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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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Triangle System

「寝倖はまだか………」

 ボクは、索敵レーダーの範囲内に寝倖の反応がないことを確認すると、僅かに胸をなでおろした。

 敵の規模が思ったより大きく、寝倖が出て来る前に、翡翠たちの方を何とかしてやりたかったからだ。

 幸い、彼女達が交戦している通りは、すぐそこの交差点を曲がったところだ。

 右手の中に、槍を実体化させる。

「はっ!」

 角を曲がるとすぐ、目の前にいた機械兵数体を、一薙ぎで切り捨てた。

「っ!? 黒耀君!」

「待たせた」

 目の前にいた翡翠がすぐボクに気づき、駆け寄ってくる。

「鈴は?」

「戦意が全く感じられなかった。あのまま連れて来るのは危険と判断し、置いてきた」

「………そうか」

 駄目だったか――そう呟いて、剣を構え直す。

「なら、私が鈴のぶんの働きまでしなくては――――なっ!」

 迫ってきていた機械兵の一体を両断し、ボクと背中を合わせる。気付けば、囲まれているようだった。その数、実に十数体。

「黒耀君、君はこの状況を切り抜けられると思うかい?」

「ああ」

「ほう? ちなみに、確率は? 私が思うに、無傷では無理だ。多少の負傷を覚悟するなら、そうだな……40%と言うところかな。どうだい、君は?」

「ボクは、七式グレート・ベア七番式【黒皇】:変則の黒耀だ。機械兵こんなのといっしょにするな。……100%だ」

「?」

「お前が無傷でこの状況から抜け出せる確率だ」

 ボクは、意識を集中させる。


Triangle System.........Starting.

Acceleration Mode.


 胸部のコアが青く光り始める。コアから全身に行き渡るエネルギーが、まるで血管の様に浮かび上がり、黒の体にラインを引いた。

「黒耀君、それはいったい―――」

 ボクは、彼女の話を最後まで聞かず、走り出した。

 ブレードを出す。そのブレードも、今までのようなただの黒ではなく、中心に円形のコア、刃の部分は、体中を巡る青いエネルギーにコーティングされている。

 目の前にいた機械兵の首を落とす。続いてその両隣の機械兵も、両腕のブレードで同時に切断した。

 ボクの動きはそれだけに留まらず、最前列にいた奴らを、全て切り刻んだ。

 ここまで、約0.5秒の出来事。反応できていたのは、誰もいない。

「い、一体何が?」

 流石に困惑している様子の翡翠だったが、すぐに切り替え、目の前にいた機械兵を切り伏せる。

「今は、ここを抜け出すのが先だな。住民の避難も、こちらの戦術的撤退も完了している。後は私たちが生きてこの場を逃れることだけだ」

「……安心しろ。5秒で片付ける」

 ボクは、機械兵たちの中へ突っ込んだ。

 不謹慎かもしれないが、ボクは、ほんの少し、この戦闘を楽しんでいたのかもしれない。

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