恋愛の達人
とあるバラエティー番組にて。
「今回ご紹介する人物は、付き合った男性は星の数ほど、恋愛のプロフェッショナルのTさんです。
――どうぞ!」
番組女性司会者の呼び声に、番組セットの奥から美人のTさんと呼ばれた女性が現れた。
彼女の登場に、番組が用意していた観客のサクラからは黄色い声が上がる。
Tさんは優雅な笑みを湛えたまま、番組司会者がいる場所のすぐ隣に設置された席へと静かに着席した。
「なんと、Tさんが付き合った男性の人数は百人を越し、中には超有名なあの人物もいるのだとか。そんなTさんの事を、より知って貰う為こちらをどうぞ――」
スタジオに設置された巨大スクリーンに、Tさんの紹介ビデオが流れる。
今まで付き合った男性の話や、初恋の経験談などが赤裸々に紹介された。
その後番組レギュラーやゲストの人物達と話し合いや、やり取りが繰り広げられ、その途中でのこと。
女性司会者が、何気なく観客席へとのTさんに聞いてみたいことを振った。
すると選ばれた観客の一人は、こんな事をTさんに聞いてきた。
「沢山の人と付き合うた言うけど、なんでそんなに別れたん?」
みんな黙った。
・黙ったみんなの心の声
(どうしよう、『モテても男を見る目がなかったんだろうな』なんてこと言えない)
もしかしたら、こう思ったのかもしれない。
・黙ったみんなの心の声その2
(尻軽だからじゃね?)
或いはこんなのかもしれない。個人でお好きにどうぞ。
過去に付き合った人数の多さをステータスにする人の心情が、よく分かんないです。