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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
30/62

レールガン

―――バシッ! ビシビシッ!

 そんな、乾いた音を立て、寝倖の掌から電撃が立て続けに放たれる。

『うおっ! 死ぬっ!』

「黙ってろ!」

 シュリルを黙らせ、必死になって電撃を回避する。実際、ボクには軽口を叩いている暇はなかった。

「ほらほら、逃げているだけじゃどうにもならないよ!」

 雷撃棒を振りかぶった寝倖が迫ってくる。

「――ちっ!」

 ボクは回避を諦め、振り下ろされた一撃を受け止める。

「『グゥッ!』」

 流れてくる電流に、苦悶を漏らした。更に、過剰な電流により、視界にラグが走る。

 何とか寝倖を押し返し、追撃をかける。

「あはは、楽しいね。そう思うだろ、黒耀!」

『オレッチを忘れんな!』

 シュリルが憤慨しているが、ボクにはそんなのを気にしている余裕はなかった。

 明らかに、奴の性能は上がっているからだ。対してボクは、整備こそしているものの、性能の向上は皆無だ。その上、ろくに戦闘も訓練になることもしていない。正直、身を守るだけで精一杯だ。

「まずいな」

『………だな。どーするよ?』

 直線道路を疾走し、寝倖の電撃を回避しながらシュリルが珍しく真面目に尋ねてきた。

「どうしようもな―――」

「余裕だねぇ」

「ちっ!」

 シュリルに気をとられた一瞬、動きが単調になったらしく、先回りした攻撃が飛んできた。

 急ブレーキをかけ、何とかそれを回避することには成功した。

「おかしいなぁ。黒耀、なんか遠慮してない?」

「………」

『………こいつは…』

 ボクは、これ以上なく真面目にやっている。しかし、寝倖の目にはボクが手を抜いているように見えたのだろう。つまり、それだけ寝倖との差があると言うことだ。

 ちなみに、今の奴の発言は、挑発でなく天然だ。余計にたちが悪い。

「遠慮なんて要らないよ。本気できなよ。そのほうが楽しいだろ?」

 無邪気に笑う寝倖。

「………なら、遠慮なくいくぞ」

 言葉が返せず、意味もなく強がってみるが、状況が変わるわけではない。

「そうそう、そうこなくっちゃ―――よし、そろそろ僕も、これを使おうかな」

 寝倖は、左手を突き出した。

『やっべぇ……』

 シュリルが思わずそう漏らす。今回ばかりは、同感だ。

「いくよ」

 寝倖の左腕の肘から下。その部分だけが銀色の装甲に包まれていた箇所が、複雑な銃器に変形した。

 銃口の中が白い光を放ち始め―――

「発射!」

 刹那、ボクはシュリルを蹴り飛ばし、同時に自分も瞬間的に飛び退いていた。

 同時に、寝倖の左腕から放たれた光の束が通り過ぎ、掠ってすらいないのに吹き飛ばされた。

 アスファルトの上を転がり、ようやく止まる。反対側でも、シュリルは黒豹に変形し、背中の2門の砲筒で寝倖を狙っている。

 そして、その間には深く抉られてできた一本の筋。

「………レールガン……」

 ボクは顔を顰め、今の攻撃の正体を呟いた。

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