再起動
『くっ……てめぇ、黒耀を離しやがれ!』
シュリルの爪が寝倖と彩河を襲うが、寝倖の雷撃棒で簡単に弾かれてしまった。
『くそ――おい! 黒耀を取り返すぞ!』
「わかった。鈴いく…………鈴?」
鈴の異変に気付いた翡翠は、すぐに駆け寄る。そこで初めて、彼女が震えていることに気付いた。見開いた瞳の先にあるものは―――黒耀。
「あ……ぁ……峻…く………ん…………」
「鈴? どうした鈴! しっかりしろ!」
『危ねぇ!』
いち早く危険に気付いたシュリルは、翡翠の襟元を銜え、その場を跳ぶ。
刹那―――
「いやぁああああああああああああああ!!」
鈴の叫び声と共に、彼女を中心に風が起こった―――いや、「起こった」ではなく、「爆発した」の方が相応しい表現だろう。その風は、辺りのコンクリートの壁や車を吹き飛ばすだけでなく、少し離れた場所にあるビルに罅さえいれた。
『くっ! 黒耀の姿を見て我を失っちまったか』
「能力が暴走している。早く止めなければ、鈴自身が危険だ」
風に押し戻されないよう踏ん張りながら、鈴を見ていることしか出来ずにいる。
気が付けば、寝倖に彩河も、自身の身を守ることに精一杯のようで、黒耀だけが風に吹き飛ばされ、壁に激突し止っている。
「鈴! 気をしっかり持て!」
翡翠が叫ぶが、鈴には届かない。
「厄介だねぇ……。先にあのお嬢ちゃんをやっとこうか?」
「好きにしろ」
『っ!? おい! お嬢さんに何するつもりだ!』
寝倖の動きに気付き、即座に砲台を向ける。
「何って――こうするしかないそ思うけど?」
寝倖は、右腕を鈴に向ける。―――放電の構えだ。
「させるもの―――くっ…」
阻止しようと、二人が動くが、風に押し戻される。
「どうせすぐ君たちもいっしょになるんだから、心配ない―――ぐわッ!!?」
寝倖の右腕から電撃が放たれる瞬間、横から数発の何かが飛来し、彼の右腕を貫いた。
それは―――
「……はぁ……ボクの……司令官…には……はぁ……指…一本たりとも…触れさせや―――しない!」
黒耀のガトリング銃だった。




