始動
――――ズン。
そんな、低い響きと共に、部屋が――否、街全体が揺れた。
それに反応して、人々が何事かと騒ぎ出したのだろうか、レーダーの圏内――半径500m内にいた生命反応が、一斉に動き出した。
ズン。
再び、辺りが揺れる。
今度は、もっと近くだった。
同時に、確信する。
これは――――
「地上で、戦闘か……」
ボクは、天井を眺めた。
案外、驚きもしなかった。ずっと、予感していたことだったからだろうか。
放送が流れた。
『ランクAの非常事態が発生いたしました。係員の誘導に従い、指定のシェルターへ避難してください。繰り返します―――』
ランクA………。程度で言えば、テロ並みだろうか。
とにかく、ボクも面倒になる前に移動しなくてはならない。
地上が非常に気になる所だが、ボクだけ勝手な行動をとるわけにはいかない。
それに、そんなことをすれば、罰則がある。別にそれが怖かったりはしないが、面倒そうだった。
ボクは部屋を出て、緑のパーカーを羽織った誘導員の指示に従い、一番近い第7シェルターへ向かう。
大きな通りに出ると、そこは既に非難してきた男たちでいっぱいだった。
デグダは、住民の98%が男性のため、それも仕方のないことだが、むさ苦しい事この上ない。
ズン……。
再び、揺れが来る。
あたりに動揺が広がるが、その程度だ。さすが、戦闘行為は日常茶飯事のこの街の住人だけはある。
ズン――。
揺れが、近付いてきた。
一度ではない。
何度も何度も、連続で。
「おい、流石にやばそうじゃないか?」
誰かが、そんな一言を漏らした。漏らしてしまった。
その一言は、波紋のように広がり、人々に不安を齎す。
――ズン。
「おい! 今の、ほとんど真上だぞ!」
一瞬で、人々の不安は恐怖に変わった。
「早く行け!」
避難者たちが、誘導員の指示を無視し、シェルターへ雪崩れ込んでいく。
――ズン。
パラパラと、天井のカケラが降ってくる。
「………そろそろ、限界か……」
誰にとも無く、そう呟いた。
しかし、もう避難もほとんど終わっている。
ボクも、シェルターへ入ろうとした。
そして―――――天井が崩壊した。
降って来た瓦礫がシェルターの入り口を塞ぐ。
「………面倒なことになったな」
大穴が開いた天井を見据え、どうするかを考える。
一応、強化外装などは粒子化させて、いつでも展開できるようにしてある。
(もし戦闘に巻き込まれたとしても、問題はな―――)
そこで、ボクの思考は凍りついた。
視線の先には、大穴を通り過ぎる二つの影。
少なくとも700mは離れているから、普通なら小さな点にしか見えないはず。
しかし、ボクにははっきりと見ることが出来た。
横に並んだ二つの影の一つは、第一テルル学院の制服を纏い、両手で剣を握っている少女――花暦鈴。
そしてもう一つの影は――
「馬鹿な……。なぜ、寝倖がここに………!?」
驚きを隠せなかった。
その影の正体は、七式睦番式【輝雷】:紫電の寝倖だった。