閑話
『しっかし、ホントに受けるとはなぁ』
「お前たちが受けざるを得ない状況を作り出したんだろうが」
他人事のようにボクのベッドで寝転がるシュリルを睨みつける。
『まあまあ、気にすんなって、相棒』
「ふん」
『それにしても、どーすんだ?』
「何がだ?」
珍しく真面目になるシュリル。
『外装だよ。実戦訓練だろ?』
「ああ、そういうことか。外装は展開しない。これ一本で十分だろう」
そう言って、ボクは日本刀型近接武器【蒼刃】を鞘ごと具現化する。
『いやぁ、相手は訓練生とは言え女神だぜ?』
「そうか? なら――」
もう一本、今度は細い剣型の近接武器【斬像】を具現化する。
『ま、そんぐらいがちょうどいいだろ』
「だな」
二本の剣を粒子化し、シュリルを押しのけてベッドへ寝転ぶ。
『明日からだっけか?』
「ああ」
『ま、がんばれよ』
「何を言っているんだ。お前も来るんだぞ?」
『は?』
体を丸めて休眠モードに入ろうとしていたシュリルはガバッと身を起こした。
ボクは天井を見上げたまま続ける。
「バイクでの通勤は問題ないらしいからな」
『い、いやぁ、オレッチが行ったらオメェさんが七式の黒耀だってばれちまうんじゃ……』
「喋らなければただのバイクにしか見えないから安心しろ」
そして、シュリルは今日一番のショック顔。
『オレッチに1時間も黙ってろってか!?』
「いや、1時間じゃすまないだろうな。少なくとも3時間は覚悟しておいたほうがいい」
記録更新。さらに酷いショック顔を浮かべた。
『オレッチに死ねってか!?』
驚愕を隠せないでいる相棒に向かって――
「グッドラック、相棒」
その後、泣きついてくるシュリルの押さえつけるのに数時間を要したのは、ここだけの話だ。




