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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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煉獄試合

 記憶メモリーの操作が終わった。バックアップもとっていないので、何を忘れたのかすらわからないが、数秒前の自分が判断したのだ。問題ない。

 ゆっくり腕や脚を動かし、動きの点検をする。これも問題はなかった。

 後は、各部品の点検。動きは問題かったが、内部の部品の劣化具合やダメージなどはわからない。

 しかし、これは流石に自分では無理だ。岩仲いわなかの爺さんのところに行って、点検を頼まなければならない。

 今日は、ゲームがあるからだ。

 対戦相手は、先週100位入りした30代のもと陸軍兵だと聞かされた。なんでも、射撃が得意らしい。

 しかし、緊張や昂ぶりなどは感じられない。ただ、いつもと同じように観客を盛り上げるように立ち回ればいいだけだ。

 ボクは朝食を食べに、食堂へと向かった。


 煉獄試合に参加させられている、あるじのいない男たちのほとんどは、闘技場の地下にあるここ、デグダで暮らしているため、毎朝この時間は混みに混んでいる。

 兵器――半分以上が機械であるボクも、一応は人間だから、食事による栄養補給が必要だ。

 とはいっても、食べ過ぎてはゲームで動けなくなるし、何より落ち着いて食べられるスペースがない。

 ボクは一番手前にあるカウンターでサンドイッチだけを頼み、その場を後にした。

 武器を整備する工房まで赴き、その一番奥を目指す。

 最奥部にぽつんと存在する鉄扉を開け、中に入った。

 何度見ても、広い。

 その真ん中に、鉄の診察台が、まるで太平洋の真ん中にぽつんと存在する小島の如く備わっていた。

「なんだ、入らんのか?」

 しゃがれた声で、後ろから声をかけられた。

 頭の綺麗に禿げ上がった、小柄な老人。しかし、その歩きや眼光からは、老いなどは一切感じられない。

「黒耀よ、整備に来たのだろう?」

 カカカと笑いながら、老人はボクを追い越して部屋へ踏み込んでいく。

 この小柄な老人こそが、岩仲だ。戦闘員ではない。

 戦争中は最前線で兵器の管理していたらしいが、今はこの工房で武器の整備や製造をしている。

 おそらく、この地下で暮らす人間で知らない者はまずいない。

 ボクが煉獄試合ここへ来てすぐ知り合って以来、点検は毎回この岩仲に頼んでいる。

 今回も同じように体の各部を点検してもらい、しばし雑談に付き合ってから工房を出た。

 ゲームまで、後30分。そろそろ、控え室に向かった方がよさそうだ。

 

       †         †         †         


 30位より上の実力者になると、個別の部屋や、控え室が与えられる。

 ボクは、自分の控え室に入り、鍵を閉めた。

 そして、部屋の中心に置かれた漆黒の箱を箱を開けた。

 中には、ボクの戦闘服。いや、ボク―――七番式【黒皇】専用の強化外装が入っている。

 衣類を全て脱ぎ捨て、一番上にある鋼線やカーボン、タングステン繊維などが織り込まれた、スーツを着る。

 次に、厚さ5cmはある胸部装甲を被る様に装着。続いて肩、腕、手、膝、脚、足と装甲を嵌めていく。

 最後に、フルフェイスのヘルメットを被った。

 これで、強化外装の装着の半分が終了。そのまま外装と神経の接続に移った。


 Synchronous start 、、、、、、

 It will be in a body state.

 Initialization of a program is started、、、、Ends.

 Connection with a nerve is started、、、、、、Ends.

 Fine tuning is started、、、、、、、、、、、、、Ends.

 Operation test start、、、、、、、、、、、、、、Ends.

 Synchronous ends.

 The <<Great Bear>> The No.7 type 【黒皇】 starting.


 目の前の画面に次々と出てくる報告が全て消え、強化外装の装着が、完全に終了した。

 おかげで、ここまで聞こえるはずのない観客たちの歓声をも聞くことが出来る。

 どうやら、前のゲームが終了したらしい。

 ボクの、出番が来た。

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