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ザネル~記憶から消された新世界の物語~  作者: 麻生優樹
第三章 影
29/39

3-7スコールとの哀しき再会

                   27


 それはもう「会議」の体を成していなかった。

 ニザーミア学府院の発言者会議は、地水火風、四人の導師が結集して行われる、最高意思決定会議、のはずだった。

 だが、ニキータ…いや、ニキタ・ディボックスはガドリングへと去り、そしていま、次席のレオ・コーンボルブを失った。

 残されたのは二人!


 この非常時に、首席導師で「地と水の」オービス・ブラン、そして三席で「火の」トープラン・オスト、この二人で対処しなければならない

 …それなのに…。

 いままさに、その残された二人の間にすら、険悪な空気が流れている。この非常時に、仲間割れをしている場合ではないというのに!


 告発者は、陪席精霊師だった。

 彼は、自らのしでかしたことの大きさに怯え、呵責に耐えられなかったのだ。

「わたくしが……遅効爆裂を……仕掛けたのです!」

 火の陪席精霊師は、震えながら告白した。

「ニキタ・ディボックス前導師が、親書を開封した瞬間に…爆裂するよう、仕掛けました。やむを得なかったのです」


 なるほど…待てど暮らせど、ガドリングから使者が戻ってこないはずだ。


「火精導師である…先達のご命令には…逆らえませんでした」

 告悔を聞き終え、場を静寂が支配した。

 静かに、オービスは、トープランに向き直った。


「だから、何だというのです」


 ようやくトープランは、絞り出すような声を上げた。

「そもそも、我々発言者の同意もなく、ガドリングなどに親書を出したことが、問題なのではありませんか。その…手段はともかく…ことの本質において、私は間違ったことなど一切、してはいない!」

「私には私心などない、必要な手段とあれば、何でも講じる。私は、そのように申し上げたはずだ」

「邪術師どもの巣窟に、助けを求めることが必要な手段だとでもおっしゃるのか? 亡きコーンボルブ次席だとて、それを聞いたら、私と同じ手段を取ったことでしょうよ!」

 居直り、というより、それはもう、悲鳴にも似た叫びだった。


「それに、それにですな。首席ご自身に私心はない、などとおっしゃるが…あなたとディボックス前導師の間のことを、私が何も知らぬとお思いですか? よくもまあ……」

「私と…戦う覚悟が、おありなのか?」

 オービスの声の調子が変わった。


 トープランは、調子に乗って、虎の尻尾を踏みつけてしまったことを知った。

「い…いや…そんな…言いすぎたことは謝罪致します! これはわ…わ…私の本意ではございません。しかし…しかし…いずれにせよ! このニザーミアに、邪術師を引き入れようと画策したことは、決して許されることではありませんぞ。だからこそ…私は…非常手段を講じて、これを阻止せねばならなかったのです…」

「その結果が、これだ!」


 オービスは、窓の外を指さした。

 ニーフ・ガスト塔は、おびただしい灯火を放ちながら「暴走」し続けている。

「四百名以上もの精霊師を、犠牲にしてしまった! そして、暴走はいまや北辰大陸全体にまで伝播している。

 あなたが『邪術師ども』を忌み嫌うことを、私もあえて非難しない。

 だが、ことフィジオやエンジェムの領域にかけては、我々にはどうしようもない。まさしく彼らの出番なのです。

 私たちは、こと『塔』に関しては、何一つ手出しできない。ニマーマ紀からの…いや、ザネル創世の時代からの、それは精霊師の持って生まれた宿命なのだ!」


 偏見を、憎悪を、いまさら非難しても始まらない。いや、それどころか、自分は…ニザーミア学府院は率先して、その「偏見」の片棒を担いできたのではないか。だが、その偏見と憎悪が、こうして、事態を最悪の方向へと招いてしまった。

 残された時間は、あとどれくらいあるのだ。

 そして、残された手だては……。

 頭を抱え、うずくまっている余裕など、ないのに!


