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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
17/62

取引

 消えたように見えたと言っても、あくまで一瞬。

 すぐに目が追い付いた。

「まだ、遅いな」

 これなら、まだあれは使わずに済みそうだ。

「――!?」

 体を後ろに逸らし、すずの一閃を避ける。

 彼女は驚いたように目を見開いたが、流石と言うべきか、すぐに切り替え、今度は後方へ大きく跳び、距離をとる。

 ボクが追撃していかないのを確認すると、また、向こうから迫ってくる。

 ちょろちょろとすばしっこくボクの周りを走り回り、隙を見つけては斬りかかってくる。

 流石に片腕だけでは足りず、左腕からもブレードを出し、全てを受け止めた。

 そんな、高速の攻防が10秒も続いたころ、鈴は再び大きく跳んでボクから距離をとる。

「はぁ……はぁ………。あくまで、抵抗しますか……」

「別に、ボクはどうでもいい。ただ、面倒ごとが嫌いなだけだ」

 表面上嫌がってはいるが、警備委員会の持っている情報は気になる。

 今回の事件、彼女たちはどこまで解っているのだろうか?

「等価交換………というのはどうだ?」

「等価交換………ですか?」

 訝しげにボクを見る鈴。

「そうだ。君らがボクに情報を伝える。ボクもそれに見合うだけの情報提供、または協力をしよう」

「………」

 どうやら、迷っているようだ。

 七式の一人とする取引は、流石に即決は出来ないのだろうか。

 暫く考え込み、そしてようやく口を開く。

「わかりました。委員長や政府の方に掛け合ってみます」

「そうか。助かる」

 ボクは強化外装の実体化を解くことで、これ以上の戦闘の意志はないことを伝えた。

「いいのですか? そんな無防備な姿を、見せても。今の私なら、背後からあなたに斬りかかる事も躊躇ためらいませんよ?」

 彼女は手にした剣を構える。

「来るならば今の取引は無かったことになるな。だが、ボクは、お前がこれ以上の攻撃をしてこないと―――信じている」

「―――っ!?」

 なぜか、鈴の顔が一瞬で真赤になった。

 うろたえる様に、口をパクパクと開閉させ、視点もアッチへ行ったりこっちへ行ったりと、定まらない。

「ず、ずるいです。峻君は……」

「?」

 ほんの少し頬を膨らませ、上目遣いでボクを見てくる。

 なぜだろう? なにか、言葉に言い表せないような、しかし心地いい感覚がする。

「と、とと、とにかく、峻君も来てくれないと困ります。いっしょに来てください」

「それはこと――」

 それは断る。そう言い終わる前に、いつの間にか鈴はボクの右腕にしがみついていた。

「絶対、逃がしませんから!」

 なぜか、このときの彼女は、とてつもなくいい笑顔を浮かべていた。

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