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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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逃亡

「なぜ、ここに? 救援の要請に行ったのではなかったのか?」

「逆に聞くが、貴様こそ、一体何をやっているのだ?」

「…………」

 実際、今し方やられるところだったので、何も言い返せなかった。

 雅は、改めて周囲を見渡し始めた。

 やがて「なるほど」と小さく呟き、マントの女に向き直る。

「貴様が彩河氏を乗っ取り、紫電の寝倖を操っていたか」

「「ご明察で」」

「ならばまず――彩河氏を解放する!」

 叫ぶが速いか、雅は彩河に向かって走り出す。

「「命令です――守りなさい」」

 女が命令を発し、同時に寝倖が雅に向かって跳んだ。

『相棒!』

「ああ!」

 シュリルに言われるまでもなく、ボクは寝倖と雅の間に飛び込んでいた。

 振り下ろされる雷撃棒を、再び手にした夕立で受け止める。

「悪いな、寝倖――主役交代だ。ここからは、人間同士の問題。兵器であるボクらは、出る幕じゃない!」

「……ギガ…ガ………」

 どうにか押し返すことに成功し、寝倖もどこか苦しげな呻き声を上げ、着地した。

「「その程度で、わたくしの鎧を剥げるとでも――」」

「できるさ」

「「――くっ!」」

 マントの女は咄嗟に彩河を操り、雅の攻撃を防ぎにかかる。

 だが、

「いくら能力ちからが強くとも、接近戦はたいしたことないと見えるな」

 雅は振り回される剣をすべて最小限の動きで避け――彼女の右手が、彩河の額に触れた。

「今、開放してさしげます。《回路遮断シャットアウト!》」

 瞬間、雅の右手に、女神ネイト能力ちからが宿ったのが見えた。

 同時に、彩河のの体が崩れ落ちる。まるで、操り人形の糸が全て切断されたかのように。

「ば、ばかな! 私のコントロールが……」

「私の能力は《切断》。この手が触れたあらゆる物質、繋がりを切断することが出来る。つまり――」

「私の天敵のような能力ですわね」

「そういうことだ。おとなしく投降しろ」

 雅が、奴に向かって構える。奴も、自分が不利なのが分っているのか、やがて諦めたように溜息をついた。

「鎧であった寝倖は黒耀様に封じられ、剣であった彩河も奪い返される……これ以上の戦闘行為は無意味ですね――しかし、投降などする気はありませんよ」

「ならばどうする?」

「ええ、もちろん、逃げさせていただきますわ」

 刹那、雅だけでなく、鈴と翡翠も、奴に向かって走り出していた。

「「「逃がさない!」」」

 同時に三方向からの攻撃――にもかかわらず、奴はあっさりとそれを避け、気が付いたときには消えていた。

 ただ一言、


「この街は堕とされます。すぐ、寝倖によって」


 とだけ残して……。

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