利用 【中】
Reconnaissance Voiceprint............Je.
consens à une confirmation ordre absolu.
Je l'emporte.
「――くっ!」
女の命令が速いか、ボクはその場を跳び退いた。刹那の後、寝倖の――電気を纏った拳がコンクリートの地面を深く抉り取る。
「うぅ……ごめん、黒耀」
「気にする――っ!」
言い終える前に、寝倖の追撃を避ける。
「ごめん……。抵抗は出来そうにないよ。もう、身を任せても良いかい?」
「好きにしろ」
ブレードで雷撃棒を受け止めながら、鈴の方を気にする。
少し離れたところで、手を出しあぐねている様だ。
『隙がありまくりだぜ!』
突然の声と同時に、シュリルの砲門が火を吹いた。照準は―――マントの女。
姿が見えないと思ったら、いつの間にか奴の背後へ回りこんでいたらしい。全員の意表をついた、良いタイミングだ。
「「あらあら、なかなか良い動きを……ですが――」」
しかし、相手は悠長に言いながら、右手を弾丸に向ける。
「「――まだまだ、甘いですわね」」
弾丸が、止まった。文字通り、空中で静止した。
『なっ!?』
「「ふふ。返して差し上げますわ」」
伸ばした右手を振る。
同時に、静止した弾丸がシュリルに向かって飛んでいき――命中。
『なんてこったぃ!』
馬鹿みたいな悲鳴が、爆発の中からかすかに聞こえた。どうやら、問題はないようだ。
「危ない黒耀!」
「――っ!」
寝倖の警告とほぼ同時に、ボクは右の側頭部鋭い衝撃と痛みを感じ、そのまま飛ばされた。
「峻君!」
「黒耀君!」
鈴と翡翠の声が、実際の距離より遠く聞こえた。
「くっ……」
目の前に浮かび上がるダメージ報告を確認しながら立ち上がり、距離をとる。
右手をガトリング銃に変形させ、照準を合わせる。
「手加減なんかしていられないからな」
そう呟き――発射。
素早く動き回る寝倖だが、速度ならボクに分がある。実際、奴にあそこまでの手傷を負わせられたのは、速度特化のおかげだ。
「「仕方ありませんわね。お手伝いして差し上げましょう」」
無気味な宣告が届く。今あの女に何かされては、たまったものではない。防ぎたいが、今は寝倖の相手で精一杯だ。
「「ふふ。さあ、迷いなさい――迷宮虚像!」」




