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第一章 4話 『一般常識』


「ああっっっ!! お前はさっきのナンパ野郎!」


 目の前の紫髪ツインテールの少女はそう言いミノルに指を指す。


「ん? ナンパ? ミノル? お前そんなことしたのか?」


「いやいや、そんなことしてないって」


 2人からの視線が痛い。

 目の前にいる少女はさっきのドーナツを抱えた少女だ。今もまだドーナツを貪っている。

 まさか彼女が護国隊の関係者だったとは……


「ふむ…… 2人の間に何があったかは聞かないでおこう。 フレナ、うちの隊の新しいメンバーだ。自己紹介しなさい」


「げっ……こいつが? この弱っちそうなのが?」


「…………」


 ムカつくが反論できない……

 弱っちそうという評価は、何ら間違いは無いのだ。


「彼は予言の書に書いてあった、あの天命を賜りし者だぞ」


「えぇっっっ!! こんなのがそうなの!?」


「……私はフレナ。 フレナ・オーギル。 気軽に話しかけるんじゃないわよ」


 そう言い彼女はドーナツを抱え、去って行った。


「ミノル……フレナに本当に何をしたんだ……」


「だから何もしてないって」


「彼女はああ見えてうちの隊で、純粋な力だけで言ったら五本指に入るくらいには強いから、あまり敵に回さない方が賢明だぞ。変なことして、ひき肉にされても知らないからな?」


 ロベルトがニヤつきながら、こちらを見てくる。


「マジか……」


 そんなふうには見えなかったが……人を見た目で判断するのは危険だな……


「そう言えば今更なんだが、護国隊ってどういう事をしてるんだ? 戦争に出向くとかか?」


「ほう? そんなことも知らないのか?」


「……この国には来たばっかなんだよ」


「ふむ……まぁいいだろう。説明しよう。まずこの国、レボニア王国には3つの武力組織がある。セシル戦兵団、ゼンゼール武装隊、そしてボルカ護国隊だ。それぞれ独立した国家直属の武力組織で、似たような役割だが、規模の大きい戦兵団と武装隊は戦争の場に立ったり、国の治安維持に回ることが多い。それに比べ護国隊は、少数精鋭で小回りが利くため王直属の命令で動いたり、王国関係者の日頃の護衛や外交時の付き人などその役割は多岐に渡る。ちなみにこの3つの組織はあまり仲が良いとは言えないから、覚えておいたほうがいい」


「情報量が多くて全然頭の中に入ってこないな」


「一般常識だぞ、そのくらい知っておいたほうがいい。 案内が終わったら図書館で勉強してこい」


「……わかったよ」


 ロベルトの言う通りこの世界の基本常識くらいは知っておかないとこの先苦労するだろう。

 ここは大人しく彼の言う通りにしよう。個人的にもこの世界のことについては気になることも多いので、むしろ図書館を使えるというのはありがたいことである。

 そしてその後もロベルトの案内が続き――


▲▽▲▽▲▽▲▽


「――これでおおよその案内は終わりだ。 ほれ、図書館で勉強してこい」


「わかったよ。 案内ありがとな」


「いや気にするな。 その分しっかりと護国隊に貢献してくれればいい」


「……」


 ひとまずロベルトからこの建物の一通りの説明を受けた。

 簡潔に言うと、この建物は3階建ての中央棟と2階建てで平たく長い東棟と西棟に分かれており、中央棟はさっきの大広間、食堂、図書館、会議室等、風呂、などの共用で使う施設。東棟、西棟はそれぞれ男と女の生活スペースとの事だった。

 そして俺の部屋は東棟の2階の角部屋ということらしい。

 



 とりあえず図書館に着いた。中には誰もいない。

 図書館はとても広く、多くの本がある。

 俺は図書館を歩いて回り、気になった本をいくつか手に取り、椅子に座った。

 

「これは、地理的な本のはず……」


 どうやらこの本はこの世界の国々とその成り立ちについて書いてあるようだ。

 この世界には大きな大陸があり、その真ん中に位置するのが長い歴史を持つレボニア王国。その東に接するのは、数々の諸国が集まり形を成すゼメカ連邦国。西側に接するのは、王国と同じかそれ以上に長い歴史を持ち、一際大きい領土を持つジェスカ帝国。王国の南側に接し、大陸の下少しと数多くの島を領土に持つザスメニア神聖国。それらがこの世界の主な国々らしい。

 王国と神聖国の関わりは強く、関係は良好。

 帝国と連邦国の関係は悪く、その間に挟まる王国は中立を貫いているとのこと。


「何かこの国大変そうだな……」


 この王国は大陸にある国すべてと接しており、地理的に色々大変そうであると感じた。

 この国に武力組織が3つもある理由が少し理解できた気がする。

 

 その後もさまざまな本を読み――


「あぁぁー! 疲れたぁー!」


 3時間ほど本を読んでいただろうか、疲れて蹴伸びをした。

 するといきなり――


「図書館で大声を出すな!」


「!?」


 1人しかいないと思っていたので、いきなりした人の声に驚いてしまった。

 声の聞こえた方向を見ると、眼鏡をかけた緑髪のポニーテールの女性がカウンターに腰掛けて本を眺めていた。


「すみませんでした、以後気をつけま――」


「静かにしろっ!!」


「!!!」


 いきなり視界が真っ白になり、気がつくと図書館の前の廊下に突っ立っていた。

 

「一体何だったんだ……」


 そう思いもう一度扉を開けようとすると――


「開かねぇ! 鍵閉められたのか?」


 この世界には極端な女性しかいないのだろうか。

 とにかく精神的にも肉体的にも疲れたので、与えられた自室に戻る事にする。

 その帰りの道中、ロベルトに出会った。


「おぉミノル、ちゃんと勉強できたか?」


「あぁ、ある程度のことはわかったと思うぞ。 ……あと何か緑髪の司書みたいな人にすごい剣幕で怒られて、部屋から追い出されたよ……」


「……ミノル、お前人を怒らせる天才か? こんな短期間に面倒くさいの二人を敵に回すなんてな」


「いやいや騒いでないって、体を伸ばしたときに少し声が漏れただけだよ」


「まぁ、彼女の気に障れば同じ事だ。今後気をつけろよ。 彼女も立派な護国隊の一員だからな」


「あの司書みたいな人が?」


「あぁそうだ。 トーナは俺も怒らせたくない相手の1人だ、フレナと同じくな……」


 そう言い、彼は黄昏れるが如く窓の外を眺める。彼の顔を見るに怒らせた経験があるのだろう。

 俺も気をつけなければ。


「じゃあとりあえず早く寝ろよ。明日はお前の実力を見させてもらうからな」


「ちょっと待て! 実力を見るって――」


「それじゃおやすみ」


 そう言うなり彼は一瞬で消えた。音も立てず、少しの風だけを起こして。

 忘れそうになるが、彼は護国隊の隊長なのだ。

 彼との接し方も気をつけなければ……


 長い廊下を歩き、どうにか自分の部屋に着いた。

 部屋は1人で過ごすには快適なサイズである。

 ベットに横たわり、今日一日を振り返る。


「今日一日で色々ありすぎだろ……」


 そう言い彼は目を閉じる。


 明日彼に待っている事も知らずに――



 

 

 


 




 

6/29 トーナの口調修正 ロベルトのセリフの軽微な修正 フレナ関連のセリフの修正

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