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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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47秒の戦闘

 初めこそ、鈴はボクに掴まるのを恥ずかしがっていたが、途中からはあまりの速度に、最早強く抱きついていた。

「先に、お前を降ろす。寝倖の前まで連れて行くのは危険すぎる」

「………今回は、仕方ないです。でも、峻君、約束してください。絶対に戻ってくると」

「確実でない約束は――」

「峻君!」

 振り向いたところにあった、鈴のあまりに真剣な表情に、気圧されてしまった。

 暫く、そのまま固まっていたが、やがてボクは、彼女が絶対に諦めないと判断し、前を向く。

「善処する」

 瞬間、彼女はパッと明るい顔に戻り、ボクの背中に顔を埋めた。

『青春だねぇ』

「うるさい」

 暢気なことを言っているシュリルを黙らせ、更に速度を上げる。

『おい、黒耀』

「ああ。わかってる」

「どうしたのですか?」

 鈴が、身を乗り出してくる。

『気が付かなかったかい? お嬢さん。オレッチたちはまだ、一度も交戦してないって事』

 その言葉に、鈴は思わず「あっ」と声を上げる。

『そいつぁな、オレッチたちが敵を避けて進んでいるからよ。だが――』

「もう、それが出来なくなった」

 その意味がわかったのか、彼女の表情も引き締まる。

「鈴は何もしなくていい。戦闘は最小限にとどめる」

「それって――」

『さぁて、お喋りはここまでだ。見えてきたぜ』

 正面を向く。

 そこには、十数体の機械兵が、バリケードを作っていた。

「シュリル!」

『おうよ!』

 ボクの合図と同時に、シュリルの前輪の両サイドから筒が伸びる。

 ただの筒ではない。――砲筒。

『吹き飛べぇええええええ!!』


―――ズドンっ!


 2つの方筒が同時に火を吹いた。

 ようやくこちらの存在に気づき、数機が振り向くが、既に遅い。

 武器を構える前に、ボクらの正面にいた2機の機械兵の上半身が、消し飛んだ。

 それに留まらず、下半身までもが勢いに持っていかれ、宙を舞う。

「全弾命中」

『かっはっはっは! 気持ちいいぜ!』

「す、すごい……」

 砲撃の威力を目の当たりにした鈴が、目を丸くしていた。

 しかし、それはあくまで挨拶代わり。すぐに機械兵たちの迎撃が始まった。

「鈴!」

『しっかり掴まってな!』

「え――」

 鈴は間の抜けた声を上げていたが、構っている場合ではなかった。

 シュリルの車体を横に向け、その陰に隠れる。

 何がどうなっているのかわかっていない鈴を、仕方なくボクの上に乗せた。

 ほぼ同時に、弾雨が届く。

『お譲さん、耳塞いでな』

 今度こそ、鈴はすぐに反応し、耳を塞ぐ。

 それを確認し、ボクは右腕を変形させた。

 音を立てて複雑に変形し、右腕は、ガトリング銃になる。

 腕だけを陰から出し、容赦なく撃った。

「う……あ………」

 あまりにうるさかったのか、鈴がうめき声を上げるが、今はどうにもしてやれない。

 一瞬で大量に放たれた弾丸は、全てが吸い込まれるように2体の機械兵に命中し、奴らは煙を上げて動かなくなった。

『今度は衝撃に備えろお嬢さん! 忙しいなぁ! かっはっは!』

 未だに勢いを緩めず突き進む車体で、動かなくなった機械兵を弾き飛ばし、防衛ラインを突破。

 だが―――

『これで終わりと思ってんじゃねぇぞ! ガキ共が!』

 ボクはハンドルを捻り、ヘッドを後方へ――つまり、機械兵たちに向ける。

「一斉射撃用意!」

『まかせろ!』

 再び、合図と同時に、今度は2門の砲筒が伸び、さらにシュリルの装甲が開く。

「『発射!』」


―――ズドドドドド!


 シュリルから放たれた、十数発の小型ミサイルと2発の砲撃が、機械兵たちを襲った。

「全弾命中」

『油注して出直して来いってんだ』

 車体を180度回転させ、防衛ラインを通り過ぎるまでの47秒の戦闘を終了した。

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