レールガン
―――バシッ! ビシビシッ!
そんな、乾いた音を立て、寝倖の掌から電撃が立て続けに放たれる。
『うおっ! 死ぬっ!』
「黙ってろ!」
シュリルを黙らせ、必死になって電撃を回避する。実際、ボクには軽口を叩いている暇はなかった。
「ほらほら、逃げているだけじゃどうにもならないよ!」
雷撃棒を振りかぶった寝倖が迫ってくる。
「――ちっ!」
ボクは回避を諦め、振り下ろされた一撃を受け止める。
「『グゥッ!』」
流れてくる電流に、苦悶を漏らした。更に、過剰な電流により、視界にラグが走る。
何とか寝倖を押し返し、追撃をかける。
「あはは、楽しいね。そう思うだろ、黒耀!」
『オレッチを忘れんな!』
シュリルが憤慨しているが、ボクにはそんなのを気にしている余裕はなかった。
明らかに、奴の性能は上がっているからだ。対してボクは、整備こそしているものの、性能の向上は皆無だ。その上、ろくに戦闘も訓練になることもしていない。正直、身を守るだけで精一杯だ。
「まずいな」
『………だな。どーするよ?』
直線道路を疾走し、寝倖の電撃を回避しながらシュリルが珍しく真面目に尋ねてきた。
「どうしようもな―――」
「余裕だねぇ」
「ちっ!」
シュリルに気をとられた一瞬、動きが単調になったらしく、先回りした攻撃が飛んできた。
急ブレーキをかけ、何とかそれを回避することには成功した。
「おかしいなぁ。黒耀、なんか遠慮してない?」
「………」
『………こいつは…』
ボクは、これ以上なく真面目にやっている。しかし、寝倖の目にはボクが手を抜いているように見えたのだろう。つまり、それだけ寝倖との差があると言うことだ。
ちなみに、今の奴の発言は、挑発でなく天然だ。余計に質が悪い。
「遠慮なんて要らないよ。本気できなよ。そのほうが楽しいだろ?」
無邪気に笑う寝倖。
「………なら、遠慮なくいくぞ」
言葉が返せず、意味もなく強がってみるが、状況が変わるわけではない。
「そうそう、そうこなくっちゃ―――よし、そろそろ僕も、これを使おうかな」
寝倖は、左手を突き出した。
『やっべぇ……』
シュリルが思わずそう漏らす。今回ばかりは、同感だ。
「いくよ」
寝倖の左腕の肘から下。その部分だけが銀色の装甲に包まれていた箇所が、複雑な銃器に変形した。
銃口の中が白い光を放ち始め―――
「発射!」
刹那、ボクはシュリルを蹴り飛ばし、同時に自分も瞬間的に飛び退いていた。
同時に、寝倖の左腕から放たれた光の束が通り過ぎ、掠ってすらいないのに吹き飛ばされた。
アスファルトの上を転がり、ようやく止まる。反対側でも、シュリルは黒豹に変形し、背中の2門の砲筒で寝倖を狙っている。
そして、その間には深く抉られてできた一本の筋。
「………レールガン……」
ボクは顔を顰め、今の攻撃の正体を呟いた。