「朗報です! 朗報であります」

 突然、声がした。陪席精霊師が、オービスの元へ、駆け込んできた。

「門前に、使者が帰着致しました!」

 助かった! 最後の、最後の瞬間に!

 オービスの顔に、希望の灯が甦った。

「ガドリングへ送った、あの使者たちか? 間違いないか?」

「はい! 間違いございません」

「では、すぐ彼らをここへ呼べ! 報告を聞きたい」

 ここで、陪臣精霊師が、口ごもった。

「あの…彼ら、とおっしゃいましても…戻って参りましたのは、一名だけですが」

「一人だけ?」

「はい、ディギッツと申す使者が一名のみ、門前で待機しております」

 では…エイレンはどうしたのだ? それに……。

 オービスは、ニキータが事情を察知して「彼ら」を一緒に送り込んでくるものと予想していた。なのに、なぜ…一人だけ、戻ってきたのだ?

 いったい、ガドリングで、何が…あったのだ?…


                    ※


 山麓への道を下ると、徐々に精霊師&邪術師混成パーティの前に、東平原一帯を襲った惨状が明かされていった。彼らは息を呑んだ。


 最初に目に入ったのは、踏み荒らされた灌木地帯の残骸だった。

 巨大な足跡が、スギモドキを地下茎ごと踏みつけ、踏み荒らしたようだ。巨大生物の暴走跡、そう推測するのは容易だった。

「おそらく、ノルデ・キリコだろうな」

 オルトは、そう推測した。


 ノルデ・キリコ。それは北辰大陸東部一帯に棲息する動物の中では最大の、巨大な牙を持つ四足獣の草食生物だ。全高はおよそ7、8メートルにも達し、堅牢な甲羅は、ほとんど無敵と言ってもよい。もっとも、彼らを狩ろうとする命知らずの種族は、まず存在しないのだが。

 ただ、恐ろしげな外見に似合わずその性格は穏和で、普段は間違っても、暴走などする生物ではない。通常は十頭から二十頭の群れによる女系家族のコロニーを形成して、主に大伽藍山脈西部の低木地帯から小ガラン山脈に挟まれたビズワ河・ソーワ河河畔の湖沼地帯を移動する彼らが、赤十字回廊諸都市の住民にとって、脅威となったり害を為したことなど、聞いたこともないのだ。


 …もちろん、この惨状を見るまでは、の話だが…。


 噴火湾東岸にかけて、煙がたなびいている。

 焦げ付くような臭いが、彼らのいるところまで届く。焼き討ちでもあったというのか? いや、しかし、ノルデ・キリコ龍であれば、火などは使わない。

 訳の分からぬまま、四人は歩を進めた。

 延々と続く丘陵のそこここは荒らされ、踏みしだかれ、そして黒こげの何かが、ぽつりぽつり、点在している。

 それが、黒こげにされたボルグ羊たちの死骸であることに気づき、ディギッツは言葉を失った。


 丘陵の彼方で、何かが黒煙を上げて燃えている。

「方向からすると…リヨルデの居留地あたりだな」

 オルトが呟いた。

「リヨルデ!」

 それは、スコールたちの居留地ではないか! そう…過ぎ越しの前に、大白猿に襲われたディギッツたちを、助けてくれたスコールたち。彼らはガドリングへ旅する自分たちと別れ、たしか、居留地へ戻る、と言っていた。

 とすると…。

「急ごう! 急がないと…大変なことになる!」ディギッツは叫んだ。

「すでに、タイヘンなことになっていますワ。焦る気持ちはご理解しますけど、もう少し、冷静になった方がよろしいですネ」

「そんな悠長なことを言っている場合じゃない!」

 ユリアの皮肉すら、受け止めることができない。

「おおこわ……」彼女は、首をすくめた。


 平原のど真ん中に丸屋根の、特徴的な建物が十数軒。それを取り囲むように、ボルグ羊の放牧地が、柵に囲まれて整然と地表を埋め尽くしている。

 だが、そんな牧歌的な光景も、いまは無惨な姿をさらしていた。

 家屋の半数近くは倒壊し、踏みつぶされている。そして残りの家屋も、白煙を噴いている。燃えさかる家屋の火は、どうにか消し止めたらしい。消え残る熾火が、ぶすぶすと音を立てている。

