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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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 その後、ボクたちは2度の戦闘を経て、テルル最大のビル、インクトナーホテルの真下まで到着した。

「鈴、送ってやれるのはここまでだ。ここから先は、ボクの戦場だ。彩河の位置はわかるか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか。………最後に、命令を」

「…………?」

 この少女は、自分が七式の指令であることを忘れているらしい。

「お前が命令してくれなければ、今のボクは何も出来ない」

 そこまで言って、ようやく思い出したようだ。

「で、では、峻君」

「ああ」

「この街を、この街のみんなを、守ってあげてください」

「―――了解」

 即答した。

「では、私も戦闘準備です!」

「?」

 鈴はシュリルから降りると、一度深呼吸をし、右手を前に伸ばす。

「風よ。何人にも束縛されぬ、自由な翼よ。友よ。今一度いまひとたび、ここに集い、我を守護する鎧となせ!」

 

―――風が吹いた。


 それは、まるで鈴の体に集るように。

 気圧計が異常な高気圧を示している。

 これは―――

「鈴の、女神ネイトとしての能力ちからか」

 呟いた瞬間だった。

 大量の水が零れる様な勢いで、集められた空気が四散する。当然、彼女を中心に台風の如き強風が起こった。

『あのお嬢さんはどこぞの神サマ中学生か?』

「何の話だ?」

『忘れてくれ……』

 よくわからないが、鈴から目を離してしまった。再び鈴の方へ顔を向けると、思わず顔がにやけてしまった。

「どうです? 峻君」

 手を後ろで組んでボクを見上げてくる鈴が、いつの間にか銀色の鎧を纏っていたからだ。

 正直、とても違和感があった。何か、もっと似合うものがあるのではないかと、模索してしまうほどに。

「強そうだな」

 一応、褒め言葉を送っておいた。

 にも拘らず、鈴はむしろ頬を膨らませて軽く睨んできた。

「………」

「? ……? ……………??」

 ボクが本気で困っていると、鈴は残念そうに溜息を吐いた。

「もぅ……。いいです。今回は事態が事態ですので」

「? ……あ、ああ」

「私はもう行きます。では峻君」

「ああ」

 鈴はボクに向かってニコッと笑みを浮かべると、そのまま彩河のいる中央広場へ向かって消えていった。

『なぁ、黒耀』

「どうした?」

 ハンドルを前へ向けたとたん、シュリルが話しかけてくる。

『いや、お嬢さんを見て、何も気付かなかったのか?』

「……何のことだ?」

『いや、いいって。オレッチが口を挟むことじゃないからな。しかし、我が相棒の鈍感さには、感服するぜ』

「?」

 結局、最後までシュリルの言いたいことがよくわからなかった。

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