判明
ボクは三日ぶりの対戦を終え、岩仲の爺さんに各部の点検をしてもらっていた。
今回は前回のような抽選では無く、ボクが自ら対戦を申し込んだのだ。
とは言っても、対戦相手は適当に決めた。要するに、ただ体が動かしたくなったのだ。
「しかし、一体どうしたと言うのだ? お前が対戦を申し込むとはの」
「わからない。何か、妙な感覚がする。体を動かせば治ると思ったのだが――」
爺さんはコンピューターの画面に目を向けたまま、「治らんかったか」と笑った。
「そういえば、今日も地上へ行くのか?」
点検が終了し、思い出したように切り出す爺さん。
ボクは体を起こし、「ああ」と彼の問いを肯定する。
「事件のことも気になる」
「お前が興味を持ったと言うことは、どうやら面倒なことになりそうだの」
ま、儂には関係ないがの--そう言って笑った。
とても心外である。ボクにも興味のあることくらいあるのだから。
「して、これからどう動くつもりだ?」
なにやら楽しそうに聞いてくる爺さんである。
彼は、事件や騒動などの派手なことが大好きなのだ。
「どう動くも何も、ただ話を聞くだけだ。この件に関与するつもりは無い」
「なんだ、詰まらんのう」
心底残念がる爺さん。彼はボクに何を求めているのだろうか。
「ボクはもう出かける」
「おう。何か面白そうな話しが聞けたら教えてくれ」
「ああ」
ボクはそのまま工房を出て行き、地上へ向かうエレベーターに乗った。
このエレベーターは直接地上と繋がっている。テルル学院からは離れているが、寄り道をしようとしている今回にとっては便利なものだった。
チーンという到着音と同時に扉が開き――
「………」
「――――あ」
エレベーターの正面。
すなわちボクの目の前に、薄桃色を基調とした第一テルル学院の制服を着た生徒。
もっと言うなら、警備委員副委員長、花暦鈴が、立っていた。
† † †
「峻……君…………? なんで、そんなところから……?」
彼女はわかりやすく困惑していた。
このエレベーターから出てくるということはすなわち、デクダの住人であることを示す。
そしてデグダの住民と言うことは、例外はあるものの、地下闘技場で殺し合いをしている男であることを示しているのだ。
故に、あまり知られたいものでもない。
しかし、知られてしまったものはもう仕方が無い。
「………ここで何をしている?」
「わ、私は警備委員のお仕事でここを偵察しに………。しゅ、峻君こそ、何でこんなところに?」
恐る恐るという風なで、かなり小さな声だったが、聞き取るぶんには全く問題なかった。
もっとも、その気になれば、百メートル先で飛蝗が飛んだ音だって聞き取ることも出来るのだが。
「見ての通り、今出てきたところだ」
「ってことは………つまり、峻君は出演者ってことですか?」