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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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雷撃棒

「そんなに驚くことではないでしょう? 鈴」

 どこか余裕のある微笑を浮かべ、右手を正面に突き出す。

「大地よ。偉大なる母にして、全てを繋ぐ英知の源よ。友よ。今一度ここへ集い、我を守護する鎧となせ!」


――地が、震えた。


 アスファルトが捲れ、その下の土が舞い上がった。

 そして、揺れが収まった時、彩河もまた、鈴と同じように、しかしこちらは赤褐色の鎧に包まれていた。

 その右手には、《砂漠デザート・歌声トーン》にそっくりな剣。

「この剣は《砂漠デザート・音響シンフォニー》。貴女に託した剣と兄弟剣よ。同じ剣をモデルに作られた剣」

 鈴の視線に気付いたのか、彩河は余裕を見せ付けて説明してくる。

「そんなことを気にしている場合ではないと思うけど? 本題に入りましょうか」

「………なぜ、このような事を?」

 剣を構え、いつでも迎撃が可能なようにする。

「世界を、変える為よ」

「………世界…を……………?」

 思わず、言葉を失った。

 予想だにしていなかった言葉だったからだ。

「そうよ。鈴、貴女には話があってここまで誘導させてもらったわ」

 そういわれて、初めて気付く。自分が、誘導されていたことに。

「貴女は私の一番弟子。実力も知っているし、信用に足る人間だわ。………鈴、私たちと一緒に世界を変えない?」

「世界を………」

 考えつきもしなかった理由に、鈴は絶句した。

「そう、世界を変えるの。どう、鈴?」

 優しげな微笑と共に、右手が差し伸べられる。しかし、鈴の応えは決まっていた。つまり――

「ごめんなさい、美土里さん。私は、今の世界が好きです。だから、あなたのお誘いを受けるわけにはいきません」

 構えを説き、背筋を伸ばしてから応える。それが、鈴なりの敬意の表し方だった。敵であろうと、それは変わらない。

「そう………。両方共に振られちゃったわね」

 最後の呟きは、鈴には聞こえなかったらしい。

「仕方ないわね。私の前に立ち塞がるのなら、敵よ」

 そう言って、彩河は剣を抜いた。

「やれっ!」

 号令と共に、彼女の両脇にいた機械兵2機が鈴に襲い掛かった。


      †      †      †      


 急ブレーキをかけ、ボクは交差点の真ん中で停止した。

「やぁ、なかなか速かったね」

「………寝倖…」

 目の前のビルの窓に立っている寝倖は、鈍い黄金色に、所々真紅の装甲があしらわれた強化外装に包まれている。

「ここまで来たら、言葉は要らないね」

 寝倖は、その右手に一本の黒い棒を実体化させた。

「《雷撃棒ヴォルテージ》……」

 それは、寝倖の近接武装の一つ。その名の通り、漆黒の棒は、表面に青白い電気を纏っていた。

 ボクの最大の特徴がトライアングルシステムによる属性特化なら、寝倖の最大の特徴はエレクトリックシステムによる電撃だ。

 最大200億Vの電流を流せるらしい。

 ボクは、両手に剣を実体化させた。

 一本は日本刀、もう一本は細剣レイピア並みの細さの剣。両方とも、ブレードと同じように刃の部分が青くコーティングされている。

 ボクの戦闘準備が完了したのを見て、寝倖は雷撃棒を回転させる。

「さぁて、始めようか」

 直後、ボクの剣と寝倖の棒がぶつかり合い、甲高い音と凄まじいエネルギー波が、あたりを吹き飛ばした。

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