


「真面目には考える。今は保留な。けど神竜(バハムート)とのことがあるから、(ヨル)とクレアは、皇都に帰ったらデートしてください……」


「……はい」


「……承知ですの」


 振出しに戻ってるじゃねえかこれ、どうすんだ。


 でも冗談抜きで、ありがたい話ではある。

 この後、まずは「異能者」達の思惑の絡んだ武闘大会があり、そこにダリューンや堕神群は何らかの接触を図ってくるだろう。

 「システム」そのものの介入だって、充分にあり得る。


 絶対に全てを解決できる保証なんてない。


 だけどみんな、解決した後の事を話題にしてくれている。

 テレ隠し混じりの、絶対この後の難局を乗り切るという各々の宣言みたいなものなのか。


 深刻そうだった神竜(バハムート)が、テレたり憮然としたり、何より最終的には笑ってるのが救われる。


「という事は暫定ですね。今は暫定序列。筆頭は(ヨル)様クレア様の両名。次いで神竜(バハムート)様。ここまではまあ確定。その後はフィオナ元第一皇女、シルリア皇女の順でいいでしょう。末席は私ということで」


 綺麗にまとめようとしたのに続行しないでヨーコさん。

 これ以上はダメな流れになる未来しか見えない。

 無駄に俺が傷を負う形の。


「私としては、(ヨル)が筆頭でも構いませんのよ?」


「い や で す ! 私とクレアは同格でなければ嫌です」


 意外といつもそうだよな。

 クレアは半歩引き気味で、(ヨル)は完全な同等を主張する。

 ()()()()順番が影響しているのだろうか。


「我は三番目なのか? という事は合一実験は、夜殿とクレア殿が済んだ後になるのか?」


「す、済んだって、何てこというんですか神竜(バハムート)


 (ヨル)、拾うな。

 拾った方が確実にダメージを負う。

 しかし、神竜(バハムート)はなんというか散文的だな。

 テレる時はテレるのに、そのギャップが凄まじい。

 それにしても、仮にも女の子が「済んだ」はないだろう。


()()()は妾とシルリアはもう少し先ですわね。シン兄様が望むのであればすぐでも妾は構いませんけれど、アラン騎士団長でもあるまいに、シン兄様にそういう趣味はないでしょうし」


 アラン騎士団長がゆっくりと膝をつく。

 続いて両手を地につけた。


 ……その体勢でこっちみんな。

 俺を巻き込もうとするんじゃない。

 その話は今度酒飲みながらな。


()()()ってなんですかフィオナ姉様。(ヨル)様とクレア様は何を済ますんですか?」


「もう少し大人になったら、シン君から教えてもらいましょうね? シルリア皇女」


「はい、夜お姉様!」


 こっちに丸投げか!


 穢れ無きの笑顔で俺を見るシルリアに、引き攣った笑顔を返す。

 (ヨル)は明後日の方向を向いている。


 フィオナと並んでるから忘れそうになるけど、シルリアは本物の幼女なんだよな。

 その年で「姫騎士」として「天空城騎士団」ユビエ・ウィスピール・ナイツの一角をきちんと担っているというのは凄いことだ、才能と周りのフォローがあるとはいえ。

 なんかこの娘に手を出すのは、人として何かが終わる気がする。

 あと数年もすれば考えも変わるんだろうか。


「ここで一つ問題が。完全に興味本位で聞くのですが、同格であるという事は順番はどうなるのでしょう? 同格に後先があってはなりません。ですがシン様は一人です。――シン様、「分体」身に付けましょう、今から。今すぐ! ……ああ駄目ですね、本体と分体で格差が生じます。がっかり」


「最低ですわ! 最低ですのよ!」


 「分体」か。

 たしかに可能であれば、手に入れたいスキルではある。

  

「「三位一体(トリニティ)」が私やクレアにも感覚届けてくれれば、いいんですけど……」


「すごいことさらっと言いますね、(ヨル)様。それって男性の感覚と女性の感覚を同時に得れると同時に、シン様、(ヨル)様、クレア様の得る感覚を三人で共有するという、究極の3」


