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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
41/62

参上

 全く、反応が出来なかった。

 ボクを殴り飛ばしたマジックハンドを睨みつけながらも、内心では困惑している。

 自分の力を過信していたわけではない。しかし、宙を舞っている途中に攻撃をくらったという事実を悟るなど、初めてだった。

『黒耀! 後ろだ!』

「――っ!」

 困惑しながらも、シュリルの声に素早く反応し、後方より飛来した三本のナイフを全て弾き落とす。

 着地し、ナイフの飛んできた方向を見ると、そこにはざっと50人もの道化師ピエロたちが立っていた。

『なんだよ、こいつら』

「判らないが、生命反応はないな。迷宮虚像の一部だろう」

 寝倖にも注意を払いつつ、道化師たちの武装も確認する。

 武装は大きく3種類。ピエロらしく、先のような投げナイフ、傘やステッキといった近接武器、ジャグリング用のボールやピンなどにカムフラージュしてある――手榴弾だ。

『えげつねぇな……』

 思わずそう漏らすシュリルだが、無理もない。

「ギガガ…」

 今まで、大量の道化師の出現に、状況把握のためおとなしくしていた寝倖が、奴らを友軍、または取るに足らない敵だと判断したのか(ほぼ確実に後者)、再びボクを襲ってきた。

 同時に、道化師どももボクを目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

 ………これはまずい。

 ボクの視界を埋め尽くすほどの大量のナイフと手榴弾。そして飛び掛ってくく道化師と寝倖。

『ここまでか……』

 シュリルも観念したらしい。

 武器を棄て、身を任せた。しかし、兵器としてのボクは、未だに戦闘をしているつもりでいるのだろうか、無意識に着弾予測を計算していた。

 無情なカウントダウンだ。


 着弾まで――3………2……1――


 目を瞑る。しかし、何も起きはしなかった。

「……?」

 ゆっくり目を開けると、そこは、元の広場。すなわち――

『迷宮虚像が消えた?』

 シュリルも、何が起こったのかいまいち理解し切れていないようだった。

 追い討ちをかけるように、いつの間にかこの場にいる人物が、ボクの目の前に立つ。


「何をやっている。最強の兵器が、聞いて呆れるな」


「雅さん!」


 鈴から、歓喜の声が上がった。

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