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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
37/62

利用 【中】




 Reconnaissance Voiceprint............Je.

 consens à une confirmation ordre absolu.

 Je l'emporte.


「――くっ!」

 女の命令が速いか、ボクはその場を跳び退いた。刹那の後、寝倖の――電気を纏った拳がコンクリートの地面を深くえぐり取る。

「うぅ……ごめん、黒耀」

「気にする――っ!」

 言い終える前に、寝倖の追撃を避ける。

「ごめん……。抵抗は出来そうにないよ。もう、身を任せても良いかい?」

「好きにしろ」

 ブレードで雷撃棒を受け止めながら、鈴の方を気にする。

 少し離れたところで、手を出しあぐねている様だ。


『隙がありまくりだぜ!』


 突然の声と同時に、シュリルの砲門が火を吹いた。照準は―――マントの女。

 姿が見えないと思ったら、いつの間にか奴の背後へ回りこんでいたらしい。全員の意表をついた、良いタイミングだ。

「「あらあら、なかなか良い動きを……ですが――」」

 しかし、相手は悠長に言いながら、右手を弾丸に向ける。

「「――まだまだ、甘いですわね」」

 弾丸が、止まった。文字通り、空中で静止した。

『なっ!?』

「「ふふ。返して差し上げますわ」」

 伸ばした右手を振る。

 同時に、静止した弾丸がシュリルに向かって飛んでいき――命中。

『なんてこったぃ!』

 馬鹿みたいな悲鳴が、爆発の中からかすかに聞こえた。どうやら、問題はないようだ。

「危ない黒耀!」

「――っ!」

 寝倖の警告とほぼ同時に、ボクは右の側頭部鋭い衝撃と痛みを感じ、そのまま飛ばされた。

「峻君!」

「黒耀君!」

 鈴と翡翠の声が、実際の距離より遠く聞こえた。

「くっ……」

 目の前に浮かび上がるダメージ報告を確認しながら立ち上がり、距離をとる。

 右手をガトリング銃に変形させ、照準を合わせる。

「手加減なんかしていられないからな」

 そう呟き――発射。

 素早く動き回る寝倖だが、速度ならボクに分がある。実際、奴にあそこまでの手傷を負わせられたのは、速度特化のおかげだ。

「「仕方ありませんわね。お手伝いして差し上げましょう」」

 無気味な宣告が届く。今あの女に何かされては、たまったものではない。防ぎたいが、今は寝倖の相手で精一杯だ。


「「ふふ。さあ、迷いなさい――迷宮虚像トロンプルイユ!」」

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