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嘘つきは異世界譚の始まり 〜チート能力の無い俺が英雄となるに至るまで〜  作者: 伊達眼鏡
第三章 王国競技大会

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第三章 2話 『はじめてのおしごと』


「ほら、起きろ!」


 中々起きないことに痺れを切らしたトーナは、ミノルの顔に魔法で水を浴びせた。


「――ぶはっ!! はぁっはぁ! 死ぬかと思った……。って火傷が!」


 ミノルが慌てて自分の身体を確認すると、どこにも火傷の跡はなく、痛みも感じなかった。


「もしかして俺が全部防ぎきって――」


「ふざけたことを言うのはほどほどにしてくれ…… 生体魔法は疲れるから極力使いたくないというのに、見かねた私が()()()()治してやったんだ。感謝してほしいものだな」


「いや、元はといえば俺が怪我したのはトーナの……」


「何か言ったか?」


「……なんでもないです」


「そういえば貴様が寝ている間に隊長が来て言っていたのだが、そろそろミョルンに仕事を覚えさせようということで、私と貴様がミョルンを連れて街を巡回しろとのことだ」


「おっ! ミョルンもついに仕事デビューか」


「うん! 王都回るの楽しみ!」


 あんなに小さかったミョルンが、もう仕事をし始めるなんて……感慨深いものだ。といっても、まだ知り合って2週間も経っていないのだが。


「それにしても、トーナって巡回業務したことあるのか?」


 正直、トーナが護国隊の業務をこなしているイメージが湧かない。ベンザルの一件以前は、図書館以外で見かけたことはほとんどなかった。


「ふん、私のことを何だと思っているのだ。ちゃんと普段から夜の巡回を担当している!」


「夜……なるほど、だからいつも昼間は巡回してないのか」


 確かに今言われみれば、夜の巡回もあって当たり前のことだった。にしても、トーナがしっかりと業務をこなしていたというのは少し驚きである。てっきりいつも図書館で本を読んでサボっているだけかと思っていた。


「貴様、何か失礼なことを考えていなかったか?」


「き、気のせいだって」


「あとその前に、ミョルンの隊服を取りに行かなければならないな」


「隊服か! そういえばまだミョルンにはなかったのか。じゃあロベルトからまたお金を貰わないとな……ってどうした?」


 ふとトーナの方を見ると、何か少し気まずそうに俺の方を見ていた。


「いや、隊長からの伝言で、この間お前は俺の金を使い潰したんだから自分で連れてきた奴の隊服代くらい自分で出せ! ……だそうだ」


「そうきたか……」


 あの件の後、特に追及されることもなかったため終わったものだと思っていたが……ここにきて掘り返されるとは。

 実際俺にも落ち度はあったのだし、ここは仕方がなく俺の懐から出すしかない。まぁこの世界に来て特に金を使うことはしなかったので、2ヶ月分の給料がほぼそのまま貯まっている。それに加えて、ベンザルの件で追加給与も貰えたのでそこそこ余裕がある。


「まぁしょうがないな、ミョルンのためだと思って今回はお金を出そう」


「ほんと? ボス、ありがとう!!」


「えへへっ……って何だよその気持ち悪いものを見たかような顔は」


「いや、気色悪……生理的に無理だっただけだ」


「言い直した意味あるか? それ……」



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



 ひとまずミョルンを連れ、街に出ることにした。

 ミョルンはこちらに来てから一度も王都に出たことはなく、初めて見る景色に目を輝かせている。


 こんな調子でぶらぶら散歩をしていたいものだが、今は仕事中な上、ミョルンに仕事内容を叩き込まなければならないのだ。


「ひとまず仕事内容から教えないとな」


「仕事って何をするの?」


「街を見回って、怪しい奴がいたら捕まえればいいんだ」


「ふーん」


 まぁこの街は治安も良く、そこまで頻繁に犯罪は起こらないのでそんなに大変な仕事ではな――


「きゃぁ〜っ! ひったくりぃ!!」


 こんなタイミングでひったくりかよっ!


「ミョルンあれが……って、ん?」


 ミョルンはすでに駆け出していた。というかすでにひったくり犯を取り押さえていた。

 呆気に取られている中、トーナの顔を覗いてみると彼女も似たような顔をしていた。やはりトーナにとっても衝撃的だったらしい。


「ボスっ! 捕まえたよ!」


「お、おう。よくやった!」


「えへへ」


 ……もう、俺要らなくないか?





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