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三位一体!? ~複垢プレイヤーの異世界召喚無双記~  作者: Sin Guilty
第六章 地方反乱編

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第69話 宿者の覚醒

 七罪人superbia:コード「Lucifer」、象徴するのは「傲慢」、能力は――


 「堕天」――プレイヤーが一生懸命育てたPCプレイヤーキャラクターを、勝手にNPCノンプレイヤーキャラクター化するもの。


 しかも不可逆と来た。


 ある意味まさに「傲慢」に相応しい能力かもしれない。

 自分の目的のために、他者のプレイヤーキャラクターをノンプレイヤーキャラクター化するなんて、ゲームである「F.D.O」フィリウス・ディ・オンライン時代に存在したら炎上一直線だ。


 まあ今さらではある。


 「Septem peccata mortalia」――所謂「七罪人」モードの能力は、七罪人ira:コード「Satan」の「群体化」からして「ゲーム」としてのバランスなんてものは、まるで無視されたような能力だ。


 他のプレイヤーキャラクターへの干渉権限を与えるなど、「MMOゲーム」である以上あり得ない。


 言うまでもないことだが、そんな「能力」は多数の人が楽しむMMOゲームとしての根幹を崩すことになるからだ。

 スタンドアローン型のRPGであれば、主人公に与える能力としてはありかもしれないが、それでもどちらかというと改造ツールなどによる「チート」と言った方がしっくりくる。


 まあ今俺が置かれている状況、異世界転移系の物語において、「チート」を得ることはお約束であるからいいのかもしれない。


 俺の物語のタグには「チート」がある。

 間違いない。

 あと「ハーレム」もあるな。

 出来れば「主人公最強」も付いていることを祈るのみだ。


 これらの能力はあくまで軸がこの世界(ヴァル・ステイル)にあり、「F.D.O」フィリウス・ディ・オンラインという「ゲーム」を通したプレイヤーとの接続を絶たれた、「宿者」(ハビトール)――プレイヤーキャラクターを()()()()()()ためのものとしか思えない。


 間違いなく「システム」か「堕神群」の、なんらかの干渉があるのだろう。


 そして俺はもうプレイヤーキャラクター達に、独自の意志が在ることを知っている。


 「シン」としての自分自身はもとより、(ヨル)やクレアはその証左だ。

 プレイヤーの事は尊重するし、俺が他人のプレイヤーキャラクターを好き勝手に操作することに忌避感はある。

 だけど独自の意志を持っている「宿者」(ハビトール)――プレイヤーキャラクターが、一方的にプレイヤーとの接触を断たれたために、ただ眠り続けざるを得ない状況は何とかしたい。

 俺が怒りを得た「扱い」だって、本人に聞いてみなければ判断しきれないともいえるのだ。


 聞くまでもない下種はともかくとして。


 だから俺は、「堕天」を行使することを厭わない。

 七罪人superbia:コード「Lucifer」が示す通り、「傲慢」に自分の判断を優先する。


 七罪人superbia:コード「Lucifer」が発動した際、黒竜が黒有翼獅子(グリフォン)に変化した時は思わず笑ったが。


 全部()()がやるのかよ。


 お前の名前はロデムな、決定。

 「シンのロデム」ってのは、なんとなく名前の座りがいい。

 「罪のロデム」の意を持つことにもなるわけだし。


 ながらく黒竜とだけ呼んできたが、やっと名前が決まったわけだ。

 たぶん今まで以上に女性陣がかわいがるな。


 七大罪をモチーフとし、それそれに対応した動物にもなるというのであれば、後は何があるか。

 

