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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
33/62

勝利宣言

 目の前の人型機械兵を両断し、辺りに耳障りな金属音が響いた。

「はぁ……はぁ……ま、まだいるんですか……」

 既に10体近く倒しているはずだが、視界にいるだけでもまだ軽く20体以上は残っている。流石に集中力も切れてきていた。

 しかし、ここで気を抜けば確実にやられる。

「はぁ!」

 気合を入れ直し、続けざまに2体切り伏せる。そして3体目――

「っ!? くっ―――きゃあ!」

 3体目の機械兵に向かって剣を振り上げた瞬間、背後からの敵の接近に気づき、無理やり防御に移る。

 無理な体勢で受けたため、鈴の軽い体は簡単に吹き飛ばされ、建物の壁に激しくぶつかることでようやく止まった。

「う……」

 視界が揺れ、安定しない。まるで世界が揺れているようだった。

 鈴が動けないと気付いたか、機械兵はじわじわと迫ってくる。

「くっ…………」

 目の前で振り上げられる機械兵用のサーベルを、鈴は揺れる視界で睨みつけることしかできない。

 そしてサーベルが降り降ろされ、顔を背ける。

「…………?」

 いつまでたっても、そのサーベルが鈴の体を襲うことはなかった。その代わり、2度の破裂音。

 否、鈴には、それが砲撃の発射音と着弾音だと瞬時に理解が出来た。

 ゆっくり目を開けると、サーベルを振り上げていた機械兵は消え失せ、周りの機械兵たちも全く別の方向を向いていた。

 その方向には―――

「鈴!」

「い、委員長!?」

『オレッチを忘れんなよ』

「シュリルさん? その姿は……」

『へへ、愛らしいだろ?』

 その軽口には答えず――いや、答えられず、鈴はその場を跳び退った。

 機械兵たちが、先に鈴を攻撃したほうがいいと判断したらしく、再び攻撃を開始してきたからだ。

「私は正面の2体をやる!」

『おう! 周りは任せな!』

 二人はすぐに鈴の援護に向かう。

 数度の砲撃は全て命中し、翡翠の斬撃も綺麗に決まり、機械兵はあっという間に数を減らしていった。

「す、すごい……」

 翡翠もそうなったように、鈴もシュリルを見て言葉を失っているようだ。

『あいつはもっとすげぇぜ、お嬢さん?』

 近くにいた最後の機械兵を前足の爪で貫いたシュリルは笑った。

「そ、そうだ、峻君はどうなったんですか!?」

『さぁてね。レーダーには映ってねぇが――あいつのことだ、簡単にはやられねえって。それより――』

「彩河はどこへ?」

「すみません。機械兵に足止めされて見失いました」

「そうか。仕方ない。私たちでは足手まといになるだけかもしれないが、黒耀君のところへ――」

『その必要は、無さそうだぜ?』

 シュリルが、尋常ではない殺気を放つ。

 その視線の先には、二つの人影。

「あれ? おかしいな、レーダーには映ってないはずだし、気配も消してたんだけどなぁ」

「紫電の寝倖!」

「美土里さん………」

 赤褐色の鎧に包まれた彩河と、無残と言っていいほどにボロボロの寝倖だ。七式特有の自己再生機能が全く追い付いていない。おそらく、本来の戦闘力の半分――いや、4分の1も出せはしないだろう。

『おい寝倖。相棒はどうしたよ』

「ああ、ここにいるよ」

 そう言って、寝倖が持ち上げたのは――

「峻君!」

『黒耀!』

「黒耀君!」

 見るも無残な姿になった黒耀だった。寝倖の被害もかなりのものだが、そんなものは可愛いものだと思えてしまうほどだ。意識がないのか、完全にダラリと力を失っている。

「君たちは最大の戦力を失った。僕たちの勝ちだ」

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