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七式《グレート・ベア》  作者: 滝川 椛
第一章「輝雷編」
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雅の傷

 みやびの後ろ回し蹴りをしゃがんで避け、ボクは威力の大半を抑え、掌底を放った。

 なぜ威力を抑えたのか――もちろん、威力が高すぎるからだ。

 本気でやれば、強化外装なしでもコンクリート塀くらい貫通する威力なのだから、いくら女神ネイトとはいえ、相当の手だれで無い限り、くらえばひとたまりもない。

 しかし、雅はその掌底をギリギリで避け、上段から手刀を放ってくる。

 それを受け止めようと、額の上で腕をクロスした、そのときだった。

 舞い上がった一枚の紙切れが手刀の軌跡に入り、そして――切断された。

「――っ!」

 瞬間、ボクは飛びのいていた。

 標的を見失った手刀は、そのまま真下にあった鉄製のパイプ椅子を見事に切断し、ようやく止まった。

「………それが、お前の女神ネイトとしての能力ちからか」

 彼女は、ボクが攻撃を避けると思わなかったのか、一瞬ありえないという顔をしていたが、すぐにボクに向き直り、涼しい顔に戻った。

「貴様に答える義理は無い。それに、自分の能力ちからをそう簡単にばらしてしまったら意味がな―――」

「ほあちょ!」

「――っ!?」

 雅が言い終わる前に、間の抜けた掛け声と共に振り落とされたチョップは、見事に雅の頭部を捕らえた。

 チョップを放った人物。それは、言うまでも無くすずだった。

「何をしているんですか雅さん!」

「し、しかし奴は――」

「しかしも何もありません!」

 言い訳すらも聞く耳を持たない鈴は、どうやらご立腹のようだった。

 手を腰に当て、雅を叱り付ける。

 気が付いた時には、何故か、ボクまでもが正座をさせられ、並んで怒られるのだった。


      †      †      †


 結局、説教が終わったのは30分以上も後だった。

「とにかく、仲良くしなければ駄目です! 二人とも、わかりましたか?」

「…………善処する」

 ボクはそう答えたが、雅は納得がいかないようで、ずっと下を向いたまま歯を食いしばっていた。

「……失礼、します」

 それだけ言って、彼女は部屋を出て行ってしまった。

 申し訳なさそうにこちらを見てくる鈴。

「ごめんなさい。雅さんは戦争時代、基地の防衛隊に所属していたらしのですが、、アレース軍の七式グレート・ベア弐番式【滅烈】:夜叉の銀慈ぎんじにその基地を攻撃されたらしく、それ以来男の人も機械兵も大嫌いみたいなのだそうです。許してあげてください」

「問題ない。気にしてはいない」

 そう答えると、彼女は心底嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます!」

 なぜだろう。その表情があまりにも眩しく感じられ、なのにまだ暫くは、眺めていたいなと思ってしまう、自分がいた。

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