デート
「お久しぶりです、俊君!」
「なっ……!?」
驚愕。そのあまり、笑顔で返してやることが出来なかった。
「ふふ、驚きましたか? サプライズ成功です!」
悪戯が成功したとばかりに笑う鈴………とシュリル。
『どうよ? 我ながらいいことしたぜ。さすがオレッチ!』
無駄に得意顔の猫(黒豹)は放っておく。
「何故、ここに?」
「ええ、一昨日の夜、シュリルさんからお電話をいただきまして。本当に驚きましたよ? 私からはどうやっても連絡先が分からなかったのに、シュリルさんは簡単に私の電話番号をつきとめたそうですから」
『フフン! これぐらい朝飯前よ!』
得意げなシュリルを思い切り睨みつけるが、やつは器用に口笛を吹きながらそっぽを向いた。
込み上げてくる非難言葉をすんでのところで飲み込み、溜息。そして鈴に向き直る。
「鈴、お前はこんな所に来てはいけない。特にボクは――」
「俊君、行きますよ!」
「っ!?」
帰るように説得を試みるが、油断しているところに腕を掴まれ、そのまま部屋の外に連れて行かれる。
状況整理が追いつかず、ボクはされるがままにどこかへ連れて行かれた。そして行き着いた先は――地上へ続く唯一のエレベーター。
「さ、俊君、でっ……で…でで、デートしましょう!」
「…………な?」
† † †
そして今に至る。
「あの……俊君、本当にいいのですか?」
「ああ、気にするな。どうせ、ボクには使い道が無いのだからな」
そういうと、さっきの店でボクが買ってあげた洋服の紙袋を嬉しそうに抱え、またボクを引っ張った。
「次はあそこへ行きましょう!」
次に彼女がボクを連れてきたのは、ゲームセンターの奥。
「これは?」
「これはプリクラですよ? 知らなかったですか?」
「プリクラ………」
復唱。特に意味は無い。
「何をする機械なんだ?」
「ふふ、入ってみたら解りますよ」
そういって強引にカーテンの中に連れ込み、金銭を投入。そしてボタンを押して次々に画面を切り替えていく。
「じゅんびOKですよ! 俊君笑ってください!」
「?」
言うが速いか、ボクに抱きつき、顔を近づける鈴。
まったく理解できないまま機械音声がカウントダウンを始め、そして――光る。
「っ!?」
「あ、俊君まだ動いちゃ駄目ですよ!」
反射的にこの場を逃れようと体が動くが、鈴が強引に引き戻す。
2度、3度とカウントダウンが0になる度画面の上にある黒い円光り、ボクの網膜を焼いた。
「さ、今度はこっちです!」
今度はこの機械の後ろにあるスペースへ連れ込まれ、画面をいじり始める。
「あははっ、俊君面白い顔になってます!」
「む………」
笑いながら、画面に映し出された画像に落書きを始め、やがてそれも終わると焼きあがった写真を二人分に切り分ける。
「はい、これ、俊君の分ですよ♪」
興奮しているのか、少しだけ頬を赤らめながらボクに写真の片割れを渡す。
「では、そろそろ戻りましょうか」
「戻るとは?」
「ええ、私のお部屋にです♪」
満面の笑み。
大してボクは、
「は?」
終始翻弄されっぱなしだった。




