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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第二章「空蝉編」
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デート

「お久しぶりです、俊君!」

「なっ……!?」

 驚愕。そのあまり、笑顔で返してやることが出来なかった。

「ふふ、驚きましたか? サプライズ成功です!」

 悪戯が成功したとばかりに笑う鈴………とシュリル。

『どうよ? 我ながらいいことしたぜ。さすがオレッチ!』

 無駄に得意顔の猫(黒豹)は放っておく。

「何故、ここに?」

「ええ、一昨日の夜、シュリルさんからお電話をいただきまして。本当に驚きましたよ? 私からはどうやっても連絡先が分からなかったのに、シュリルさんは簡単に私の電話番号をつきとめたそうですから」

『フフン! これぐらい朝飯前よ!』

 得意げなシュリルを思い切り睨みつけるが、やつは器用に口笛を吹きながらそっぽを向いた。

 込み上げてくる非難言葉をすんでのところで飲み込み、溜息。そして鈴に向き直る。

「鈴、お前はこんな所に来てはいけない。特にボクは――」

「俊君、行きますよ!」

「っ!?」

 帰るように説得を試みるが、油断しているところに腕を掴まれ、そのまま部屋の外に連れて行かれる。

 状況整理が追いつかず、ボクはされるがままにどこかへ連れて行かれた。そして行き着いた先は――地上へ続く唯一のエレベーター。

「さ、俊君、でっ……で…でで、デートしましょう!」

「…………な?」


      †      †      †      


 そして今に至る。

「あの……俊君、本当にいいのですか?」

「ああ、気にするな。どうせ、ボクには使い道が無いのだからな」

 そういうと、さっきの店でボクが買ってあげた洋服の紙袋を嬉しそうに抱え、またボクを引っ張った。

「次はあそこへ行きましょう!」

 次に彼女がボクを連れてきたのは、ゲームセンターの奥。

「これは?」

「これはプリクラですよ? 知らなかったですか?」

「プリクラ………」

 復唱。特に意味は無い。

「何をする機械なんだ?」

「ふふ、入ってみたら解りますよ」

 そういって強引にカーテンの中に連れ込み、金銭を投入。そしてボタンを押して次々に画面を切り替えていく。

「じゅんびOKですよ! 俊君笑ってください!」

「?」

 言うが速いか、ボクに抱きつき、顔を近づける鈴。

 まったく理解できないまま機械音声がカウントダウンを始め、そして――光る。

「っ!?」

「あ、俊君まだ動いちゃ駄目ですよ!」

 反射的にこの場を逃れようと体が動くが、鈴が強引に引き戻す。

 2度、3度とカウントダウンが0になるたび画面の上にある黒い円光り、ボクの網膜を焼いた。

「さ、今度はこっちです!」

 今度はこの機械の後ろにあるスペースへ連れ込まれ、画面をいじり始める。

「あははっ、俊君面白い顔になってます!」

「む………」

 笑いながら、画面に映し出された画像に落書きを始め、やがてそれも終わると焼きあがった写真を二人分に切り分ける。

「はい、これ、俊君の分ですよ♪」

 興奮しているのか、少しだけ頬を赤らめながらボクに写真の片割れを渡す。

「では、そろそろ戻りましょうか」

「戻るとは?」

「ええ、私のお部屋にです♪」

 満面の笑み。

 大してボクは、

「は?」

 終始翻弄されっぱなしだった。


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