鬼神
車内では誰もしゃべらず、窓はブラックシールが貼られて外の景色は見ることができない。
しばらくして車は停止し「降りろ」と指示され拓は黙って降りた。
拓が目にしたのは龍二の墓だった。
拓は驚いて口を開けたまま立っていた。
「どうしてここに・・・」と拓が問うと男は銃を向け言った。
「お前等には邪魔されたからな・・・お前もここでくたばれ」
拓はひざまずいて言った。
「俺はこういう形でここに来たくはなかった」
カチャッと銃の音が頭の上で聞こえる。
銃口の先の冷たさが皮膚を伝う。
拓は目を閉じた。
強い風が吹く。
拓は何か感じたのかとっさに目を開け、大声で言った。
「待て!!」
拓は男の方を見て言った。
「俺をあんたらの頭に会わせろ!」
「はぁ?何を言い出すかと思えば・・・」
「俺をお前の頭に会わせろ!!」
「貴様、頭でもイカれたか?」
「いいから会わせろ!」
拓は一方的に同じ言葉を言い続けた。
「会わせるわけないだろ!」
「どうせ殺すなら最後に俺を恨む奴の顔を見ても良いだろ!?」
「正気か?」
「あぁバリバリ正気だね」
男はため息を吐き、向けた銃を下した。
「ちっ・・・なんか白けたな」
そう言うと拓の前に座り込み携帯を取り出した。
男は電話を使いどこかに掛けはじめた。
「もしもし・・・はい、はい」
拓はしばらくその会話を聞いていた。
そして男は携帯を収め、拓に言った。
「会ってくれるそうだ・・・だが、死ぬ場所が変わるだけだぞ」
「へへ・・・それだけで十分だ。龍二の目の前で死に顔なんて見せれねぇーからな」
男は頭を掻きながら言った。
「お前本当に高校生か?俺達相手に何なんだ?」
「本当はビビりまくってるよ。でも立ち止まれないんだよ俺は・・・恐怖にも」
拓の瞳は言葉では表せない感情で溢れていた。
その拓を男は、じっと見つめその後拓達は再び車に乗り込み龍二の墓を後にした。
約40分後・・・
拓はとあるビルの最上階まで来ていた。
「ここから先はお前1人で行け」
拓は扉を引いて中へ入った。