 リヨルドへ到着した一行は、なすすべもなく、立ちつくしていた。

「ひどい………」

 エイレンには、それしか言えない。

「あの人たちは、どうしたのかしら?」


 背後から、かすかな叫び声が響き渡った。

 振り向くと、一団のスコールたちが、こちらへ近づいてくる。よく見ると、見覚えのある顔が交じっている。あれは、リーダーのラクーン…そして、もう一人…たしか唄が得意だとかいって、エイレンを口説いていた、自称「楽士」のサライエ、とか言ったっけ。

 どうやら、スコール族の人々も、いくらかは無事だったらしい。

 少し安堵して、ディギッツとエイレンは、彼らの方へ駆け寄ろうとした。

 すると…。

 いきなり先頭に立っていたサライエが、手にした刺叉を振り上げ、叫んだ。


「よくも…よくもまあ、のうのうと戻って来れたもんだな! この人殺しが!」

 ディギッツは凍り付いた。

「おおい! みんな聞け! こいつだ! このチクショウの精霊使いだ! キリコ竜を操って、村をメチャクチャにしやがったんだ!」


 サライエの叫びに、スコールたちの怒号が応えた。十数人のスコールたちが、手に手に得物を持ち、四人を取り囲んだ。


 ──何を言っているんだ?──

 まるで意味が分からず、立ちすくむディギッツ。だが、スコールたちの殺気は本物だ。


「精霊使いのガキをブッ殺せ!」

「仲間のカタキだ!」

「黒こげに焼いちまえ! 羊は苦しんで、苦しんで、焼き殺されたんだ!」

 口々に罵声が、ディギッツを襲う。

 スコールたちは、手にした刺叉を振り上げた。


「待ってくれ! 何のことか判らない! 僕は…僕たちは、今し方、ガドリングからここへ辿り着いたばかりなんだ!」

「見えすいたデタラメこくな! オレは、この目で見たんだ! 大笑いしながら、キリコ竜にのってやってきたんだ! 火を吹いて、羊を焼き払ったんだ! みんな、この火使いの精霊野郎の仕業だ!」

 サライエは、再び叫んだ。


「困ったことになったな」

 オルトは、肩に担いでいた荷物を下ろした。何やら、機材に手を入れ、長い棒状の…これも武具なのだろう…ものを水平に構えた。

「あまり、こいつは使いたくないんだが…」

 困ったというわりにオルトには、そしてユリアにも、たいして混乱した様子がない。

「いざとなったら言ってくださいマセ。それまでは、お任せいたしマス。精霊師サマ」

 事態は、まさしく一触即発だ。


「みなさん! 聞いてください!」

 エイレンが割って入った。大きく通る、透明な声で、彼女は語りかける。

「みなさんを襲った、この大厄災の、詳しいことは存じません。本当に、何と申し上げていいのか、言葉もないほどです、心から……」

 ここで、エイレンは言葉を失った。


「けれど、これだけは信じてください! これは、同僚ディギッツ精霊師の仕業ではありません。濡れ衣です! なぜなら、私たちは…夜が明けて、皆さんとお別れしてから、ずっとガドリングに滞在していました。そして、ようやく伽藍山脈を越えて、この地に到着したのです。私は、ずっと…この人と、一緒でした!」

 彼女の言葉に、今し方まで殺気だっていた一同は、静まりかえった。毒気を抜かれたようなスコールたちの中から、再び声が上がった。


「オレは見たんだ! 間違いなく見たんだ!」

 それは、サライエだった。

「お姫様、アンタの言葉は信じてやりたいが…アンタも騙されているんだ、この小僧に」

「誰を、騙すというのですか?」

 エイレンが、りん、とした声で応えた。

「私は、エイレン・オルニード・モーティマス。イルーランの娘です。そして水の精霊師です。余人は騙せても、私の目を欺くことはできません」


 一同に、再び困惑が走った。

 どうなっているんだ? この姫様の言葉に、嘘はなさそうだ。だが、だとすれば…この村を襲ったのは、何者だというのだ?


