勝利宣言
目の前の人型機械兵を両断し、辺りに耳障りな金属音が響いた。
「はぁ……はぁ……ま、まだいるんですか……」
既に10体近く倒しているはずだが、視界にいるだけでもまだ軽く20体以上は残っている。流石に集中力も切れてきていた。
しかし、ここで気を抜けば確実にやられる。
「はぁ!」
気合を入れ直し、続けざまに2体切り伏せる。そして3体目――
「っ!? くっ―――きゃあ!」
3体目の機械兵に向かって剣を振り上げた瞬間、背後からの敵の接近に気づき、無理やり防御に移る。
無理な体勢で受けたため、鈴の軽い体は簡単に吹き飛ばされ、建物の壁に激しくぶつかることでようやく止まった。
「う……」
視界が揺れ、安定しない。まるで世界が揺れているようだった。
鈴が動けないと気付いたか、機械兵はじわじわと迫ってくる。
「くっ…………」
目の前で振り上げられる機械兵用のサーベルを、鈴は揺れる視界で睨みつけることしかできない。
そしてサーベルが降り降ろされ、顔を背ける。
「…………?」
いつまでたっても、そのサーベルが鈴の体を襲うことはなかった。その代わり、2度の破裂音。
否、鈴には、それが砲撃の発射音と着弾音だと瞬時に理解が出来た。
ゆっくり目を開けると、サーベルを振り上げていた機械兵は消え失せ、周りの機械兵たちも全く別の方向を向いていた。
その方向には―――
「鈴!」
「い、委員長!?」
『オレッチを忘れんなよ』
「シュリルさん? その姿は……」
『へへ、愛らしいだろ?』
その軽口には答えず――いや、答えられず、鈴はその場を跳び退った。
機械兵たちが、先に鈴を攻撃したほうがいいと判断したらしく、再び攻撃を開始してきたからだ。
「私は正面の2体をやる!」
『おう! 周りは任せな!』
二人はすぐに鈴の援護に向かう。
数度の砲撃は全て命中し、翡翠の斬撃も綺麗に決まり、機械兵はあっという間に数を減らしていった。
「す、すごい……」
翡翠もそうなったように、鈴もシュリルを見て言葉を失っているようだ。
『あいつはもっとすげぇぜ、お嬢さん?』
近くにいた最後の機械兵を前足の爪で貫いたシュリルは笑った。
「そ、そうだ、峻君はどうなったんですか!?」
『さぁてね。レーダーには映ってねぇが――あいつのことだ、簡単にはやられねえって。それより――』
「彩河はどこへ?」
「すみません。機械兵に足止めされて見失いました」
「そうか。仕方ない。私たちでは足手まといになるだけかもしれないが、黒耀君のところへ――」
『その必要は、無さそうだぜ?』
シュリルが、尋常ではない殺気を放つ。
その視線の先には、二つの人影。
「あれ? おかしいな、レーダーには映ってないはずだし、気配も消してたんだけどなぁ」
「紫電の寝倖!」
「美土里さん………」
赤褐色の鎧に包まれた彩河と、無残と言っていいほどにボロボロの寝倖だ。七式特有の自己再生機能が全く追い付いていない。おそらく、本来の戦闘力の半分――いや、4分の1も出せはしないだろう。
『おい寝倖。相棒はどうしたよ』
「ああ、ここにいるよ」
そう言って、寝倖が持ち上げたのは――
「峻君!」
『黒耀!』
「黒耀君!」
見るも無残な姿になった黒耀だった。寝倖の被害もかなりのものだが、そんなものは可愛いものだと思えてしまうほどだ。意識がないのか、完全にダラリと力を失っている。
「君たちは最大の戦力を失った。僕たちの勝ちだ」




