STEP
日本では除夜の鐘を鳴らし、新年を迎える。
雪は微かに降り、道路を真っ白に変える。
卒業まで三か月をきった。
ほとんどの三年生は部活を引退して、進路が決まった者もいたりまだ汗を流している者もいる。
拓は最後の進路希望表にデカデカと「留学」と書いた。
新年を迎えて一か月後・・・
拓は夏美の通う病院へ調べて向かった。
病室に着くとそこにはベッドの上に横になって外を見つめる夏美がいた。
拓がドアをコンコンッと軽く敲くと夏美はこちらを向いた。
夏美は化粧をしてなくて、すっぴんの夏美を見るのは拓にとって初めてだった。
夏美は羞恥心と驚きでじたばたした。
「どうしてここに・・・」
「ちょっと話したいことがあって・・・入っていいかな?」
拓は病室に入り、夏美の所にある小さな椅子に座った。
この病室には夏美の他に3人の患者がいる。
「実は俺、アメリカに留学するんだ」
夏美はこうなるだろうと予想していたのか、その言葉には驚かなかった。
「そっか!向こうでも頑張ってね」
「おぉ、マジでそれだけ伝えたかっただけだから・・・」
拓は足早に病室を出ようとしたが入り口で足を止め夏美に言った。
「あの時は何も言えなかったし、今も特別何も思いつかないけど、もしもあの時に戻れるのなら・・・」
拓は夏美の方を振り向いてしゃべり続けた。
「『人間に元々翼なんか無いんだ・・・でも、俺達には前に進む立派な足があるんだ。諦めるような言葉を使うな
』って言うのかもな!」
夏美は拓が去った後に一言だけ言った。
「ありがとう」と
それから何日後、拓は龍二の墓へと向かった。
龍二に留学の事や夏美の事など龍二の知らないことを話し続けた。
「俺は一日たりともお前の事を忘れたことはなかったぞ!毎日だぞ・・・お前には死んだ後も世話を焼かせられたな・・・」
拓は墓を擦り、最後に言った。
「さよなら」と
まだ一ヶ月以上はあると思っていたのに卒業式は以外にも早く訪れた。
卒業式の日、思い出や友達との別れで泣く生徒は何人もいる。
最高の笑顔で過ごす生徒もたくさんいる。
今更ながら卒業していった村田信二の心境が分かる。
拓の気持ちは自分自身も分かってない。
ただ、早く卒業したがってた高校一年生の頃を憎みたくなる。
教室に戻り人生最初で最後のホームルームが終わり、拓は先生と二人で少し話した。
「どうだ?高校生最後の日は?」
「卒業後は将来の夢に近づくから楽しみだけど、この壁の汚れとか愛おしいッス」
「ははっそうか、昔は俺も学生時代を懐かしく思った。でも、年を取るとともに二十歳、三十歳と色々な思い出が出来る。でもな・・・教師には過去の思い出よりも一つの楽しみがあるんだ」
「一つの楽しみ?」
「それはなどれだけの花(生徒)を咲かす事が出来るかだ」
「花を咲かすことッスか?」
「あぁ、綺麗な花ほど咲くと美しい。でもな、地味な花ほど咲く場所によって素晴らしく綺麗な花になるんだ。
その芽がどこでどのように咲くかは本人次第だ!」
「それじゃあ俺はこの東学でもう一度咲いて見せる!」
「おう、その意気だ!!ところでお前はこれからどうするんだ?誰かと会うのか?」
拓は二階の教室の窓から下を覗きながら言った。
「1人だけ会っておきたい奴がいるんです」




