黒川みのる
あれからどのくらいの月日が経っただろうか
俺はまだあの出来事を忘れられないでいる。
そんなことを考えながらも少しづつ前に進んでいる。
拓は毎日勉強をし、今では授業中も理解できるほどになっていた。
ある日先生は拓に隣のクラスに居る一人の生徒に会うよう提案した。
「くろかわ・・・みのる?」
「あぁ、あいつは英語が得意でな英会話教室にも通ってるらしいぞ!もっと勉強したいなら、あいつにノートを見せてもらうか教えてもらったらどうだ?」
「そうだな~」
拓はしばらく考え、黒川みのるに休み時間会いに行った。
「うい~す!ここに黒川みのるって奴いるか?」
「あ?黒川?あいつなら買い出しだよ」
「買い出し?」
突然後ろから背の低い男の子が走って教室に入ってきた。
両手には飲み物やパンなどを抱えていた。
そして小さな声で怯えながら言った。
「買ってきたよ・・・」
「2分おせぇ~な、約束通り金払わないからな」
数人の1人が黒川を突き倒す。
拓はそいつらを見て言った。
「お前等こんなことするなよ」
「あぁ?お前には関係ね~だろ!そもそもお前もこういうの好きだったじゃねーかよ」
拓が冷たい目で見ていると隣から小さな声が聞こえる。
「僕には構わないでください」
拓は財布からお金を出し、黒川に無理やり渡した。
「こいつらの代わりに俺が払うからちょっと来てくれるか?」
そういうと二人は屋上へ向かった。
「最近のあいつ・・・変わったな」
「あぁ・・・なんかムカつくな」
屋上の扉を開け外に出た。
「ここって立ち入り禁止のはずじゃ・・・」
「大丈夫だよ!ほら来いよ」
二人はしばらく気持ちのいい風を受けた。
「お前いじめられてるのか?」
「もう慣れてるから気にしてないよ」
「言い返さないのか?」
「言い返したらもっとひどいことになるよ」
「このままでいいのか?」
「卒業まで僕が我慢すればいいんだ。桐嶋君の事も知ってるよ」
「あ~まぁ~昔はな・・・俺もあいつ等と同じだったかもしれないな」
拓は黒川の前に立って言った。
「よし!俺がなんとかしてやるから、明日から英語教えてくれないか?」
「え?勉強を・・・僕が?」
「おう!先公にお前の事聞いてな!お前英語得意なんだろ?」
「まぁ英語は好きだけど・・・僕なんかでいいの?」
「いいんだよ!お前じゃないと!」
「分かった!いいよ」
「本当か?マジで助かるぜ~!何かあったら言って来いよ」
二人は次の日から黒川が英会話教室がない日の放課後、教科書とノートを机の上に開き一緒に勉強を始めた。
それと同時に拓は黒川をいじめていた数人にも説得しに向かった。