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三位一体!? ~複垢プレイヤーの異世界召喚無双記~  作者: Sin Guilty
第四章 世界会議編

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第40話 宴 真打

 俺は今、「闘技場」地下の結界戦闘システムの前にいる。


 (ヨル)とクレア、ヨーコさんも一緒にいるが、まあ俺達はただついてきただけだ。

 ヨーコさんは元ギルド職員だけあって、「闘技場」をはじめとした「逸失技術」(ロスト・テクノロジー)には精通している。

 戦闘力だけでなく、この人が味方に付いてくれることは俺達にとってとても大きい。


 そのヨーコさんの


「どうせやるなら派手にやりましょう」


 という言葉に同意すると、一緒にここまで来るように要請されたのだ。


 千年前もたまに使用してはいたものの、こんな場所に入ったことはない。

 必要もなかったしな。

 ゲームとして「F.D.O」フィリウス・ディ・オンラインをプレイしていた「俺」の感覚では、各主要都市にある「闘技場」で可能だった「特殊戦闘フィールド」選択に関わる部分なのかな、と予想している。

 

 「特殊戦闘フィールド」はまさに「逸失技術」(ロスト・テクノロジー)と呼ぶに相応しい仕組みだ。


 高レベル者が全力で戦うには、さっきの戦いのように二千五百人が十分に戦える広さを誇るこの「闘技場」の広さをもってしても狭すぎる。

 特に「瞬脚」のような「高速戦闘機動用スキル」を連撃(コンボ)系スキルやオートロック系スキル、追跡系スキルなどと「スキルコネクト」させた上位スキルを主として使うような、高レベル者同士の対人戦は冗談のような戦闘範囲になる。

 逆に多対多の戦闘であれば連携などの絡みもあり、戦闘範囲は狭くなるくらいだ。


 基本的に対魔物(モンスター)戦を中心とする「F.D.O」フィリウス・ディ・オンラインでは、広範囲、高速機動戦闘をこなせる者は、いわゆる「上級者」に限られる。

 だけど「俺の考えた最強職」と「俺の考えた最強技」を、超高速機動で三次元的に闘い、相手に勝つことでそれを証明する「対人戦」は「F.D.O」の一つの花形ではあった。

 

 ものすごい高速戦闘と読みあいなんで、苦手なんだよなあ、俺。


 この対人戦をNPCノンプレイヤーキャラクターと行うことを運営が取り入れ、それ専用と言っていい強力なNPCが何人か設定された。


 そのうちの一人がヨーコさんだ。


 プレイヤーキャラクターが最初のレベルキャップを解放するために勝たなければならない相手。

 それまで対人戦を全くやっていなかった俺は、初戦見事に敗退した。


 まさかそれが神話で語られてるとは。

 その再戦ともなれば、盛り上がるのもしょうがない話だ。


「さすがですね。これで完全に「特殊戦闘フィールド」の起動が可能です。ご協力に感謝します、夜様、クレア様」


 魔力の補充が終わったことにヨーコさんが礼を言う。


 俺達の世界(ヴァル・ステイル)への帰還に伴い、「異能者」達は力を取り戻し、自分自身の魔力回復は可能になっているとのことだが、他者への魔力補充は不可能だ。

 千年前からプレイヤーキャラクターの専売特許だったし、おかしなことではないだろう。

 「異能者」にもほいほい他者への魔力補充が可能なら、敵に回る「異能者」がいた場合、厄介さが跳ね上がるので、とりあえずほっとした点でもある。


 俺とコーコさんが全力で闘おうと思ったら、この「闘技場」では狭すぎるのも確かだ。

 全力全開で闘いつつ、それを観客にも十全に伝えるには「特殊戦闘フィールド」を起動するしかない。


「シン君のかっこいいところ見るためですからね、協力は惜しみません」


我が主(マイ・マスター)の真骨頂は超高速機動戦です、充分な広さがなければ術式の飽和攻撃の方が有利すぎますわね」


 さりげなくプレッシャーかけるの止めてくれませんか、二人とも。


 ただクレアの言うことは事実だ。

 この「闘技場」本来の広さくらいであれば、「二重職(ダブル)マスター」として氷系術士を極めているヨーコさんが有利といえる。

 圧倒的な術式で、空間全域を飽和攻撃されてしまえば懐に潜り込むのは難しい。

 勝ち目が零とまでは言わないが、著しく俺が不利になることは確かだ。


「あら、お二人とも私が負ける前提ですね。いいでしょう、このアウェイ感あふれる中きっちり勝利をものにし、シン様とエロいことをします」


「却下です」


「却下ですわ」


 ああ、その条件生きてるのね。

 夜、クレアあきらめろ、ヨーコさんが言うこと聞く訳ないだろう。

 あとエロいことしたいのか、ヨーコさん。

 基本無表情だからよくわからない。


「それは勝者が決めることです。すべてはそうなのです。嫌なら勝ちましょうシン様。嫌じゃないかもしれませんが。勝ったらシン様が私にエロいことをする気かもしれませんが」


