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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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終戦

 恐ろしく白い、強烈な光が、一瞬で鈴たちを追い越し、この街を照らした。

『全員そこのビルの陰に隠れて伏せろ!』

 鈴たちは反射的に従い、直後に爆音と爆風が追い付いてきた。

 地響きがし、木や車などが飛んでくる。

 光も爆風も更に強くなり、この辺り一帯を包みこんだ。


   †   †   †      


 鈴が目を覚ましたときには、爆風も爆音もみ白い光も消えていた。

 焼け野原。

 そう表現するには、残った建物は多かった。

 静寂。

 平穏だったとき、大量の車や人々が行き来し、ごった返していた通りが今や、一羽の烏さえもいない静寂に包まれていた。

 そんな中、瓦礫の崩れる音が聞こえる。

 反射的にその方向を見ると、大きな瓦礫が吹き飛ばされ、中からシュリルと翡翠が這い出てきた。

「鈴、無事だったか!」

「委員長も、ご無事で何よりです」

『毎回毎回、オレッチを忘れんなって』

「もちろん忘れてなんかいませんよ」

 口を尖らすシュリルに、苦笑いを返した。

「雅さんは?」

 まだ、姿を見ていない。

『生体反応はある。………ここだ』

 どうやら右後ろ足にダメージを負ったらしく、足を引きずって歩き出したシュリルは、そこまで離れていない場所で止まり、大きな瓦礫を退けた。

 その下から、気を失ったままの雅が出てきた。

「よかった……全員無事だな」

「………全員じゃありません」

 鈴がうつむく。

 自然と、この場の空気が重くなった。

「シュリル……黒耀君は、どうなったんだろうか?」

『………オレッチに聞くな』

 翡翠が聞くと、シュリルは辛そうに、答えることを拒んだ。

 分っているのだ。ただ、それを口にすることで、本当に失ってしまいそうな気がしてならなかったのだ。

 気まずい沈黙が流れる。

 何故か全員、ほんの数分前までいた場所――中央広場を見つめている。

「………行こう。対策本部がどうなったのか気になる」

 後ろ髪ひかれる思いで、翡翠は背を向け歩き出した。直後、

「あれって……」

 無意識だったのだろう。鈴が一点を凝視しながら呟いた。

 つられて、シュリルと翡翠もその視線の先を見つめた。

「あれは……」

『間違いねえ! 黒耀の腕だ!』

 その先には、瓦礫から突きだした、腕だった。

 雅を背負っていた翡翠だけがその場に残り、鈴とシュリルは走り出す。急いで瓦礫を退け、引っ張り出すと、極小さく、だが、確実に――うめき声を上げた。

 

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