終戦
恐ろしく白い、強烈な光が、一瞬で鈴たちを追い越し、この街を照らした。
『全員そこのビルの陰に隠れて伏せろ!』
鈴たちは反射的に従い、直後に爆音と爆風が追い付いてきた。
地響きがし、木や車などが飛んでくる。
光も爆風も更に強くなり、この辺り一帯を包みこんだ。
† † †
鈴が目を覚ましたときには、爆風も爆音も止み白い光も消えていた。
焼け野原。
そう表現するには、残った建物は多かった。
静寂。
平穏だったとき、大量の車や人々が行き来し、ごった返していた通りが今や、一羽の烏さえもいない静寂に包まれていた。
そんな中、瓦礫の崩れる音が聞こえる。
反射的にその方向を見ると、大きな瓦礫が吹き飛ばされ、中からシュリルと翡翠が這い出てきた。
「鈴、無事だったか!」
「委員長も、ご無事で何よりです」
『毎回毎回、オレッチを忘れんなって』
「もちろん忘れてなんかいませんよ」
口を尖らすシュリルに、苦笑いを返した。
「雅さんは?」
まだ、姿を見ていない。
『生体反応はある。………ここだ』
どうやら右後ろ足にダメージを負ったらしく、足を引きずって歩き出したシュリルは、そこまで離れていない場所で止まり、大きな瓦礫を退けた。
その下から、気を失ったままの雅が出てきた。
「よかった……全員無事だな」
「………全員じゃありません」
鈴がうつむく。
自然と、この場の空気が重くなった。
「シュリル……黒耀君は、どうなったんだろうか?」
『………オレッチに聞くな』
翡翠が聞くと、シュリルは辛そうに、答えることを拒んだ。
分っているのだ。ただ、それを口にすることで、本当に失ってしまいそうな気がしてならなかったのだ。
気まずい沈黙が流れる。
何故か全員、ほんの数分前までいた場所――中央広場を見つめている。
「………行こう。対策本部がどうなったのか気になる」
後ろ髪ひかれる思いで、翡翠は背を向け歩き出した。直後、
「あれって……」
無意識だったのだろう。鈴が一点を凝視しながら呟いた。
つられて、シュリルと翡翠もその視線の先を見つめた。
「あれは……」
『間違いねえ! 黒耀の腕だ!』
その先には、瓦礫から突きだした、腕だった。
雅を背負っていた翡翠だけがその場に残り、鈴とシュリルは走り出す。急いで瓦礫を退け、引っ張り出すと、極小さく、だが、確実に――うめき声を上げた。




