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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
34/62

再起動

『くっ……てめぇ、黒耀を離しやがれ!』

 シュリルの爪が寝倖と彩河を襲うが、寝倖の雷撃棒ヴォルテージで簡単に弾かれてしまった。

『くそ――おい! 黒耀を取り返すぞ!』

「わかった。鈴いく…………鈴?」

 鈴の異変に気付いた翡翠は、すぐに駆け寄る。そこで初めて、彼女が震えていることに気付いた。見開いた瞳の先にあるものは―――黒耀。

「あ……ぁ……峻…く………ん…………」

「鈴? どうした鈴! しっかりしろ!」

『危ねぇ!』

 いち早く危険に気付いたシュリルは、翡翠の襟元をくわえ、その場を跳ぶ。

 刹那―――

「いやぁああああああああああああああ!!」

 鈴の叫び声と共に、彼女を中心に風が起こった―――いや、「起こった」ではなく、「爆発した」の方が相応しい表現だろう。その風は、辺りのコンクリートの壁や車を吹き飛ばすだけでなく、少し離れた場所にあるビルにひびさえいれた。

『くっ! 黒耀の姿を見て我を失っちまったか』

能力ちからが暴走している。早く止めなければ、鈴自身が危険だ」

 風に押し戻されないよう踏ん張りながら、鈴を見ていることしか出来ずにいる。

 気が付けば、寝倖に彩河も、自身の身を守ることに精一杯のようで、黒耀だけが風に吹き飛ばされ、壁に激突し止っている。

「鈴! 気をしっかり持て!」

 翡翠が叫ぶが、鈴には届かない。

「厄介だねぇ……。先にあのお嬢ちゃんをやっとこうか?」

「好きにしろ」

『っ!? おい! お嬢さんに何するつもりだ!』

 寝倖の動きに気付き、即座に砲台を向ける。

「何って――こうするしかないそ思うけど?」

 寝倖は、右腕を鈴に向ける。―――放電の構えだ。

「させるもの―――くっ…」

 阻止しようと、二人が動くが、風に押し戻される。

「どうせすぐ君たちもいっしょになるんだから、心配ない―――ぐわッ!!?」

 寝倖の右腕から電撃が放たれる瞬間、横から数発の何かが飛来し、彼の右腕を貫いた。

 それは―――

「……はぁ……ボクの……司令官…には……はぁ……指…一本たりとも…触れさせや―――しない!」

 黒耀のガトリング銃だった。

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