「この……」


「代理戦! 私か夜による代理戦を要求しますのよ!」


「おや、私にエロいことされたいんですかクレア様」


「 違・い・ま・す・の・よ・! 」


 完全にヨーコさんのペースだな。

 夜とクレアがいいように遊ばれている。

 まあこんな二人を見るのはレアなので悪くはないのだが、ネタの根幹が俺が絡んだエロというのが問題だ。

 こちらに飛び火というか、大火事に発展しかねない。


「いや、勝つから大丈夫。勝ってヨーコさんにはギルドマスターをやってもらうとともに、うちのパーティーのゲストメンバーになってもらう。これが俺の要求」


 だからこの辺で具体的な要求を出して、話を切る。


 そうだ、わざとふざけたもの言いをしているけれど、ヨーコさんは思い出させてくれている。

 自分の我を通そうと思えば、まず勝者でなければならないという、当たり前のことを。

 まあ逃げるという手もあるにはあるが、逃げ切れないことがほとんどだしな現実は。


「おや、男の子としての欲望が足りませんね。そんなことだから夜様もクレア様もまだ清い身のままなどという、情けない事になるのです。千年もあって何やってたんですか。本当にチ〇コついてますかシン様」


「な、な、な……」


「…………」


 そ、そうだ、ヨーコさんは、わざと、ふざけた……あまりの仰りように膝が落ちそうになる。


 夜とクレアは真っ赤になって茹で上がっているので反論は期待できない。

 ちらちらとこちらを見る、夜とクレアの視界に映る俺の顔も赤い。

 

「……か、観客も待っていることだし、はやくはじめようかヨーコさん」


「ここまで言われても、「いやそれも今夜までだぜ、夜、クレア」くらいのことも言えませんか。チキンですねシン様。負ける気がいたしません」


 だからなんなんですかそのキャラ。


 うん知ってた、口では絶対勝てないことは。

 これはもうさっさとはじめよう、そうしよう。


 俺とクレアさんは、「特殊戦闘フィールド」への転送位置へと移動する。


「最大範囲設定、完全ランダムで問題ありませんね? シン様」


「ああ、それでいい。ステージや開始位置の有利不利の運も含めて実力だ」


「こういうところは男前。夜様、クレア様、ここはぽーっと見惚れていい所です。どうぞ」


 ああもう。

 はやく転送始まってくれ。




 トリである、俺とヨーコさんの模擬戦闘までに、すでにいくつもの演目が行われていた。


 一番盛り上がったのは、急遽俺がもう一つ例のアイテム提供を申し出た、有志飛び入りによるバトルロイヤル戦だ。

 大人げなく各国の将軍、団長クラスが入り混じり、最後まで立っていたのはアレスディア宋国の神殿騎士団長さんだった。


 アレスディア教の現教皇が()()であることと、大いに関係がありそうだ。


 バトルロイヤル戦の様子を見ていると、あのアイテムの取り扱いに注意が必要なのは、新生(フサ)アラン騎士団長の言う通りなのかもしれない。

 大人げなくバトルロイヤルにも出ようとしたのでそこは止めておいた。

 ウィンダリア皇国の騎士たちも、レベル的にあれなので出場禁止。

 歯ぎしりして悔しがっている人が若干名いたが、うんまあ、そのなんだ、また機会つくるよ。

 十年間の継続課金期間でたまった数は相当あるし、出し惜しみしなくてもいいだろう。


 後同じくらい盛り上がったのが、観客からランダムに選出した人に、夜とクレアによる魔力補充から術式使用をしてもらうという、術式使用体験会だった。


 まさか自分が千年間失われていた、魔力とそれを使った術式を使えるとは思っていなかったのだろう。

 選出された本人たちのみならず、それを見守る観客たちも、先の大人数戦やバトルロイヤルにも劣らない歓声を上げていた。


 これで「冒険者ギルド」に登録して、冒険者稼業をやってみたいと思ってくれる人が増えればいい。

 期待できそうな人を選んで選出した甲斐があってくれるのを祈るばかりだ。

 一度「術式」や「スキル」を使える自分を知れば、もっと試してみたくなる人はそれなりに居るはずだ。

 現在の所「魔力補充」が可能なのは「冒険者ギルド」だけなので、期待していいだろう。

 各国首脳は「表向き冒険者希望」として送り込む、自国の候補者の選出に忙しいことだろう。


 その後も素人の子供たちによる、スキル・術式を使用した模擬戦や、ウィンダリア皇国の守護召喚獣である「天を喰らう鳳」――フィオナ――のお披露目など、各国首脳の度肝を抜き、観客を大いに盛り上げる演目が、予定通り全て行われた。


 それでやっと俺とヨーコさんの出番というわけだ。

 真打登場。

 いかん、緊張してきた。


 夜とクレアには悪いが、「三位一体」(トリニティ)は解除する。


 「群体化」は対象全員が封印状態なので問題ないが、「三位一体」は「闘技場」で俺とヨーコさんの戦闘を見守る夜とクレアの視界を、俺に共有させる。

 戦場全体を俯瞰的に表示する立体映像窓となる「闘技場」空間の映像情報を得ていては、些か以上に俺に有利すぎる。

 高速機動戦闘において、相手を絶対に見失わない、相手の行動を俯瞰的に把握できることの有利さはあまりにも大きい。

 夜とクレアに「観るな」というわけにもいかないしな。

 あとで苦情を言われるだろうが、しょうがない。


 左肩の黒竜――いい加減ほんとに名前付けてやらなきゃならん――に視線をやる。 

 はいはいというように小首を傾げる。


 例によって「神の目」(デウス・オクルス)が立ち上がり、赤字のログが流れる。


 『形態(モード):至聖三者PATER:停止。「三位一体」を一時停止』 


 『形態(モード):七罪人ira:起動。コード「Satan」を起動』 


 夜とクレアとの感覚共有解除を確認。


 これで準備完了。


 いつでも来い! 

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