 強欲の狐――黒狐。針鼠でもありっちゃありか。

 嫉妬の犬――黒犬。蛇じゃないといいなあ。

 色欲の山羊――黒山羊。蠍はさすがにあるまい。

 怠惰の熊――黒熊。クマー。驢馬とか出てこられてもなあ。

 暴食の豚――黒豚。おいしそうだなおい。黒蠅じゃないことを祈るよ。


 黒いの(ロデム)は、これだけの種類に変化する可能性があるという事だ。


 七大罪全てを揃えたら何かが起こるとかは、ゲームとして考えるんならお約束ではある。


 たぶん何かの仕込みはあるだろう。


 少なくとも問題を解決するために、それぞれの能力が必要になってくるであろうあたりは、鉄板展開と言っていい。 


 仕込んだのが「システム」側なのか「堕神群」側なのかはわからないが。


 覚醒の鍵が、俺の感情なり意識の持ち方であるというのならあんまり得たくない感じだな。

 嫉妬とか、ロクな覚醒シチュエーションが想像できない。

 色欲はまあ近いうちになんとかなりそうな気がしないでもなくもないかもしれない。


「七大罪を集めなければラスボス倒せないと思っているようだが、実はそんなことはなかったぜ!」


 な展開に期待しよう。

 クレアは黒いの(ロデム)の全バージョン見たがるだろうけど。



 という状況で現在、「三位一体」(トリニティ)は停止している訳だが。

 さっきからちょっと気になっていることがあるので聞いてみる事にする。


「で、どこで何してきたの、(ヨル)、クレア。あとフィオナと神竜(バハムート)も付き合ってただろ。何してたの?」


 「三位一体」(トリニティ)が切れた時から夜とクレア、それにフィオナと神竜(バハムート)がどことなくおかしいのは気付いていた。


 あの感じはおそらく、「分体」の方に集中してる時の感じだ。

 そういう時、夜もクレアもデフォルトの表情が笑顔になって、こちらからの問いかけに一拍間があくようになる。

 「三位一体」(トリニティ)の感覚が常にある俺とは違い、通常は本体と分体を並行起動させることなどめったにない二人には違和感が発生するのだ。

 またその違和感が、俺が「三位一体」(トリニティ)に慣れるまでに得ていた違和感だから非常にわかりやすい。


 「吸血鬼」である夜も、「神子」であるクレアも、神竜(バハムート)の「分体」に似たスキルを持っていることは知っている。

 千年前の戦いでは、そういう能力もすべて使い尽くして世界(ヴァル・ステイル)を救ったのだ。

 ゲーム的に言うのであれば、そういう能力がなければ物語が破綻したともいえる。

 フィオナも両儀四象の一角、「天を喰らう鳳」と合一しているからにはそれくらいできる可能性は高い。


 というか間違いなくあるだろう。


 その四人が、「三位一体」(トリニティ)が切れてから少し様子がおかしい。

 他の人にはわからないかもしれないが、ほんの少しだけ仕草に違和感が残る。

 神竜(バハムート)はこちらに居るのも「分体」なので、本来そう違和感を発生させることはないのであろうが、「向こう」での会話あたりに引っ張られての事だろう。 

 特に(ヨル)とクレアは、いつも「三位一体」(トリニティ)で繋がっているだけに、それが停止している時の違和感に、俺は敏感なのだ。


「え? 何言ってるんですかシン君。そんなことしてませんよ、なんだったら「三位一体」(トリニティ)発動してみてくれてもいいですよ? 今なら」


「ですわ、我が主(マイ・マスター)。別に我が主(マイ・マスター)に隠れて「世界政府」をガツンとかやってませんわ」


 やったのね。


 それで今はもう()()()()()()のね。


 その上でしらばっくれる事に決定している訳だ、二人の中では。

 こうなると突っ込んで聞いても、絶対しらばっくれ続けるんだよなあ。

 思えばアストレイア様との「()()」とやらについても未だに聞かせてもらえていない。

 自分で思っているほど主導権握れていないかもしれないなこれは。

 もしかして他人から見ると、尻に敷かれているように見えるんだろうか。


 ロリ談義呑み会のついでに、一度アラン騎士団長に聞いてみるのもいいかもしれない。

 

「――え?」


 とか言われたら毟るが。

 

 フィオナと神竜(バハムート)が呆然とした顔をしている。

 うん、仲良くなると結構びっくりするだろ?

 たぶん二人も「内緒にしましょうね」と約束していたわけだ。


 思いっきりばれてるだろ、今。――本気で隠しているつもりなんだぜ、二人とも。


 黙って立ってたり、戦ったりしてれば美しく凛々しい我が両翼、「吸血姫:(ヨル)」と「神子:クレア」は、素になると結構ポンコツなのです。


「ああ、そう。うんごめん気のせいだった」


 今度はこっちを信じられない物を見たような目で見るの止めてくれませんか、フィオナと神竜(バハムート)

 特にフィオナ、口を閉じなさい。

 二人が隠したがってるんなら、詮索しないのが優しさだろう?


