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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第二章「空蝉編」
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 シュリルからの情報とは真逆で、翌日は雲一つない快晴だった。

『ま、天気予報なんて外れるのが前提みたいのもんだしなぁ』

「ここまで見事に外れると笑えるがな」

『違いねえな』

 そんな会話をしながら、いつも通りシュリルに跨り、第一テルル学院を目指した。


 学院の職員室に着く。しかし、今日はなぜか、部屋の中が慌しかった。

「何があった?」

 ボクの問いには、副学園長の扇が一番早く反応した(もっとも、扇より早くボクに気づいていたものの、わざと無視した者も少なくはないが)。

「おお、黒耀君。実は、ほんの数分前に突然電話やネット類がまったく使えなくなってしまって、今は復旧作業中だよ」

「どのくらい進んでいる?」

 再び問うと、彼女は首をすくめた。

「それがまったくさ。復旧作業どころか、原因もまったくわからない」

 そう言って、やれやれと溜め息をついた。

「………ウィルスの可能性は?」

「ゼロさ。ただ――」


――窓ガラスが鳴った。


 普通なら気にも留めない音。

 しかし、その音量が通常のそれとは桁外れだった。突発的な強風で、砂が舞い、窓が揺れる。

「…………」

 何か、嫌な予感がした。

 ハードケースから【蒼刃】と【斬像】を取り出し、いつでも抜けるよう構える。

室内の全員がボクと同じ様に何かを感じ取っているらしく、じりじりと窓から離れた。

 室内に窓の軋む音だけが響き、全員が砂埃で見通しが悪くなった外に注目。

 だんだん風の音と窓の軋みが大きくなり、そして――

「伏せろっ!!」

 ボクが叫ぶとほぼ同時に、窓ガラスが爆ぜた。

 流石と言うべきか、ボクの警告に即反応し大きな怪我をした者はいないようだ。

 しかし、この強風と砂塵でまともに周りが見えない中、避難も何も出来はしないだろう。

『黒耀!』

「シュリルか!」

『怪我人はいねえか!?』

「問題ない。外はどうなってる?」

 デスクを壁にし、緊急事態に即座に駆けつけたシュリルに問う。

『さっきまで微風が気持ちよかったのに、急に爆風になりやがって、1m先もよく見えねえよ!』

 どうやら、外はさらに酷いらしい。

 それよりも、

「不自然だな」

『だな』

 微風から急に窓ガラス(それも学院の窓ガラスは相当丈夫なものだ)を割るほどの爆風になるのは、あまりに不自然すぎた。

 明らかに人工的な風。

 しかし、そんな風を作り出せるのは、たった一人しか心当たりがない。

「竜巳」


「正解」


 透き通るような美声。

 そこには、かつての戦友の一人――疾風の竜巳が立っていた。


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