援護
寝倖のレールガン。久しぶりに見たが、やはりかなりの威力だ。もしくらえば、ひとたまりもないだろう。
しかし、だからと言ってビビッているわけにもいかない。
『ったく、こんなのに勝とうってんならこりゃ、高くつくぜ』
「…………」
いちいちシュリルの軽口には反応していられないが、確かに、彼の言うとおりだ。
ボクは握っていた剣2本を粒子化し、今度は1本の槍を実体化させる。
「やっと本気かい?」
「まぁな」
『覚悟しろよ!』
ボクは走り出し、シュリルは砲撃を開始した。
「ははは、いいよ、いいよ!」
寝倖も、声を上げて笑いながら迫って来る。狙いは――――やはりボク。
ボクの槍と寝倖の雷撃棒がぶつかり、あたりをエネルギー波が襲う。シュリルは何とか防いだ様だが、建物や乗り捨てられた車は無残なことに原型すら留めていないほど破壊されてしまっている。
「くっ!」
押し切られはしなかったが、受け止めきることもまた出来ず、僅かに後ろに流され、そこでようやく止まる事が出来きた。
………これは、厳しいな…。
ヘルメットの中で、一滴の汗が頬を伝う。
『下がれ相棒!』
聞こえるが速いか、ボクは後ろへ跳び、交代でシュリルの爪が寝倖を襲う。
しかし、それも防がれ、弾き返されたシュリルがボクの目の前に着地する。
「後ろ、気をつけたほうがいいよ?」
「? ――っ!」
唐突な寝倖の忠告に首をかしげた瞬間、背中にさっきを感じ、その場を飛び退いた。
空中で一瞬視界で捉えたその正体は、銀色に輝く短剣だった。その持ち主は――人間の少女。
見覚えのある顔だった。たしか――
「お前が攫っていった少女か。……いや、少女たちか」
いつの間にかボクたちを包囲していた少女たちを見回す。
「全員洗脳したか。人間としての扱いじゃないな。使い捨ての駒扱いだ」
「そうだよ。あまりこういうのは好きじゃないのだけど、主人の命令と在らば仕方がない」
全く悪びれた様子もなく言ってくる寝倖に、嫌悪感を覚える。いや、そうではない。寝倖にではなく、その所業そのものに嫌悪感を覚えているのだ。
「シュリル。ここはいい。翡翠の方へ行ってやれ。おそらく、鈴も翡翠も、同じ状況下にあるはずだ」
そうシュリルに伝えると、彼はボクを見上げてくる。もし、彼に表情が作れたら、さぞかし『何を言っているんだこいつは』という表情をしていることだろう。
実際、シュリルは『何を言っているんだお前』と聞いてきた。
『お前はどうするんだ。死ぬ気か?』
「誰がだ。翡翠を援護し、鈴と合流して彩河を確保。そうしてここへ戻って来いと言っているんだ」
『だが……』
「安心しろ。ボクを誰だと思っている?」
『…………わかった』
葛藤の末、納得したらしく、彼はボクに背を向けた。
『死ぬなよ』
「ああ」
最後に言い残し、シュリルは走り去っていった。
「いいのかい?」
「ああ、お前はボク一人で十分だと判断した」
「あれを援護に行かせたのはいい判断だと思うけど、君が一人になるのはよろしくないと思うよ? だって、相手がボクなんだから」
「これ以上、言葉は意味をなさないと思うが?」
「……そうだね。じゃあ――」
「ああ。再開しよう」
「「俺たちの戦争を!」」