「おや、夜様とクレア様の隠し事を黙認ですかシン様。そんなものベッドの中で尋問すればすぐゲロると思うんですが。今夜聞くんですか?」


 そっち方面のネタやめてくださいヨーコさん。

 最近、夜もクレアもちょっと積極的でやばいんです。

 主に俺の忍耐力が。


「シン様に隠し事をすれば、尋問していただける……」


 シルリアは一度きちんとお話ししようか。

 俺はこのままシルリアが育つのがすごく不安だよ。

 フィオナ見てると、皇族って実はこうなのかなと思わなくもないけど。


「おっとシン様、男の懐の深さですね。女の子の隠し事を気付かなかったことにしてあげるとは紳士だ」


 うっさい、ハゲ。

 本物の髪の毛だけど偽フサが。

 毟るぞ。


「「し て ま せ ん !」わ!」


 うん、わかったそれでいい。

 それで通そうとするってことは、そこまでの事はしていないんだろうし。

 どうせ俺の顔を見て、偉い人たちの顔が引きつる程度の事だ。

 そんなのは千年前から結構慣れてる。



「よーし、俺張り切ってブリアレオス氏をノンプレイヤーキャラクター化しちゃうぞー」


 台詞が棒読み口調になるのは仕方がない。

 話を先に進めよう。進めるしかない。


 フィオナと神竜(バハムート)は、終ぞ口を差し挟むことはなかった。

 「呆然としている」というのはあの状態をさしていうのだ。

 フィオナはともかく、神竜(バハムート)は「呆然とさせられる」体験なんてそうはないだろうからな。

 いいことなのかもしれない。

 違うか。


 ()有翼獅子は黒竜の時と同じように、俺の左肩にのっている。

 小さいというだけで、これだけ精巧で威厳ある造形でも可愛くなるというのがすごいな。

 クレアはずっと羨ましそうだし。


 意識を眠るブリアレオス氏に集中すると、「神の目」(デウス・オクルス)が立ち上がる。


『七罪人superbia「シン」の周辺に存在する、プレイヤーキャラクター1体を確認』


『player character:ユニークIDxxxxxxxxx:固有名「ブリアレオス」:job「戦士」レベル99』


『現在「群体化」による疑似ログイン状態で「シン」の支配下にあります』


『コード「Lucifer」による、ノンプレイヤーキャラクター化を行いますか? Y/N ※不可逆です』


 今更悩んでる場合でもない。

 視線で「Y」を選択する。

 「堕天」によるノンプレイヤーキャラクター化から、「聖餐」(エウカリスティア)で疑似「宿者」(ハビトール)化へ繋げる事も可能かもしれない。

 まずは俺達以外の「宿者」(ハビトール)――プレイヤーキャラクターであった者の話を聞けるようになることを優先する。


 俺の支配下である「群体」からブリアレオス氏が外れたことが解る。

 それ以外の変化は何もないが、「堕天」が正しく機能していれば今現在、ブリアレオス氏は元「宿者」(ハビトール)――プレイヤーキャラクターであった、ノンプレイヤーキャラクターとなっている。


 ダリューンの話にあったような、プレイヤーと切り離された故の「虚ろ化」は起こらないはずだ。


 「虚ろ化」を止めるという目的のために、「宿者」(ハビトール)達は「茨の冠」(Via Crucis)を受け入れたはずだし、未だ本来自分に宿るはずのプレイヤーと再邂逅する手段はないが、少なくとも「宿者」(ハビトール)当人の意から離れた行為ではないと信じたい。


 他者の道具となってまで、己の存在を保とうとした「宿者」(ハビトール)が、己の意識を保ったまま復活できるのであれば問題はないはずだ。


「たぶん問題なく完了している。クレア頼む」


「承知ですわ」


 ある意味千年間眠り続けていた、「ブリアレオス」氏の意識の覚醒だ。

 幸いにしてと言うべきか、宿っていたプレイヤー、俺と同じ世界の住人との面識がないため、俺にとっては今から話す「ブリアレオス」氏が全てだ。

 凜さんみたいに「中の人」をある程度知っていれば、また受ける感覚も違うんだろうなとは思う。


 クレアの「覚醒」を受けて、ブリアレオス氏がその厳つい顔に表情を取り戻す。

 開かれた瞳の色は髭や神と同じ(グレー)

  

「……儂が意識を取り戻すという事は、ダリューン殿の言うとおりに事は進んだという事か」


 もっと「ここは?」とか「お前は誰だ?」みたいなお約束台詞を期待していたら全然違う言葉が飛び出した。

 その巨躯を起こし、俺達の方へ向き直る。

 そのまま膝をついて頭を垂れた。


「であれば、貴方がシン殿だな。千年に渡る「茨の冠」(Via Crucis)による()()()()の解除心底より感謝する」


 その一言だけで多くのことが解る。

 どうやら俺達がダリューンの残した「メッセージキューブ」から聞いた話が真実の全てではないらしい。


 だが焦ることはないだろう。


 千年ぶりに目覚めた俺達と基本同じ存在。

 「宿者」(ハビトール)――プレイヤーキャラクターであった「ブリアレオス」がすべてを語ってくれるだろうから。

 彼が守り続けてきたグレイリット辺境領を、領民以外とはいえ壊滅させたことで怒られないといいのだが。






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「シン君?」


「ん?」


「いつもこれくらいの時期って、妙に弱いけど数だけ多い敵とかが襲ってきて、撃退すると強くはないけど見たことないアイテムドロップすることなかったですか?」


「……ああ」


「そういえばそうですわね。バタバタしてて気が付きませんでしたの」


「うん、運営もいないし、この世界(ヴァル・ステイル)には関係ないだろうし、ね……」


「なんでシン君、寂しそうなんですか?」


「え? そんなことないよ、別にチョコとか欲しくないし、(ヨル)とクレアは傍に居てくれるし」


「なんでそこでいきなりチョコなんですの? 欲しいのでしたら用意致しますわよ?」


「シン君、甘いもの好きでしたっけ?」


「いや、そういうわけじゃ……二人で作ってくれる?」


「お安い御用ですけど、何故急にチョコ?」


我が主(マイ・マスター)が望まれるのでしたらすぐにでも」


「……ありがとう」


「……あんまり見ないレベルの笑顔ですわよ、我が主(マイ・マスター)


「満面の笑みですね。ちょっと解せませんけど、頑張って作りましょうか、クレア」


「ですわね」


「チョコに合う飲み物……お酒でもいいですよね」


「三人で飲むのもいいですわね、すぐに用意致しますわ」


――「天空城」(ユビエ・ウィスピール)の居室での一幕。

爆発しろ。

何故辛くなるのに書いたのか。

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