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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
32/62

黒豹

「くっ……。これは誤算だったな……」

「委員長! 全員、失踪した我が校の生徒たちです!」

「わかっている!」

 翡翠は半ば怒鳴りながら迫ってくる刃を防いだ。

 何とかこのあたりにいた機械兵を殲滅したが、直後に失踪したはずの少女たちに囲まれてしまった、と言うのが今の状況だ。

 しかも――

「全員洗脳されているな………」

 少女たちは敵意を持って襲ってくるのではなく、機械的に、ただの動作として襲い掛かってくるのだ。

 つまりは、無傷で戦闘力を奪う必要があるということだ。口で言えばその程度だが、実際に行うとなるとかなり難しい。

「こんなところで足止めを食っている場合ではないと言うのに」

 思わず、苦虫を噛み潰したような表情になる。

 そろそろ、鈴の方にも援護に向かわなければならないのだ。

「委員長、何かこちらへ向かってきます!」

「!?」

 報告してきた少女の指差す方向を見ると、確かに黒い物体がかなりの速度で迫って来ていた。

「く、機械兵か。全員迎撃よ―――っ!?」

 言い終わる前に、その黒い物体は目の前まで接近し、翡翠たちを包囲していた少女たちを一瞬で気絶させた。

『フゥ、間に合ったか。おら、オレッチが援護してやる。サッサと鈴のお嬢さんとこ行くぜ!』

「な……その声、君はあのバイクか?」

『おう。今は黒豹だがな。シュリルって呼んでくれよ』

「君がここにいるということは、黒耀君はやったのか?」

『いいや、むしろ大ピンチだ。それでも、あいつはあんたらを優先したのさ』

「ということは――」

『早く戻らねぇとまずいって事だ。ってことで、2秒で片付ける!』

「な――」

 シュリルの姿が、消えた。否、あまりの速度に、消えたように見えただけだ。

 そして、再びその姿を目で捉えたとき、既に彼女を包囲していた少女たちは地にひれ伏していた。

『おら、行くぞ。バイクは乗れるか?』

「あ、ああ、一応」

『なら、オレッチに乗りな』

「わかった。全員、彼女たちを救護班のテントへ運ぶように。……では、私は行って来る」

 他の警備委員の生徒たちにそういい残して、翡翠は変形しバイクの姿になったシュリルに跨った。

「………まったく、七式きみたちというのはどこまで桁外れなんだ……」

 その翡翠の呟きは、シュリルは聞いていなかったようだ

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