「オレも見た」

 再び声がした。それは……ラクーンだった!

「たしかに、ノルデ・キリコ竜の上に立って、村を襲わせたのは、ディギッツだった」

 リーダーの、ラクーンまでが、僕を…。ディギッツは絶望した。


「だが…いままた、ディギッツがやって来た。どういうことかサッパリ判らんが、今度のディギッツは、前のディギッツとは別のディギッツらしい」

 ラクーンは、ここで頭をポリポリ、と掻いた。

「だから、だ、みんな! あっちのディギッツとは違う、こっちのディギッツに仕返しするのは、どうやら筋違い、ってことだ! 判るか!」

「それでいいのかよ! ラクーン! あんた…。大切なケーデの女将さんを殺されたんだぞ! ベルクも殺られたんだぞ! それでもアンタ……口惜しくないのかよ!」


 ケーデの女将さん…あの、優しくて豪放磊落な人も、そしてあの…気のいい酒好きの男も、亡くなってしまったのか……。

「だからといって、別のディギッツに仕返ししてどうするんだ! いいか、オレらはスコールだ。スコールはな、筋を通すんだ。このディギッツは、オレらの仇じゃない。だったら、八つ当たりみたいなマネはするな。判ったか!」

 一同、今度は本当に納得したらしい。振り上げた刺叉を下ろす。


「ディギッツ、一緒に来てもらえるかな?」


 殺気だった群衆が散り散りに散会して大厄災の後始末を再開すると、ラクーンは、改めてディギッツに語りかけた。

「エイレン姫様も、それからその後ろの……お客人二人も。引き合わせたい人間がいるんだな。リヨルデがこんな状態じゃなけりゃ、大歓迎してやるところなんだが」

「引き合わせたい、人間?」

「実はな、これが精霊師二人組なんだ。それもな…あんたらの後を追って、ニザーミアからわざわざやって来たらしいのさ。ところが、途中で…このキリコ竜の暴走に出くわしちまって、一人は、大怪我して寝っ転がってるのさ」

 僕たちを追って来た?

 さらに、事情が掴めなくなってきた。だが、考えている暇はない。ラクーンに誘われるまま、四人は大テント…被害を免れた避難所に足を踏み入れた。


 テントの中央、囲炉裏の近くに、毛布にくるまれた二人組がいた。

 一人は…火の精霊師で彼の一級上の先達、そしてもう一人は…なんと、ニザーミアの寮で彼と同室だった、レクターだった。

 レクター! 

 最後に会ったのは、ガドリングへの旅を始める直前だった。熱に浮かされて人事不省に陥った彼を看病してくれたのも、そして再び目覚めた彼にオービス首席からの命を伝えたのも、そして、あたふたと旅支度を手伝ってくれたのも、彼だった。

 その彼が、なぜ…。

 だが、それを問いかける前に、レクターの方が起きあがって叫んだ。

「ディギッツ! おまえ…なんで…」


 もう一名は、そのレクターの叫びを聞き、うめき声を上げた。

「ディ…ギッツ…でぃぎーっつ!」

 見ると、もはや…彼の半身はなく、瀕死の重体である。だが、精霊師はそれでも、残されたありったけの力を振り絞り、叫ぼうとした。

「ディ…ギーーーッツ! ジェルキー! ソマー! ディーギッツ!」

 そして、息絶えた。

 彼は、いまわの際に、ディギッツに呪詛を浴びせ、そして死んだのだ。


 ジェルキー・ソマー。

 精霊師が頻繁に用いる呪文である。

 ザニエール・ジェルキー・ソマー、と叫べば、「サネル世界に光あれ」という祝詞になるのだが、元々は大背教者ソマーへの封印であり「呪わしきソマー」という意味なのである。祝詞にも呪詛にも、同じ言葉を用いるというのが不思議なところだが、もし接尾語に人名を加えてしまうと、それはその人物に対する、最大級の呪いとなる。


「なぜ、君は…僕たちを、襲ったんだ……?」


 消え入りそうな声で、レクターも尋ねた。

 ディギッツには、もう答える気力すらなくなりかけていた。

 精霊師が、精霊師に、最大級の呪詛をぶつけ、そして息絶えた。

 僕が、何をしたというんだ?


