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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
35/62

質疑

「最後は二人掛かりで攻撃したのに、もう動けるなんて、予想だにしなかったよ……」

「流石は変則の黒耀――とでも言うべきかしら?」

「…………」 

 ボクは、二人を無視し、鈴に歩み寄る。と言っても、普通に近付くよりも遥かにゆっくりだが。

「でも、そんな動きじゃ、トドメをさしてくれって言っている様なものだよ?」

 寝倖が左腕を変形させ、こちらへ向けてくる。つまりは、レールガンに狙われていると言うことだ。

 通常の弾丸ならこの暴風の影響で弾道が変わり、助かる可能性があるかもしれない。だが、奴の弾丸は1.8㎞/Sで撃ち出される上、この距離ならば、風の影響など最早皆無だ。

 だが――

「『させるかッ!!』」

 シュリルの爪が寝倖を襲い、同時に翡翠も彩河に斬りかかる。

「うわっ! 危ないなぁ」

 彩河は腕を組んだまま体を傾けるだけで避け、寝倖も雷撃棒でシュリルの一撃をあっさりと防いで見せた――だが、これでいい。ボクが鈴の元へたどり着く時間さえ稼げればよかったのだから。

 そして、ボクは今、鈴の目の前までたどり着いていた。

「鈴、落ち着け。ボクはここにいる」

 ………反応はない。完全に放心状態だ。

「落ち着くんだ!」

 肩を軽く揺するが、駄目だ。

「鈴!」

 強く名を呼び、そして同じくらい強く、彼女の細い体を抱きしめた。

 ビクンッと、初めて彼女は反応を見せた。

「安心しろ。ボクは、この街と住人を守れ、という指令を完遂し、必ずお前の元へ戻ってくる」

 約束だ――最後に、そう伝えると、徐々に風が弱まり、消えた。

 そして、

「今の、約束ですからね? 絶対、絶対にですからね!」

 元気な女の子が一人、戻ってきた。

「…………何をしている?」

 ボクは寝倖たちに向き直ろうとするが、僕を両腕でガッチリとホールドした鈴がそれを阻止する。

「も、もう少し…だけ……」

 そう言って、ボクの胸に顔を埋めてきた。

 その部分は分厚い装甲に覆われている上、寝倖との戦闘で細かい傷が無数についているはずだから、痛いと思うのだが………?


「――私をなめているのか?」


 背筋が凍るような、ドスの利いた声。

 刹那、ボクはほとんど反射的にその場を跳び退いていた。もちろん、鈴を抱いたまま。

 鈴を降ろし、剣を抜いた彩河に向き直る。

「そろそろ、本性が出てきたな」

「……何を言っている?」

「とぼけるな」

「………」

 ボクと彩河のやり取りに、鈴や翡翠だけでなく、シュリルと寝倖まで不思議そうな顔をしていた。

「ボクは終戦直前に、一度刃を交えている」

「………だからなんだ」

「いや、だからわかってしまうんだ。だから尋ねる」


「――お前は誰だ?」

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