作戦開始
「覚悟は、できたのか?」
「はい、さっきはごめんなさい。私らしくありませんでしたね」
「………そうだな」
まだ約一週間ほどしかいっしょに過ごしていないが、確かに鈴らしくないとは思っていた。
「よし、作戦の動きは頭に入っているな?」
翡翠の言葉に、ボクと鈴は頷く。
「君たちは、本部で待機していてくれ。黒耀君、君が敵軍の状況を伝えてくれ。ここにあるものより、君のレーダーの方が性能が高そうだ。彩河美土里か紫電の寝倖の、どちらかでも出現した場合は――」
「その時は、すぐに出る」
彼女が最後まで言い終える前に、ボクは続けた。
「断りは入れないが、いいか?」
「ああ。最優先事項だ。すぐに出てくれ」
翡翠は真剣な表情でボクたちを見つめてくる。
「私はもう行かなければ。鈴、黒耀君―――」
頼んだぞ―――そう言い残して、彼女は去って行った。
† † †
「三番隊の後方より5機の機影。二番隊の防衛ラインをすり抜けた機体を3機確認」
ボクは、レーダーからわかることを次々と言葉にしていった。
「三番隊へ、こちら本部。後方より5機の機影を確認。挟み撃ちにされる前に殲滅を」
「本部から五番隊へ。3機の機械兵が二番隊の防衛ラインを突破。街への進入を確認」
オペレーターがすぐさまそれぞれの隊へ報告する。
「すごいな。君がいなければ、もっと苦戦していることだろう」
この場で全体の指揮を執っている自警団団長が、満足そうに頷いている。
「それが役目だ」
それから20分ほど、ボクは機械的に状況の伝達をし続け、遂に―――
「来た!」
『っ!』
ボクの一言で、全員に緊張が走る。
ボクはそのままテントを出た。
「準備、出来ています」
「…………流石だな」
シュリルの目の前では、キャップタイプのヘルメットを被り、腰に剣を下げた鈴がいざ行かんとばかりに気合十分で立っていた。
「…………」
ボクはシュリルに跨り、すぐ後ろをポンポンと叩くと、すぐに鈴はそこに座った。
エンジンを掛ける。
ブルルルルンッ! と、エンジンが唸り―――
『ご無沙汰だなぁ、黒耀』
「―――っ!」
鈴が、絶句していた。
「すまないな」
『気にすんじゃねぇよ。オレッチだって事情はわかってらぁ』
「ああ、だが、すまない」
「えっと……」
鈴が、恐る恐ると言う風に話に入ってくる。
『ん? ああ、忘れてたぜ。黒耀、どちらさんだ、このお嬢さんは?』
「花暦鈴だ。一時的な、ボクの指令だ」
『なんだ、彼女じゃねぇのか。かっはっはっはっはっは!』
シュリルが爆笑する。鈴は顔を真っ赤にして、俯いていた。
「随分と、元気なバイクだな」
団長がテントから顔を出す。
『おうよ! オレッチは元気だけが取り得だぜ! 生まれてこの方、一回も風邪引いてないんだぜ?』
「………だろうな」
団長が苦笑い。
「『―――っ!』」
ボクとシュリルが、同時に反応する。
「動き始めたな」
『ああ。寝倖の奴か。こりゃ、でかい相手だな』
「峻君!」
「ああ」
ハンドルを強く握り締め、捻る。
『いったろうじゃねぇか!』