「きゃああああああ、違います。そういう意味じゃないです。なし、今のなしで!」


「それ以外どういう意味があるのか解らんのじゃが」


「容赦ありませんわね神竜(バハムート)


「しかしそうすると、シン様のみは、「三位一体(トリニティ)」で(ヨル)様とクレア様の感覚を共有することが可能ということですね。これは是非、後程感想をお聞きしなければ……」


「プ、プライバシーの侵害ですのよ?」


「そ れ 以 前 の 問 題 で す !」


 ああ収拾がつかない。

 何で女性陣ってこの手の話で異様に盛り上がるんだ。

 いや違うな、人数差の問題だな。

 男だって一定数集まればこの手の話はひどく盛り上がるものだ。


 とはいえ……

 

 ええい、肩に手を置くなアラン騎士団長。




「よくわからんところもあったが、我はシン殿の三番目の嫁になるという事じゃな。先の二人が済むまでに我の本体の艤装を終わらせておく故、出来るだけ早く済ませてきてくれるとありがたい」


 いやもうちょっとこう……まあいいか。

 

「シン殿、ここに直接呼ぶがよいな?」


 この広さがあれば問題ない。

 もともと空いている片方は神竜(バハムート)」用の整備装置一式なのだろうし。


「ああ。でも神竜(バハムート)、そんな「逸失技術(ロスト・テクノロジー)」に精通した人間なんて今はいないと思うんだけど、艤装するにしてもなんとかなるのか?」


 神竜(バハムート)を兵器として整備するなんてことが、この世界(ヴァル・ステイル)の住民にとってみればそもそも常識の埒外だ。

 異世界の技術を、ただ使うだけではなく理解して整備することなど出来るとも思えない。


「そこは問題ない。我が本体を「聖櫃(ハンガー)」に固定すれば、我がすべて操作可能だ。我らは()()()()()()()()()()()。かかる期間は一週間もかからんと思うが、それまでに済ませられるか?」


 完全自律型の兵器だったというわけか。

 奥の手的に、人と融合する能力も持っていたという感じなのかな。

 なるほどそれなら心配はいらないだろう。


 俺が明確に承認すると、この空間に直接「本体」を呼び、自ら「聖櫃(ハンガー)」に固定した。

 しかし物凄い光景ではある、神竜(バハムート)級が二体並んでいるというのは。

 普通に世界(ヴァル・ステイル)を滅ぼせそうだ。


 それと、あのな神竜(バハムート)


 一週間かかるって、それどんな耐久テストだよ。

 デートして食事して、まあそのなんだ、一緒なら二日、別々でも四日で何とかなるよ。

 あれ、結構余裕ないな。


「――どうする?」


「……シン君が嫌じゃなければ、私は一緒がいいです」


「……我が主(マイ・マスター)(ヨル)がそれでいいなら、私もそのほうが良いですわ」


 うわー。

 デートとかは楽しそう、食事も。

 その後が……


 いや、肚括ったはずだ。

 ビビッてる場合じゃない。


 多分、いや間違いなく、この後大きな動きが始まる。


 神殻外装である「神竜(レヴィアタン)」の入手は間違いなくその嚆矢となるものだろう。

 ダリューンもしくは「堕神群」の思惑を外し、神竜(バハムート)を神殻外装とすることになりはしたが。


 「はじまる前」に、後悔の無いようにしておくのは大事なことだ。

 それにきっと、何があっても凌いでみせるという気概をくれる、今回の事は。


 うあ、デートコース考えて、食事する場所予約しないと。

 ……って、そんなスキル俺にあるわけないだろう。


 たすけてアラン騎士団長。

 駄目だアラン騎士団長も、モテだしたの最近だ。

 つかえねぇ。


 いいや、稚拙でも自分で考えたデートにしよう。

 喜んでくれるといいけれど。




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