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3話目 廊下ってやたら長いよね

お気に入りありがとうございますありがとうございます

こんな駄文にまさかお気に入りが入るなんて。





「坊ちゃま、本日は予定が入っておりませんが、どのようになさいますか?」


 書庫から食堂に向かう道すがら、ガーディアンさんがそう訊いてきた。


 いつも通りの優しい笑顔だ。


 この顔を見ると、不安が吹き飛んでいくような気がする。


「いちにちずっとしょこにいるの!」


 それに対し俺は、自身もにぱあと笑いながら彼に言った。


 ああ所詮(しょせん)中身は大人でも身体は幼児か。


 そんな舌っ足らずな喋り方しか出来ない自分の身体を軽く恨めしく思いつつ、俺はでもしょうがないと諦めた。


「書庫に、ですか」


 優しい笑顔のまま、しかし答えに難色を示すガーディアンさん。


 俺、何か悪いこと言ったかな?


「だめ?」


 ああ所詮身体は幼児でも中身は大人か。


 即座に幼児の持つラブリーさで篭絡(ろうらく)にかかる自分を冷静に分析しながら、それでも騙すことを止めない。


 だってどうせ最初っから猫被ってるんだから今更多少騙したところで微々たる物だもんね。


「いや、良いのですが……坊ちゃまは、飽きないのですか?」


 何を。


 根っからの活字中毒である俺にとって本を読むという行為、活字を追うという行為はそれだけで無上の喜びだ。


 飽きることなど、あるはずもなかろう!


「あきないです。だって、ほんをよむのはたのしいもの」


 軽く胸を張って答える。


 それにだな、ここの世界の本はもといた世界の本と違ったアイデアがたくさん入っているから飽きることは無いんだなこれが。


 ただでさえもといた世界のように印刷技術がまだあまり発達していないのだ。


 本を出版する上においては、それこそ出してみて売れなかったからシリーズ中止なんてこと、簡単に出来るわけが無い。


 だから、本にあまり外れが無いというのも大きなひとつの特徴だ。


 あ、さっきのは別ね。あれはただ単に好みが合わなかっただけだから。別に内容が悪いとかそんなんじゃなかったんだよ。


「そうですか。なら、朝食の後今日も書庫に行きましょうね」


 ガーディアンさんの顔から不安の色が消える。


 それを見ながら、俺は勢い良くうなずいた。



 さて、食堂である。


 お貴族様にしては珍しいことに、俺の家では使用人も当主も一緒くたに食堂でご飯を食べるのが通例になっているらしい。


 と言っても使用人の座るところと一家の座るところは別だが。


「坊ちゃま、ローブを脱ぎましょうか」


 ローブとは俺が今着ているこのフード付きのだぼっとした羽織り物みたいな服のことである。


 いくら便利とはいえローブを着たままご飯を食べるのは大変いただけない行為なのだ。


「じぶんでぬぐからいいよ、ガーディアンさん」


 言葉とともに俺のローブを脱がそうとしたガーディアンさんの手をそっと押さえる。中身はれっきとした大人なのだから、服の着脱ぐらいは一人でしたいし。


 んしょ、と首元の鈴を()したおっきなボタンを外し、脱いでたたむ。


「はい、ガーディアンさん」


 満面の笑顔で俺はガーディアンさんにそれを渡した。


「ありがとうございます、坊ちゃま」


 ……あれ、何で今お礼言われたんだろう。


 まあいいか。


 だいぶ食堂も混んできた。


 俺は食堂の奥のほうにある俺の席を目指して小さい身体で食堂の中に入っていった。




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