                    ※


 ディギッツに代わって、エイレンが事情を説明した。彼女の必死の説得で、ようやくレクターも一応の事情は理解した。

「僕らは…君たちがガドリングへ旅立ってから、6日後に命じられたんだ」

 レクターは、ぽつりぽつりと説明した。


「ニザーミアは、すでに、大混乱に…なりかけていたんだ。まるで疫病が、学府院を襲ったようなものだった。過ぎ越しの『ヤーマの灯火』、あれはまさしく凶兆だったんだな。…といっても、君は見ていなかったのか。その直前に倒れたもんな」

「疫病? いったい何の病なんだ?」

「ヤマイ、って言っていいのかな? 精霊防壁の弱いものや、エレメントの足りないものたちが、最初に倒れたのさ。高熱を出してね。でも、その方が、まだ幸せだったのかも知れないな、あとで考えると」

「……どういうことなんだ?」

「つまり…どう言ったらいいのかな…それが収まると今度は精霊が、暴走し始めたんだ。たとえば僕ら、火の精霊師たちは、むしろエレメントの高い者たちほど、やられた。全身から火を噴いて、黒こげになって…」


「内火か!」


 精霊は、自らの身内に貯めることも可能だ。修練によって、そのキャパシティは大きくなる。だが、もちろん一定の上限も、その者の持つ精霊によって定められているのだ。たとえば、精霊師が無闇に「対人攻撃」として精霊を用いることを厳に戒めるのも、そのためである。身内に貯めた精霊が許容を越えてしまうと、いわば「自爆」のような怖ろしい現象が発生する。火の精霊師の場合、それは「内火」すなわち自己発火死である。


「そう…。だから、僕たちが後衛として遣わされたんだ。

 君たちが、ひょっとしたらガドリングから戻れないのでは、という保険だったのかもしれないけど…今度は、赤十字回廊が危険すぎるので、噴火湾沿いの東岸を通って、山越えルートでガドリングへ向かう予定だったんだ。ところが……」

 そこで『ディギッツ』とノルデ・キリコ恐竜たちの暴走に遭遇してしまった、ということらしい。


「けど…それにしてもさ、僕たちが出くわした…あのディギッツ…って、何者なんだ?」


 ディギッツに答えられるわけがなかった。

 それを、一番知りたいのは、僕自身だよ!


 ショックは大きかった。

 エイレンの慰めも、ディギッツの耳にはろくろく、入らなかった。

 だが、ここで歩を止めるわけにはいかない。事態はまさに、急を告げているのだ。

 レクターは、邪術師二人組が加わっていることに驚きながらも、ディギッツとエイレンの使命がひとまず成功したことを喜んだ。


「じゃあ、僕も一緒に戻ろう」

 レクターは、かなりの手傷を負いながらも、一行に加わる、といってきかなかった。

「ニザーミアがアレなんだぜ! こんなところで、のうのうと寝ていられるか」

 さらに、スコールのリーダー、ラクーンまで、加わると言い出した。

「あなたは、リヨルドを立て直すために、なくてはならない人です! 一緒に来て下さるのは、心強いのですけれど…」

 エイレンが引き留めたが、スコールは、ぽつりと呟いた。

「それ以上に、しなきゃならんコトも、あるんだ……」


 それは、妻の仇討ち、仲間の仇討ちなのだろうか。

 ディギッツは、そう理解した。

 そして、それ以上彼を引き留める理由もなくなった。



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